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ジークがやってきた理由2

「結局のところ、問題になっているのは魔素なんでしょ?」


『(その通りにゃ。魔素には良い面もあるにゃ)』


 迷宮は魔素で満ち溢れている。

 この魔素が人間を成長させる。

 筋力、知力、感覚など、あらゆる能力を強化する。


「その魔素が悪さもしちゃうんだ」


『(魔素酔だにゃ)』


 魔素に慣れないと人間に悪影響を与える。

 急性中毒を引き起こす危険性が高い。

 それを魔素酔という。

 アルコール中毒に似た症状を起こし、最悪死亡する。


「子供が特に危険なのは、魔素への抵抗力が弱いからってこと?」


『(その通りにゃ。個人差は当然あるんだけどにゃ、子供は魔素への耐性が極めて低いんだにゃ)』


「現代の科学技術を使っても、この魔素の影響をコントロールすることはできないの?」


『(残念ながら、現代科学では魔素の正体すら特定できていないにゃ。今のところは、魔素酔の症状を和らげる程度の対症療法的な対処法しか見つかっていないにゃ)』


「じゃあ、やっぱり迷宮は危険じゃん」


『(あのにゃ。ボクが伊達に千年以上生きてきたわけじゃないんにゃ。魔素のコントロールはお手の物にゃ)』


「ホント?」


『(そんな疑わしい目をするにゃ。ボクはにゃ、まず周囲に結界を張ることができるにゃ。魔素濃度が限りなく低くなるにゃ)』


「へぇ、すごいね」


『(それだけじゃないにゃ。ボクには相手の状態異常を即座に察知する能力もあるし、魔素への耐性を徐々に高めていく特別な訓練方法も知っているにゃ。これらの能力を組み合わせることで、安全に迷宮修行を進めることができるんだにゃ)』


「じゃあ、僕のステータスとかも見えるの?」


『(悠星だけじゃないけどにゃ)』


「すごいなぁ」



『(実はにゃ、天界には『魔法力適正チェック魔道具』という特別な道具があるんだにゃ)』


「魔法力適正チェック魔道具?それって、魔法の才能があるかどうかを調べる道具ってこと?」


『(簡単に言えばそうだにゃ。この道具は魔法の適性を六つの要素に分けて数値化するんだにゃ。具体的には、魔素への耐性、魔力の量と質、精神の集中力、精神的な強さ、手先の器用さ、そして知的能力を測定するにゃ)』


「へぇ、ライトノベルとかに出てくる水晶みたいな感じ?」


『(そうだにゃ。でも、天界の魔道具はもっと精密で、それぞれの要素を百段階で評価できるにゃ)』


「へえ。凄いじゃん」


『(まあ、そんなものを使わなくても、ボクは魔法総合力に関しては水晶のように一目で対象を分析できるにゃ)』


「そういうふうに?」


『(人はにゃ、魔法総合力が色となって現れるにゃ。紫、青、水、緑、黄、橙、赤の順番に総合力が高くなるにゃ)』


「虹色みたいだね。じゃあ、僕は?」


『(悠星は白色にゃ。いわゆるギフテッドと言われる種類の人間を示すにゃ)』


「ギフテッド?」


『(そうにゃ。魔法力に関しては特別な才能があるということにゃ。さっきあげた六つの指標が全てトップレベルって意味にゃ。具体的には、全ての項目で95点以上を記録している状態にゃ)』


「ええ、僕、めちゃくちゃ凄いじゃん」


『(そうだにゃ。でも、天狗になって精進を怠るとすぐにダメになるから気をつけるにゃ。一週間サボっただけでも能力値が10%以上低下する可能性があるにゃ)』


「うん。また夢でジークに叱られるからな。あれは悪夢だったよ。未だにうなされるもん」


 ◇


 さて、世界同時多発地震がおきて世界中に迷宮が出現した。

 僕が生まれる直前の話だ。

 その迷宮に突入した命知らずが犠牲者の山を築いた後、迷宮は軍や警察によって封鎖された。


 しかし、迷宮の研究が進んだあと、この制限は徐々に解除されていく。

 三年後に十八歳以上のものが、そして更に三年後に十五歳以上の者の迷宮入場を許されたのだ。

 

 現在は、十五歳未満のものは入場が制限されている。

 そんな中で、僕は十歳で魔道具で魔法を放っている!

 これは勉強ができるよりも、かけっこが速いことよりも、ずっとずっと重要なことだ。

 おそらく日本で僕だけだった。

 迷宮で魔法を放つ小学生は。


 すぐに迷宮に夢中になった。

 あっという間にレベルは上昇していった。

 レベルには各種パラメータが設定してあるらしい。



 レベルはレベルアップ時にわかる。

 レベルアップ時には光に包まれ、体が暖かくなる感覚がある。


 でも、細かいパラメータは一切記述されない。

 細かいパラメータとは、HP、MP、攻撃力、防御力といった数値だ。

 これらは感覚的にしか把握できない。


 ただ、レベルが上昇するとそうしたパラメータも上がったことは推測できる。


 例えば、握力の数字が上がる。

 あるいは、五十m走が速くなる。

 など、シーカーは定期的に体力測定をしているので、自分の数字が上昇したことを把握しやすい。

 一般的に、レベルが1上がるごとに、各種能力値が四%程度上昇すると言われている。



 このレベル、迷宮の外に出ても影響を及ぼす。

 だいたい、迷宮内の上昇分の十分の一程度のステータスアップをもたらすのだ。

 迷宮内で体力が百%アップすると、迷宮外で十%程度の体力上昇になる。

 これは体を構成する細胞レベルでの強化が起きているためだと考えられている。


 だから、競技している人たちはこぞって迷宮に入場したがる。

 実際、世界記録保持者は全てシーカーでもある。


 ただ、超人のようなタイムとはならない。

 百m走だと世界記録は九秒台前半だ。

 百m走が五秒だとかにはならない。

 迷宮での頑張りは迷宮外では1割程度に低減されるからだ。



 ところが、僕がジークの元で修行した結果。

 小六の段階で、迷宮は十五階をクリアしていた。

 レベルが三十にまで上昇した。

 その結果、体力が元の体力の三倍程度にまで上昇した。


 そして、迷宮外でも体力の低下が行われなかった。

 つまり、体力は三倍になったままだった。

 そういう魔道具をつけたからだ。

 この魔道具は「能力保持の腕輪」と呼ばれ、迷宮内での能力上昇を維持する効果がある。


 僕は小六時で大人顔負けの体力を持つことになった。

 その状態で測定すると、小六時で僕の握力は七十kg程度。

 五十m走ならば、六秒台後半。

 スーパー小学生だろう。

 これは成人男性の中に入ってもかなりの上位に入る数値だ。


 もっとも、この頃になると腕輪の魔道具をはずして地の体力で過ごすことになった。

 それでも、元の体力の二割増し程度の体力上昇を示していたと思われる。

 その状態で体力測定をしても、学年で一番の成績だった。

 握力で四十kg台、五十m走で七秒台前半を記録した。

  

 上昇したのは体力だけではない。

 合わせて頭脳も良くなった。

 記憶力、理解力、集中力のすべてが向上した。


 具体的には小六で英会話二級、小学校卒業するまでに、中学数学を終了した。

 いずれも独学で。

 脳力のほうは体力と違って腕輪の有無に関係なく、上昇したままだった。


 なんにしても成長力に補正がかかるから、身体・脳力はかなり向上している。


 これでルックスもよければまさに主人公なんだが、そこはお察し。

 まあ、十人並み。

 いわゆるモブ顔で良くも悪くもない。


 ただ、スタイルはいいほうかもしれない。

 身長は百六十cmを越えた。

 クラスでも一番背が高い。

 手足が長く顔も小さい。

 いわゆるモデル体型に近いかもしれない。


 ジークが言うには、これは迷宮で修行したおかげだという。

 迷宮活動に都合のいいスタイルが現在の僕の姿らしい。

 バランスの取れた筋肉がつき、余分な脂肪が落ち、姿勢も良くなった。


 小四から小六までは迷宮が楽しくて仕方がなかった。 

 ノリノリだったのだ。

 流石に平日はムリだったけど、休日は朝から晩まで修行に励んだ。


 課外活動もしなかったし、塾にも通わなかった。

 両親も何も言わなかった。

 学校の成績が抜群だったからだ。


 ただ、両親は中学は国立か私立に行ってほしかったようだ。

 でも、通学時間がもったいない。

 僕は歩いて十分の距離にある地元の中学校に進学した。


 ◇


【ジーク目線】


 悠星の成長は目覚ましかった。

 わずか一ヶ月で迷宮の五階層目に到達。

 通常のシーカーなら半年かかってもおかしくない。

 確かに、ボクの援助がある。

 それを加味しても悠星の才能は予想以上だった。


 悠星はあっという間に迷宮を攻略していった。

 小学校卒業時には十五階を攻略した。

 レベルは三十に到達していた。

 中級魔法魔道具を自由自在にあやつることができた。


 その勢いは中学入学後も継続した。

 中二の三学期にボクたちは二十九階を攻略した。

 レベルは五十を越えていた。

 上級魔法魔道具は無論のこと、特級と呼ばれる魔道具にチャレンジし始めていた。



 これがどれだけ規格外であるか。

 実は公式上、日本ではこの時点で二十階しか攻略されていない。

 日本のSランクパーティが昨年記録した。

 レベルは三十台~四十といったところだ。


 つまり、悠星は日本では飛び抜けたシーカーとなっていた。

 まあ、決して口外できないけれど。


 もっとも、ソロじゃない。

 ボクもいるし、補助者もいる。

 召喚獣っていうやつだ。

 こいつらについては後ほど紹介することもあると思う。



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