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七階~にチャレンジ?

 皐月・音羽さんたちは迷宮活動がさらに活発になった。

 というのは、中三のときと違って週三回迷宮に行くことにしたのだ。


 レベルが上がって、自信をつけたことが大きい。

 僕が同行しなくても、従魔に全幅の信頼を預けているのだ。


 レベル向上によるステータスアップが大変魅力であることもある。

 現状では家で勉強しているよりも、迷宮にいったほうが成績が上がる。


 それと、単純に面白いのだ。


「そんなこというと好戦的な人、と思われて困るんだけど、なんていうか、ほんとにゲーム感覚なのよね」


「そうそう。リアルFPS。やっつけたら霧散するところが現実味をなくす最大の理由」

 ※FPS:1人称視点のシューティングゲーム


「それにね、ステータスアップが半端ないの。今、レベル十五でしょ? そうなると、二倍近いステータスアップが図られるわけ」


「お陰で、ガリ勉してるわけじゃないけど学校の成績も十位に入ったし。お仕事のほうも褒められるようになってきたし」


「でも、レベル十五で打ち止めなんでしょ? 五階って」


 各フロアでは到達可能なレベルが決まっている。

 五階はレベル十五なのだ。

 レベルをあげたくば、六階におりる必要がある。


 

 五階は大型獣の出るフロアだ。

 迷宮はなく、単純な草原と森林とかからなる。

 大型獣も概ね、固定されている。

 黒狼、ブラックボア(黒猪)、ブラックベア(黒熊)、黒鹿とかだ。

 鹿だとしても、雑食性だ。

 肉も食べる。

 つまり、角ウサギと同じだ。

 姿形は鹿に似ているが、中身は冷酷獰猛な魔獣なのだ。


 ただ、ソロでしか出現しない。

 そして、角ウサギ同様、脳筋ばかりだ。

 敵(人間)を見つけたらダッシュで狩りにくる。


 対策も簡単だ。

 気配察知で対象を捕捉。

 ロングレンジでスナイプする。


 仮に近接戦闘を挑まれ、体当たりをカマしてきたとしても、従魔結界が弾き返す。

 従魔結界がなくても防御魔道具であるゴスロリで持ちこたえられる。



「では、六階に行こうか」

  

 この調子で六階に降りていった。

 六階は五階の魔獣が集団で襲ってくるフロアだ。

 ただ、道幅がありはするものの、迷宮になっている。

 

「六階も結局五階とおんなじよね」


「うん。距離さえ押さえとけば、角ウサギだろうと黒クマだろうとスナイプ一発だもんね」


「悠星くん、七階もいけるんじゃない?」


「そうだよ。そろそろパターンを変えないとマンネリ化してきたわ」


 皐月・音羽さんたちは緩んだ口調だったけど、それがうなづけるほどの圧倒的な攻撃力を示していた。



「いいけどさ。実は七階、八階、九階はある意味シーカーにとってかなりの難所だって言われているんだ」


「え? そんなに敵が強くなるの?」


「いや、むしろ、敵は弱くなる」


「じゃあ、何よ。地形が特殊とか」


「まずさ、七階。節足動物フロアなんだ」


「節足動物?」


「虫とか」


「「え! 虫!」」


「蝶々とかアリとかならまだいい。G、イモムシ、ゲジゲジ、蜘蛛、ムカデとか。しかも、超大型」


「「ゾゾゾー!」」


「あ。ダメ。寒気ボロ出た」


「Gとかさ、超大型黒光りが集団で襲ってきて、しかも飛ぶんだぜ」


「ダメダメダメ、パスパスパス!」


「悠星くん、なんとかして、お願い!」


「なんでもするから!」


「え、なんでも?」


「やだ、悠星くん。オヤジみたい」


「ほんと、セクハラ!」


「んー、解せん。まあ、なんとかできるんだけど、ジークとか従魔頼りでは後々不味いわけ」


「「えー」」


「ポイントはね、気配隠蔽スキルを手に入れること」


「気配隠蔽? 隠れる技ってことね?」


「忍者スキルってことでしょ?」


「早着替えでクノイチ衣装用意せねば!」


「側から入るのやめような。訓練方法はさ、二人共瞑想のような精神コントロール方法は習得してるでしょ?」


「「ええ、気配察知スキルのためにね」」


「それを自分自身に向けて、自分の気配を消していくわけ」


「「えと、どうやれば?」」


「僕だと、静かな池に沈み込んで周りと同化していくイメージだな」


「古池や~みたいな感じ?」


「ああ、そんな感じ。カエルが飛び込んでそのまま静寂に沈み込んでいく感覚。僕が見本を見せるよ……」


「うわっ、本当に悠星くん影が薄くなっていく」


「見えるんだけど、見えない感じ。とっても不思議」


「じゃあ、私達もやってみよ?」


 ◇


 気配隠蔽スキルは一ヶ月ほどで少し効果が出るようになってきた。


「二人共、スキルの端緒はつかんだみたいだね。これは簡単に習得できるもんじゃないから、今後も訓練していこう。とりあえずは、従魔に隠蔽結界張ってもらって七階はやりすごせるけど」


「ああ、シマくん、お願い!」


「モモちゃん、ありがと~。大好きよ」


「でさ、八階なんだけど、今度はゴーストフロアなんだ。隠蔽スキルは効かないよ」


「ゴーストって、幽霊ってことでしょ?」


「なんでそんな嫌フロアが続くわけ?」


「火魔法魔道具で成仏させながら地道に進むこと」


「はあ」「考えるだけで疲れる」


「次の九階なんだけど」


「まだ続くの?」


「ゴブリンフロア」


「あの典型的な魔物ね?」


「映画とかでも有名なヤツ」


「こいつはまず二足歩行だってこと。ちょっと人間に似てるから、倫理的に討伐できない人が出てくる」


「あ、それはわかるかも」


「でね、次は女性の敵だってこと。ゴブリンは女大好きなんだ」


「セクハラモンスターってわけね! いいわ! ゴースト以上に黒カスも残らない位に殲滅していきましょう!」


 というわけで二人は七階はひたすら無に徹し、八階は半分泣きながら、九階はブリブリ怒りながら、二ヶ月ほどかけて夏休み前に十階に到達した。


 この頃には二人ともレベルが二十に達していた。



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