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風の導き

ミハドが立ち去った後、人狼ガウルは、死の淵から逃れた安堵も束の間、更なる絶望に捕らえられていた。

彼を追っていた「勇者」のパーティーが、ついに彼の弱った身体を発見し、捕らえたのだ。

聖なる鎖で縛り上げられ、勇者の冷徹な尋問に晒されたガウルは、命可愛さに、ミハドとの誓いをあっさりと破った。

「待て!知っている!俺は、お前たちの知らない秘密を知っている!」

彼は、命乞いのために、持てる情報の全てを差し出した。

「あの森だ!古より、人間も、我ら魔族も、足を踏み入れる事を禁じられている『禁断の森』!」

ガウルは、勇者の聖剣の切っ先が喉元に迫るのを見て、必死に叫んだ。

「あそこには、ヤバい秘密がある。俺たちとは違う……何かもっと、ヤバい生き物が住んでいるんだ!」

その言葉に、勇者の眉がピクリと動いた。

禁じられた森に、自分達の知らない何かが住んでいる。

それは果たして、魔族を討伐せんとする人類にとって、新たな脅威とならないだろうか?

勇者は思案した。

願わくば、自らの手と目で、その正体を確認したかった。

だが、魔族との戦いは一進一退の攻防が続き、予断を許さない。要である勇者パーティーは、このガウルを討伐した後、すぐに次の戦地へ向かうことが決まっていた。

致し方なかった。

勇者は、傍らの騎士に命じた。

「王国でも指折りの実力者パーティー、『風の導き』に、至急、森の調査依頼を出せ」

「もう、これで全て話した!頼むからっ……!」

ガウルが、最後の命乞いを言い終わる前に。

閃光が走った。勇者は、ガウルの首を、その聖剣で躊躇なく断ち切っていた。

ガウルの首は、空中で、自分が切られた事に気付かぬまま、まだ何かを話そうと口を動かしていたが、やがて力なく地面に落ちた。

「魔族に掛ける情けは無い。が、苦しみなく殺してやっただけ、感謝するんだな」

勇者は、冷たくそう言い放つと、ガウルの汚れた血はおろか、脂の一つも浮かんでいない清浄な聖剣を、音もなく鞘に収めた。

そして、聖騎士に向き直り、冷徹な目で命じた。

「もし、森にいるのが、害なす敵ならば」

「容赦はするなと、『風の導き』には伝えておいてくれ」

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