星へのギフト
人類が亜空間飛行を可能として数世紀
地球から数万光年先の惑星も探索出来るようになり
その足跡は銀河系に広がっていた
とある惑星を探索中に
探索隊は極めて不自然なものを発見した
それは生命の痕跡がない
ただゴツゴツとした
広大な平野の中央に置かれた
リボン付きの白い箱
当然、人為的なイタズラ
あるいは政治的なメッセージを疑ったが
どうしても腑に落ちない点が二つある
まず、人類未到達の宙域であること
つぎに、とてつもなく大きな箱であること
赤いリボンの部分は別としても
正方形の白い箱は一辺が4,000kmもあり
始祖第一原星でいうところのオーストラリア大陸が
すっぽりと入る大きさなのだ
内部をスキャンして調べたところ
中は巨大な楕円体の希少鉱石が入っているようだ
宝石、ということだろうか?
研究者の間では、現在でも議論が紛糾しており
神の仕業であると騒ぎ立てる学者も少なくない
◇
だが、とある哲学者は考えた
これはもしかしたら
ここで失われた文明や生命への墓標なのでは?
あるいは、これから生まれる何かへ、誕生の祝い?
それら自身が気付くことのない場所や時間に
誰かがそっと、心を寄せている証なのか
哲学者は夜空を見上げた
もしかすると人類も
気付かぬうちに祝福され
いずれ消え去るときも
そっと泣いてくれる誰かがいてくれるのかもしれない




