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今後の方針2

「じゃあこれで解散? 私、早くシマくんと遊びたい」


「ああ、私もモモちゃんと」


「まあまあ。話はまだあるんだから。でさ、今後の活動の話しなくていいの?」


「あ、いけない。それはしなくちゃダメ」


「従魔ちゃんの可愛さに心が行ってた」


「はは、迷宮活動は毎週月曜日ってことでいいよね?」


「うん」


「月曜日だと神楽くんの中学が五時間授業。掃除が終わるのが三時。私たちは平日はいつも二時五十分終了。私んちの車をまわしてもらって、神楽くんを拾ってだいたい四時ちょっと前に海ほたるに到着。二時間活動して、七時までには帰宅」


「ホントは土日のほうがいいんだけど、私達、仕事が入ることが多いから。ごめんね」


「いや、全然。月曜日はいつも活動してるし、車でつれてってもらえるんだからラッキーって感じ。でね、二つの課題があるんだ」


「二つ?」


「一つは、今日ゲットした気配察知」


「私達の初めてのスキル」


「迷宮に限らないんだけど、敵を先に認識するってのはとっても大切なわけ」


「うん」


「いい例は、戦闘機。彼らはレーダーでずっと遠くから索敵する。五十km以上離れた場所から。で、見つけたら、ミサイル撃ってさっさと戦場を離脱する」


「え? バリバリやんないの?」


「格闘戦は無視できない。でもメインはミサイルだよ。それはともかく、僕の言いたいことは先に見つけることが大事ってこと」


「「ふむふむ」」


「で、先に攻撃する。先制攻撃、マジ大事。攻撃も極力、一撃必殺であること。失敗したら、二の手をすぐに用意するか逃げる。だから、二の手をあらかじめ考えて準備しておく。逃走ルートも頭に入れておく」


「あ、それ私達にピッタリ。格闘なんてできないもの」


「それはみんな一緒だよ。魔物は僕達を殺しにくる。彼らの攻撃は一撃必殺。致命傷を与えに来るんだ」


「うん。すごく怖いのはわかる」


「人間って弱いんだよ。人間側は傷を受けると戦闘力がかなり落ちる。肉体的にも精神的にも。逆に魔物は中途半端な傷を受けると、死にものぐるいになって逆に攻撃力があがりやすい」


「「うわ」」


「だからこそ、僕達の攻撃は一撃必殺が求められるんだ。格闘戦になったらかなり不利になる」


「ああ、格闘技みたいに延々と対戦しているってのはないのね」


「ありえないよ。あれは、危険な技を禁止されているからああなるんだよね。武術がいい例で、武術は端的に言うと、相手を殺すために技を磨く。だから、一瞬でケリがつくことが多い。急所を狙ってくるからね。例えば、目を攻撃する。目が失われたら、それで対戦は終了。あとはボコスだけだから」


「うん、わかる」


「通常のスポーツ格闘技は目を攻撃するのは反則になる。でも、反則技が解禁されたらまるで違う競技になる。ていうか、殺し合いなんだけどね」


「なるほど。武術って怖いのね」


「そんな武術でも、金属棒一本で無力化されるんだよ。暗器ってやつ。武術の達人が明言してた」


「「はあ」」


「距離もスポーツ格闘技は迷宮ではやばいことが多い。例えば、柔道。組んだら死ぬよ。迷宮では。あるいは空手で超接近戦で延々と突きをやってるけど、あれも迷宮ではありえない」


「じゃあ、格闘技やってる人たちなんかかえってヤバいってこと?」


「そうだね。かえって過信があるとまずいかも。昔、力道山っていう日本一のプロレスラーはナイフ一本で亡くなったんだよね」


「「まあ」」


「人はどれだけレベルをあげようと、魔物には身体能力ではかなわない。下のフロアに降りていけば行くほどそうなる。そんな魔物とがっぷり四つに組む。ありえない。相手の一撃必殺の距離内にあったら、あっという間に死んじゃうよ。たいていの格闘家はライオンと徒手で戦うなんて考えないと思う」


「そうよね」


「それに、戦いはそれだけじゃない。迷宮では次から次へと敵が出てくる。継戦能力も大事なんだ。だから、自分の格闘レベルを過信している人は大変危ないね」


「ああ、わかる。私達なんか角ウサギでも格闘戦をしたら瞬殺だもん」


「角ウサギは後の先という戦法だね。先に攻撃させて、実際は攻撃を封じつつ、相手を攻撃する」


「ああ。待ち構えているところに攻撃して自爆するのね」


「うん。ちょっと角ウサギは特殊だけど、基本戦法は遠距離から相手の位置を特定して、限りなく遠い位置から相手に一撃必殺の攻撃をしかけること」


「それって、私達にぴったりね!」


「うん。ていうか、それは全シーカーの基本戦法。だから、第一課題。今日さ、気配察知のスキルゲットしたでしょ?」


「「うん」」


「あれが、君たちのレーダーになる。今後の課題は気配察知のレンジを伸ばすこと」


「えと、どうやって?」


「さっき腕輪つけたでしょ? 迷宮の外でも気配察知使えるようになる。でね、家でもどこでもいんだけど、ひたすら周りに気を配るわけ。気配察知の感覚はわかるでしょ? その感覚を鋭くしていくのがポイント」


「なにか特別な方法とかあるかな」


「古くからあるのなら、坐禅とかメディテーションとかああいう精神修養を参考にするといいかもね」


「ヨガとか呼吸法とかね」


「そうそう。僕は瞑想ってのをやってる。ネット見ればやり方はいくつか落ちてるから参考にすればいいよ。ちなみに僕がやってるのはこれ」


 僕はスマホでサイトを示した。


「私達もやってみるね。となると、自分の部屋とか落ち着いた場所のほうが良さそう」


「うん。最初はね。自分の部屋でやってみれば、そのうち家全体の気配を探れるようになるよ。今日の晩御飯は何、とかさ。でね、慣れてくると雑踏のほうが鍛えられることもある。応用が効く感じかな」


「なるほど。どういう状況でも気配察知できるようにするわけね」


「そうだね。二番めは、体力強化。もちろん、レベルが上がると体力は強化されていくんだけど、ベースになるのは素の体力」


「あ、そうか。同じレベルならやっぱり男子に負けるわけか」


「そういうこと。極端な話、レベル1にレベル二十が負ける、ってことは十分ありうる」


「それって、むちゃくちゃ恥ずかしいね」


「そうでもないさ。フィジカルお化けみたいな超人がいるからね。オリンピック級の」


「ああ。室伏○治選手みたいな」


「そうそう。だからといって、指をくわえていても仕方がない。フィジカルトレーニング。部活なり、フィットネスクラブなりで基礎体力を上げていくこと。非常に大事」


「わかった。私達、部活はやってないけど、フィットネスクラブには加入してるのよ。ちょっと真面目にやってみる」


「メニューとか組んでもらえるしね。とにかく、継続は力なり。地道に頑張っていこう」


「「うん!」」



 ところで、気になることがある。

 今日は似たような波動に監視されているような違和感を覚えるのだ。


 しかも、その波動は一つではない。

 複数の似通った波動が、まるで交代で監視しているかのように周囲から感じられる。

 おそらく組織的なチームによる監視を受けているのだろう。

 非常に不気味な状況だ。


 例えば、僕達の後に続いて三階に降りてきたチーム。

 気配が不自然だった。

 あれは初心者じゃない。

 急に気配がしなくなったし。


 ちょっと、罠をはってみようか。



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