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F学院高等部合格

「「F学院高等部、合格おめでとう! 悠星くん、これからも一緒に頑張っていこうね!」」


 ここは皐月さんの田園調布の自宅だ。

 正直、緊張するのでこの豪邸は敬遠したかったのだが、あのお茶会以来、何度かここでパーティが行われた。

 皐月さんたちは随分とパーティ好きみたいだ。


 さすがに皐月さんのご両親が出てくることはなくなった。

 僕達だけで楽しんでね、ということだった。


 そして、本日は僕の高校合格祝いが行われた。

 僕は県立S高校も同時に合格していた。


「悠星くん、あなたの実力を考えれば、落ちる可能性なんてゼロだったけどね」


「そうよ。全県模試で、ずっと十番前後をキープしていたもの。本当に凄いわよね」


「いやいや、体調不良とか緊張で失敗することもあるし、当日何があるかわからないからね」


「何を謙遜してるの。もっと凄いのは、学費全額免除の特別奨学制度に見事合格したことでしょ」


「あの奨学制度ってさ、成績が学年トップレベルじゃないと受からないって話だよね」


「五月に実力テストが実施されるんだけど、悠星くんの順位がどのくらいになるのか、今から楽しみね」


「君たちだって、中学三年最後の期末テストで、学年順位が一桁台だったんだろ?」


「えっへっへ。自分のことながら、本当にすごすぎちゃって」


「ほんとね。迷宮様々ね」


「頭脳面だけじゃなくて、運動能力も目に見えてバク上がりしてるし」


「モデルの活動の方も順調に進んでる?」


「活躍っていうほど大したことはしてないけど」


「迷宮のシンボルとして海ほたる迷宮の広報誌に載ったり、ゲーム業界からのオファーもいくつか来てるわ」


「ああ、雑誌の表紙も何回か飾ってたよね」


「うん。本名は出してないんだけど、学校の友達とかにはすぐにバレちゃって」


「でも、うちの学校には芸能活動してる子が結構いるから、特に何も言われないのがありがたいね」


「それなのに学院はトップクラスの進学校っていうのも本当に凄いね」


「系列の大学がそこそこ有名で、そこへは学校の成績さえ一定以上維持していれば、どこかの学部には確実に入れるのよ。それに、何と言っても医学部があるのが最大の魅力よね」


「学院からも毎年十人ぐらいの推薦枠が用意されてるんだろ?」


「そうなの。だから、上位クラスの席を争う競争がかなり激烈なのよ」


「いや、君たちなら十分狙えるレベルじゃないか」


「いえいえ、とんでもないわ。私には医者なんて無理よ。人の体を切り刻んだりするのよ」


「えー、魔物と戦ってるのに、そんなこと言うの?」


「魔物は非現実的な存在だから平気なの。今でも人の血を見たら貧血を起こしちゃうのよ」


「よくそんな状態で迷宮に挑もうと思ったね」


「あのときは何だか周りの雰囲気に流されて、勢いで決めちゃって」


「音羽さんはどうなの? 実家が病院経営してるんでしょ?」


「私も医者になるつもりは全くないわ。仮に医者になれたとしても、すぐに挫折しちゃいそうだし。そんな中途半端な気持ちなら、その枠を本気で医者を目指してる人にあげた方がいいでしょ?」


「医者って、結構ブラックだしね。イメージ的に無茶苦茶働かされるって感じ」


「実際、そうなのよ。うちの病院、看護士さんたちなんか余裕なくなってるの、すぐわかる。過労気味なのよ」


「医師不足、女医不足ってよく言われてるけど、職場環境が良くないよね」



「ところで、悠星くん。私達、ついにレベル八まで到達したんだけど」


「ああ、そうだったね。どう? 前に話してた戦闘感覚、ちゃんと身についたかな?」


「従魔なしでの戦闘イメージトレーニング? うん、完璧にできるようになったわ!」


「悠星くんが教えてくれた通りね。レベルが上がっていくにつれて、魔物の攻撃が全然怖くなくなっていったわ」


「じゃあさ、次の迷宮探索で従魔なしでの実戦を試してみようか」


「ああ、いよいよその時が来たのね」


「これで地下五階まで到達できるのね」


「地下五階に到達すれば、一人前のシーカーとして認められるからね。シーカークラスもEランクからDランクが見えてくるし」


「そうね。でも、地下五階ってどうなの? 結構危険だっていうけど」


「大型獣が出てくるんだよ。狼、猪、熊といった獣の魔物バージョンがね。全部色が黒いから、単純に黒狼、ブラックボア(黒猪)、ブラックベア(黒熊)などと呼称されてる」


「やっぱり、強い?」


「まずね、五階は集団では襲ってこない。必ずソロで出てくる。その代わり、一体一体は強い。本物っていうか普通の狼、猪、熊だって、成人男性でもまともにやりあえないでしょ? 五階の魔獣たちはそれらの五割ましの強さを持っているって言われている」


「ええ、かなうわけないでしょ」


「オリンピッククラスの成人男性でレベル二十ぐらいになっていたとしても、まともに組み合ったら瞬殺されるかもね」


「ムリすぎる」


「いや、今までの戦術を考えてご覧よ。もとよりがっぷり四つに組むなんて考えていない」


「ああ、遠距離から探りを入れて、探知したら遠距離攻撃ってわけね」


「そうそう。で、外した場合の退避コースは絶えず考えて」


「ポジショニング大事ね。丘の上とか木に登るとか」


「ああ。戦闘する前にほぼ勝負が決まるね」


「なるほど、そう考えたらちょっと怖いけど、恐れることはないって感じ」


「だね。それに、君たち、防御は完璧だよ。従魔防御は五階ぐらいの魔物では突破できない」


「こんなにちっちゃいのに」


「はは、本当の大きさは象ぐらいはあるけどね」


「え、そんなに大きいの?」


「まえ、そのうち本当の大きさ見せてくれるって言ってたよね?」


「ああ、覚えてた? 今度、迷宮で見てみる?」


「「楽しみ!」」



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