レベル二十
「君たち、出会ったのは去年の六月だったよね? 一年でもうレベル二十って凄すぎるでしょ?」
「「いえいえ、ひとえに悠星くんとジークさんとシマくん、モモちゃん、オコくんのお陰です」」
『(素質を見抜いた我を讃えよにゃ。チュ○ルくれにゃ)』
ああ、ジークたちを褒めるようなこというから従魔の三体も地面から顔をのぞかせたよ。
目をキラキラさせて。
「おまえら、今日はこれで最後だぞ。って聞いてんのか?」
「そういえば、悠星くんのレベルって聞いたことないけど
ねえ、トップ百のソロシーカーって悠星くんのことでしょ? 三十二階を攻略してる人、通称X氏って」
「わかる?」
「当たり前でしょ。だいたい、ソロ活動してて凄い人っていないから」
「で、今レベルはいくつなの? 教えてくれてももう問題ないでしょ?」
「いいよ、レベルは五十七さ」
「「えー!」」
「五十はいってるかも、って思ってたけど」
「巷の噂だけど、特戦群の人たち。富士山で頑張ってる日本軍のエリートたち。あの人達、ようやく二十三階でレベルが四十一だって聞いたわ」
「ダントツなのね」
『(ボクに言わせると、彼らは無駄が多いんだにゃ)』
「だそうな」
「ジークくんに言われてもねえ。自称天界からの使者が三体の従魔をひきつれて地上に降臨したんだもの」
「悠星くん、上昇率どんだけ?」
「四%の五十七乗だとすると、九倍とちょっと。魔素による上乗せ分があるから、十倍ってところかな」
「十倍? そんな力、どうやって制御してるの? 私達って迷宮外でも力を減退せずに使えるでしょ、魔道具で」
「ああ、僕はその魔道具つけてないんだ。もうね、日常生活が大変になるから」
「そうよね。つけてると室○広治以上? いえ、ゴリラ?」
「あはは、ゴリラといい勝負かもしれない。だから、おっかなくて」
「そうよね。悠星くんをカツアゲしようなんてバカは悠星くんが少し撫ぜてあげただけで吹っ飛びそうよね」
「魔道具つけてないとしても、迷宮で向上した力の1割程度は迷宮の外でも使えるって話でしょ? そうなれば、悠星くん、ステータスが二倍にはなってるよね」
「その二倍もいろいろ差し障りがあるからさ。だから、これ使ってるんだよ」
僕はパワー制御魔道具を見せた。
その名の通り、力をセーブする魔道具である。
「ああ、そんなのがあるんだ」
『(前までは指輪でいけたんだけど、流石に悠星の力が強すぎてにゃ。腕輪サイズが必要になったんだにゃ)』
「「はああ。現実感がないわね」」
「じゃあさ、迷宮パワーをマックスでやったらやばいことになるよね」
「世界記録どころじゃないよ。非現実的な数字がならぶことになる」
「「はあ」」
「君たちはどうなの? 仲良くレベル二十になったけどさ。上昇率は二倍程度になるよね? けっこう、凄いことだと思うけど」
「マネージャーが、最近すごくキレが出てきた、やっぱり迷宮効果って凄いな、って他のモデルさんとかにバンバン勧めているのよ」
「でも、女性モデルはたいてい撃沈よね。スライム百体は大変な苦行よ。仮に地下三階に降りられたとしても、私達みたいに楽に討伐できるとは思えない」
「そうよね。私達だって、ラッキーなことに悠星くんたちと知り合えたからトントン拍子にいけただけで」
『(君等はそれだけの潜在能力があったということにゃ。だか……)』
「ジーク、チュ○ルは今日はおしまいだぞ」
『(ガーンにゃ)』
「なに擬音を自分で言ってるんだよ。目も見開いて。あざといぞ」
「あ、そうだ。君たちにとって多分大切なことをいい忘れてた。」
「「え、なになに?」
「僕さ、身長が百八十越えたんだよ。でね、体重はいくつぐらいだと思う?」
「うーん、男の人のことはよくわかんないけど、痩せてるし六十kgちょっとぐらい?」
「私もそのぐらいだと思う」
「百五kgなんだ」
「「えええ!」」
「どこにそんなにお肉がついてるの?」
「僕の体脂肪率は十%ないよ」
「どういうこと?」
「服の中に筋肉を折りたたんでいるとか?」
「いや、それは……僕の腕触ってご覧よ」
「いいの? じゃ、失礼して……うわっ凄い弾力!」
「なにこの筋肉。これが噂のゴムまり筋肉?」
「僕の骨もなんだけど、筋肉がハイパー強化されてるわけ」
「強化? まさか、レベルアップに合わせて?」
「そゆこと。これさ、僕とジークとで話し合った結果なんだけど、多分、レベル1に対して1%弱の身体強化が行われる」
「「凄いじゃない!」」
「あとね、魔素による身体強化もなされるから、その変数も計算に入れなきゃダメなんだけど、僕のレベルが五十七でしょ。さらに十歳からの若年迷宮強化。それらで僕の骨や筋肉組織は八割以上強化されていると推定している」
「強化されているのよね?」
「そうだよ。僕は特別な訓練してないけど、お腹なんか六パックに割れてるよ」
「わお。セクシー。見たいような」
「は。てことは私達も?」
「君たち、レベル二十でしょ? だから二割前後の身体強化がなされたんじゃないかな」
「あー、それでか。最近、身長は伸び悩んでいるのに、体重がバカスカ増えてるのよね。それがまさに二割。太ってる感じじゃないのよ。ウェストも体脂肪率が減ってきているの」
「まさか、私達、魔法少女じゃなくて、筋肉少女隊になったりしないよね?」
「登場するたびに、ボディビルダーのあの変なカッコしたりして」
「ああ、腕くんで片足あげて筋肉ピクピクさせたりするやつ」
「私達もああいうふうに?」
「ははは。二割程度身体が強化されたってああいうふうにはならないよ。彼らは特別な訓練をするからね」
「ちょっと安心。でも、ずっと続けていくと悠星くんみたいに百kg超えってこと?」
「ああ、それはちょっと」
「大事なことはさ、さほど太くなった感じがないのに体重が増えたってことだよ。もちろん、パワー増強とともにね。つまり、筋組織の密度があがったってこと。多分、骨も」
「あー、ちょっと微妙な感じ。体重が増えるって聞くだけでネガティブな気分になるし」
「でもさ、学校の健康診断とか驚かれたでしょ?」
「ああ、それはジークに数字を誤魔化してもらった。僕は六十五kgということになってるよ」
「ああ、そうなんだ。私達も体重がもっと増えてきたら、誤魔化してもらわなくちゃ」
「従魔たちもできるから大丈夫だよ」
「本当に? じゃあ、これからはずっと五十kg未満にしてもらお」
「永遠に四十八kgってことで」




