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カーテンで隠して


「懲りもせず教室だね」


「ここ学校だから……」


 理科室から一番近い教室に入るあんずとナルシ。


 少し飽きてきたのかつまらなさそうにリボンを弄るあんずに苦笑いを浮かべながら、ナルシは教室を見渡す。


 あんずもナルシを真似する。

 塗装は剥げているが、比較的綺麗なロッカーがあんずの目に付いた。


「誰かのロッカーだ。開けちゃお」


 ロッカーを開けようと伸ばしたあんずの手を、ナルシが光の速さで止める。


「開けるなら俺ね。……てか個人情報」


「難しいことわからなーい」


「んはは〜じゃあしょうがないなぁ〜」


 間髪入れず、バコン!! と豪快な音を立てながらロッカーを開けるナルシ。


「甘。ではちょいと失礼……」


 一切躊躇しなかったナルシに少し引きながらも、あんずはロッカーの中を覗く。


「なんかある」


「? ……あ、ほんとだ。これ……」


 ナルシが何かを言いかけるが、その後に続く言葉はなかった。

 

 あんずは綺麗に畳まれたそれを手に取る。

 ネームタグに達筆な字で土野と書かれたジャージだった。


「ジャージだ。もっとこ」


 いいものみっけ! と無邪気に笑い、あんずはジャージをポケットの中に入れる。


 不思議なことにジャージは物理法則を無視してすっぽりとポケットの中に収まってしまった。


(……中身どうなってんだ……?)


 ナルシは疑問に思ったが、深く考えないことにした。


 その間もあんずはとてとてと教室内を散策する。


 くすんだ黄色のカーテンを見て、そういえばここに来てからちゃんと外を見てないなと気づき、あんずはカーテンを開けようとする。


 しかしその手はいつの間にか背後に立っていたナルシに掴まれてしまった。


「……カーテンあけようよ」


「だめだよ」


 あんずはきょとんとした表情でナルシを見上げるが、こればかりは譲れないと首を振られてしまった。


「えーーなんでーー?」


「窓割れてたら危ないでしょ?」


「むぅん……」


 あんずはやだやだ気になる、と駄々をこねようか迷ったが、ナルシの意見があまりにも正当だったため、泣く泣くカーテンから手を離すことにした。


 その様子を見てナルシはふ、と息を吐く。


「じゃあ次は……」


 ナルシはあんずの手を離そうとするが、あんずはナルシの手を包み込むように自らの手を重ねる。


 まさか触られるとは思っていなかったのか、ナルシは反射で手を引っ込めようとするが、あんずがしっかりと手を握っていたため離すことが出来なかった。


「あ、あんず? どうしたの……?」


 俺がカーテン開けちゃダメって言ったのそんなに嫌だった? と続けようとするが、ナルシの言葉はあんずによって遮られてしまった。


「そんなに怖かったの?」


「え、」


 なんのこと? とでも言いたげな表情を浮かべるナルシにあんずは苦笑する。


「カーテン開けようとしたこと! ほら、手震えてるじゃん。しかも冷たいし……」


 あんずはナルシの手を優しくさすり温める。

 ナルシはあんずの行動に呆気にとられ、されるがままだ。


「……あ、もしかして実際に窓割れた?」


「え、いや、なんで……?」


「んー、床抜けるって凄い言ってたから、これもその感じかなーって。でも違いそうだね」


 ナルシ、怪我すること自体は怖がってなさそうだし。

 そう続けるあんずにナルシは固まる。


「……はい! まあ、さっきよりはマシでしょ」


「……え」


 あんずはナルシの手を離す。

 暖かさがじわじわと消えていく感覚で、ナルシは我に返る。


「あったかくなった?」


「……う、ん」


 ナルシは一瞬だけ俯き、すぐに顔を上げる。

 いつもの表情に戻っていた。


「本当にありがとう……!! あんずは凄く優しい子だよ〜〜!!」


 感動からか、若干涙目になりながらもナルシは笑う。


 あんずはナルシがまたやかましくなったのを見てうんうんと頷く。


「鍵、ここには無さそうだね。違うとこ見に行こ!」


 あんずはナルシに笑いかける。

 ナルシは眩しいものを見るかのように目を細め、控えめな笑みを浮かべる。


「……そうだね。もうちょっと頑張ろうか」


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