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NNN活動

NNN活動】


【ジーク目線】


 悠星が七歳のときに、ボクは神楽家にお世話になることになった。

 それ以来、悠星の育成だけをしていたわけじゃない。

 ボクの活動は多岐に及んでいる。


 ボクの活動とはNNNの活動ということだ。

 NNNはネコネコネットワークの略称。

 天界に本拠地がある。

 人間界で生を終えた猫は虹の橋を渡って天界に行く。

 そして、ある程度の期間を終えると、転生して人間界に行く。

 ボクはそうした猫生をかれこれ一千年以上続けている。

 


 今回は、ボクの毎日の外回りの仕事を詳しく紹介する。

 特に、ペットロス対策について具体的に説明しよう。


 ・ご近所でペットロスの人たちの補佐をする

 ・高齢でペットを飼わないと決めた家庭への訪問

 ・NNN通信で元の飼い猫に定期連絡する

 

 こんなところが毎日の大事な仕事。

 人間たちは本当にペットロスにかかる人が多い。

 飼い猫が死んで悲しいのはよくわかる。


 でも、ボク達は十分幸せだったんだよ。

 少なくとも、野良猫ではなく家猫になれただけでもボーナスステージなんだ。

 十分幸せだったし、もっと可愛がってあげられてたら、なんて悩むのはまったく見当違い。


 だいたい、ボクらはほっとかれたほうが楽なタイプが多い。

 例えば、朝から晩まで抱っこしたがったり、常に膝の上に乗せようとしたり、猫に構いすぎて嫌われてしまうことに気づかない人間は多いものだ。


 反対に、猫が苦手で距離を置いているのになぜか猫に好かれるタイプがいる。

 ほっとかれるから、自分のペースでいられるというの大きい。


 まあ、甘えん坊の猫がいるのは否定しない。

 一日中御主人様の後をついて回り、べったりの猫も多い。

 飼い猫は心が大人になりきれないからね。

 母猫から離れて人間に育てられるため、精神年齢が子供のままでいる猫が多いんだ。


 あ、中には御主人様を守っている猫もいる。

 人間たちにはわからないだろうけど、人間界にも悪意のある霊や、不吉な気配を持った存在がうようよいる。

 そういう邪気をおっぱらうのも猫の重要な役目。

 ボクみたいに徳を積んだ猫が、特にそういう守護者としての役目を担う。


 時々、猫が空中を睨んでいるときがあるでしょ?

 あれは、邪なものを追っ払ってるか、天界と通信をしているかどちらか。


 徳を積むっていうのは、あれだよ。

 例えば、人間におみやげを渡すことだよ。

 ネズミ、スズメ、トカゲ、バッタ、ゴキブリなんかを咥えてくることがあるでしょ?


 毎回、人間たちは「キャー!」って大喜びしてくれてボクは大満足しているよ。

 あの修行のような研鑽を何回も積んでいるから、ボクの尻尾は結局九つに分かれるまでになったんだよね。


 

 ということで、ボクたちは十分幸せな猫生だった。

 快適な住まい、温かい食事、心地よい寝床、そして優しい心遣い。

 でも、それに気づかない人間が結構いる。

 だから、こうしてボクのような猫が見回りに来てる。

 人間全般へのアフターケアサービスだね。


 特に困るのは高齢の方々。

 そうじゃなければ、新しい猫を紹介できるんだけど。

 高齢の方は新しく猫を飼わないのが殆どだから。

 

 ボクの前のご主人である佐藤さんがそうだな。

 おばあちゃんの一人暮らし。

 すごく心配で、毎日、庭先の影から見守っている。

 

 あ、佐藤さん家は悠星の家から1km程度しか離れていない。

 そこにボクの分身を置いているんだ。

 ただ、それ以上は何もできない


 他の高齢者のお宅もそうだね。

 特別にできることはなにもない。

 時々、庭先を通り過ぎたりするぐらい。

 鳴いてみたりね。


 元御主人様たちの様子を元飼い猫には定期報告している。

 例えば「最近は笑顔が増えてきたよ」とか「新しい趣味を見つけたみたいだよ」とか。

 元飼い猫たちはは元ご主人様に天界から念を送るんだよ。

 そうすると、夢に出てきたりする。

 まあ、殆ど忘れてしまうんだけど。

 でも、無意識下では少しずつ癒やされていくんだ。


 

 NNNをより強固にする活動もしている。

 都会では交通事故や迷子の心配から、猫の外歩きは嫌がる人が多い。

 だから、猫は外出できない。

 完全室内飼育が基本で、外飼はもってのほか、っていう人ばかりだ。


 だから、ボクは各家庭に飼われている猫の見回りをしている。

 真夜中の午前二時から四時くらいの、人間が深い眠りについている時間帯だけどね。

 

 飼われている猫には二種類いる。

 NNNネコネコネットワークに登録されている猫とされていない猫。


 されている猫は一度でも虹の橋をわたった経験のある猫。

 つまり、以前の生で人間と暮らした経験を持つ転生猫だ。


 されていない猫っていうのは、新たにこの世に生

を受けた猫。

 実は転生猫なんだけど、なんらかの事情で輪廻を断ち切っている。

 だから純粋な新生児というか、まっさらな魂を持った猫たちだ。

 

 で、ボクは様々な猫をケアしている。

 ボクは天界で講師としての役割も求められている。

 主に新入りの猫たちへの指導や、人間との関わり方についての教育を担当していた。

 この世界に転生してきてもそれは継続している。


 だから、猫の家に転移魔法陣を設置する。

 キャットタワーの最上段とか、カーテンポールとか。

 猫のお気に入りの場所に。

 すると、精神だけはその転移魔法陣にのって集会場に転移する。

 体は家で安全に眠っているままだから、飼い主も心配することはない。


 集会場はこの場所だと、川沿いの空き地。

 夜中だと人がこない場所だ。

 街灯もなく、藪に囲まれていて、来ても暗くて見通しが非常に悪い。


 僕達は猫だから、多少の暗さはまったく問題がない。

 むしろ、月明かりと星空の下でくつろげるってもんだ。


 その集会場でボクは天界から転生してきた講師としての役割を全うしている。

 単にボクの昔話をするだけなんだけど。

 例えば、人間との上手な付き合い方とか、家の中での過ごし方のコツとか。


 でも、それが若い猫たちの役に立つこともある。

 特に初めて家猫になった子たちには、先輩猫の経験談は貴重だからね。


 それに聞いていなくても構わない。

 どうせ猫なんだから。

 芝生の上で転がって寝そべって寝てる奴も多い。

 月明かりを浴びながらグルーミングに没頭している子もいる。


 それでも、閉鎖空間から開放されて癒やされている。

 いや、家の中が嫌ってわけじゃないよ。

 エアコンの効いた快適な部屋も素晴らしい。

 でも、たまには外の空気を吸って気分転換する必要があるんだ。

 風を感じたり、草の匂いを嗅いだり、虫の声を聞いたり。


 それと、集まった猫たちからの情報収拾も大切な仕事。

 どの地域で野良猫が増えているとか、危険な場所ができたとか、新しい動物病院ができたとか。

 この地域の安寧を願ってるからね。

 猫も人間も、みんなが平和に暮らせる街であってほしいんだ。



 そうそう、NNNでもっとも大切な取り組みもボクは請け負っている。

 それは、人間と猫の相性診断。

 NNNに登録されている猫たちの性格データを分析して、その家庭に合った猫を紹介するんだ。


 例えば、活発な猫が好きな人には、運動量の多い若い猫を。

 おっとりした性格の人には、落ち着いた年配の猫を。

 子供のいる家庭には、優しくて我慢強い猫を。


 これまでの経験から、相性の良し悪しは重要だとわかってる。

 相性が合わないと、人間も猫もストレスを感じてしまう。

 だから、事前にマッチングをすることで、お互いが幸せに暮らせる確率が上がるんだ。


 それに、保護猫の譲渡会でもこっそりと活躍している。

 ボクたちには、その猫の前世の記憶も見えるからね。

 どんな性格で、どんな環境で育ったのか。

 その情報を元に、最適な里親さんを見つけることができる。

 その情報をそれとなく譲渡会の主催者に伝えて、いい感じになるように誘導する。


 時には、天界からの特別な任務も受けることがある。

 例えば、困っている人間の元に導かれるように猫を送り込んだり。

 引きこもりの若者の家に、活発な子猫を送り込んだり。


 人間は猫に癒されることが多いからね。

 猫がいることで、生活リズムが整ったり、心が和んだり。

 そういう効果を期待して、天界は時々、特別な猫を送り込むんだ。


 ボクの仕事は、そんな天界の計画がうまくいくようにサポートすること。

 具体的には、その猫が新しい環境に慣れるまでの指導や、人間との関係づくりのアドバイスなんかをしている。


 まあ、すべてが上手くいくわけじゃない。

 相性が合わなくて、別の家庭に移らなければならないこともある。

 酷い場合だと野良猫になるケースもある。

 でも、それも含めて天界の計画なんだ。

 その経験が、人間にとっても猫にとっても、大切な学びになることもある。


 そんなわけで、ボクの仕事は本当に多岐にわたっている。

 でも、すべては人間と猫の幸せのため。

 これからも、天界からの特使として、この地域の平和を見守っていくつもりだよ。



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