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鉄壁のワン・ツーはオタクだった2 アスナ&フィーナ

「なあ、ちょっと提案があるんだが」


「なんだ、突然」


「もしもだ、音楽も運動も向上させることができるとしたらどうする? もちろん、他の学業もおろそかにしないで」


「なんだよ、それ。ひょっとして迷宮のこと言ってるのか? ダメだぞ。俺達、すでにカード持ってるけど、Gクラスを突破できない。素のステータスも低いし、スライム百体なんて永久に達成できそうもない」


「右に同じ」


「なんだ、カードがあるのか。それなら話が早いな。いいか、僕なら1日でGクラスを突破できる」


「なんだよ、その詐欺師の口上みたいのは」


「まあまあ。僕のカードはこの通り」


「「え? Dクラス? なかなかやるな」」


「しかも、Dクラスに上がったのはカード取得して1ヶ月後なんだ。Cクラス以上は義務が増えるから取得はしないけど」


「待て。それ、本当か?」


「コツがあるんだよ。知りたくないか?」


「「それが本当なら是非教えて欲しい」」


「じゃあさ、次の土曜日どうだ? 海ほたるのスターバックスに八時集合ってことで。足代はまかせろ。稼げたら返してくれ。稼げなかったら返さなくてもいいから。それでどうだ?」


「いや、足代はいいよ」


「オレも。じゃあ、土曜日の八時にスターバックスで会おうぜ」



「「おおお! 本当にFクラスカード!」」


「怪しさ百%だったのに!」


「ピコピコハンマー見た時は『やられた』と思ったけど」


「あっという間に百体討伐してしまった!」


「NDAなんて結ばされて大げさな、と思ったんだが」


「NDAを結んだ理由はこれからなんだ。ジーク」


 以下、流れは女子二人と同じだ。



「今日は驚きっぱなしだ」


「ジークがいきなり現れて念話とかいうので喋ったり」


「従魔としてタヌ吉とウサ公が護衛についたり」


「なあ、悠星。タヌ吉とウサ公って名前だけどな。ちょっと雑すぎんか?」


「君等、自由に名前つけていいよ」


「そうか? ……とはいってもなー。まあ、考えとくわ」


「それにしても、悠星、おまえは一体何者なんだ?」


「何者って言われても……ただの高校生」


「のわけあるかい!」


「僕にもよくわかんないけど、まあ、ジークのお陰」


「まあ、いいか。だいたい、迷宮だって摩訶不思議な世界なんだ。人間の一人ぐらい不思議な存在がいても」


「おお、大西、前向きだな。なあ、パーティ名だが」


「む? なにか案があるんか?」


「俺はさ、是非アスナを名前に入れて欲しい」


「アスナってS&Mオンラインのアスナ・ウンディーネのことだな」


「ああ。俺がゲームにハマった最初のゲームの登場人物なんだ。未だに俺の一推し」


「あ、そっか。へんてこりんな名前じゃなくてもいいのか。獄炎の嵐とかさ。じゃあ、オレの希望は」


「フィーナだろ」


「沢井、そこはオレに言わせろ」


「ははは、大西の一推しといえば『女神大戦』のフィーナだからな」


「よし、じゃあフィーナ&アスナか」


「いや、アスナが先だろ」


「何言ってんだよ。フィーナに決まってるだろ」


「おまえら、しょーもないことで揉めるな。それ、最初はグー。じゃんけん」


「「ポン!」」


「よっしゃ! アスナが先」「くそ、フィーナたん、ゴメン」


「ん。じゃあカードでステータスオープンしてみな」


「「おおお、NDAの横に『アスナ&フィーナ』が!」」


「ううむ、燦然と輝いておる」


「眩しいではないか」


「なんだよ、その口調」


「戦国武将でござる」


「我らは本日より迷宮モノノフであるからにして」


「やめとけよ、そういうキャラづけするの。だいたい、アスナとフィーナに合わんだろ」


「そっか? でな、俺はしばらく迷宮通いしたいんだが。学院が二時五十分に終わる。そっから海ほたるまで1時間ちょいだろ。向こうに四時過ぎぐらい。そっから二時間弱活動して家には七時すぎに帰宅。どうだ、大西」


「おお、おお、いいじゃないか。部活と思えばいいもんな。いきなり魔石の売却で八万円手に入ったし。これがしばらくの活動費は問題ないしな。あ、後日お礼はするよ」


「いいよ、水臭い」


「いや、そんなわけにはいかん」


「いや、ぜひとも活動費に使ってくれ。正直に言う。お金は十分持ってる。必要なのは仲間なんだ。だから、君たちがクランに合流してくれるのが何よりなんだ。それとな、まともに活動すれば毎回最低でも数万円は手にすると思うよ」


「マジか。おおお、ブルーアーカイブ飛鳥○トキ(バニーガール)予約してもいいか?」


「はは、大西、まあ待てって」


「神楽はどうだ? ここまで来てもう手伝わん、などとは言わないでくれよ」


「いいけど、毎日はムリ。少なくとも、月曜日はあいてないよ」


「え? なにかあるんか? まあ、プライベートなことは言わんでもいいが」


「いや、僕たちは今後『クラン』として活動するわけだけど」


「『クラン』か。ゲームの呼び名を現実で使うとは思わなかったな」


「そのクランの一番目のパーティは君たちじゃないんだ」


「む? 誰なんだ?」


「ポム・メーラだよ」


「は? 栗林さんと佐橋さんか?」


「なんだよ、二人は有名なの?」


「学院に通ってるものなら、あの二人を知らないものはいないだろ。そして、彼女たちの活動がポム・メーラだっていうのも」


「匿名掲示板見てみろ。ポム・メーラスレってのが結構な人気スレだし、画像も出回ってる。でな、化粧してるとはいえ、見る人が見ればすぐに彼女たちだって気づく」


「だがな、学院には鉄の掟があってだな。学院の生徒のプライベートをチクらないってやつだ。彼女たちが身分とかを明かさないのなら、僕達も人にしゃべったりしない。それにね、学院ではそういうことに本当にうるさいんだ。チクったりしたことがばれると、物凄い非難されるし学院にいづらくなって退学する例もある」


「そんなにか」


「待てよ、じゃあ、第三の少年って悠星のことだったんか。彼女たちに影のようにつきまとう存在」


「つきまとうはないだろ。僕って有名なの?」


「まあ、そこそこ。ていうか、悪役ポジションだな。彼女たちと活動できて羨ましいってやつ」


「羨ましい?」


「悠星、あの二人はな、学院を彩る花なんだよ。顔最高、スタイル最高、笑顔最高、頭脳明晰、家柄超富裕層、まさしく超高級国民子女、全てがSクラスの学院カーストの最上位の二人なんだ」


「学院には、アイドル研究会ってのがあってな」


「そんなミーハーな部があるんか」


「秘密結社さ。五十年以上の伝統があるんだ。俺達二人共、そこの秘密会員」


「おまえら……」


「でな、研究会では毎年学院のアイドルトップテンを発表しているわけ」


「彼女たちは去年は中等部の同率トップ1・2だった。そして、今年は?」


「三年生に昨年度高等部のトップに輝いた胡桃沙羅さんがいる。彼女に二人を合わせた三人でトップが争われるっていうのが順当な前評判なんだ」


「胡桃沙羅って、あの天才子役の?」


「だな。国民的妹だ」


「彼女たちは学院の女神様」


「その女神様のお二人が我らがクランの席次1位であらせられるのか」


「うーむ、これは検討会を開かんといかんな、大西。こうしちゃいられんぞ」


「おお」


「なんだよ、普通にはできんのか」


「バカを言うな。畏れ多くも彼女たちはな、そばに寄るだけで動悸がヤバいんだ」


「彼女たちが通り過ぎただけで夢見の心地になるんだ」



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