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今後の方針1

 海ほたるのスター○ックス。

 パーキングエリア店にて。


「私はダーク モカ チップ フラペチーノ」


 こちらは皐月さん。


「私はキャラメル フラペチーノ」


 こちらは音羽さん。

 

「私達のお気に入りのメニューよ」


「でも、期間限定ストロベリーベリーマッチフラペチーノは美味しかったよね」


「うん。期間終了なのがまことにおしい。初めて口に入れた瞬間、美味しくて倒れたもんね」


「ぜひともスタンダードメニューにしてほしい」


「僕は、マンゴー パッション ティー フラペチーノ。マンゴー、大好きなんだ」


『(ボクと従魔にはフレッシュ バナナ&チョコレート クリーム フラペチーノ頼むにゃ。あと、チュ○ルにゃ)』


 メニューは毎回彼らが相談して決めている。

 バラバラになることは滅多にない。

 同じものを食べてあとで品評をしているそうだ。


「ジークくんたちも食べるんだ」


「ああ、毎回ね。彼らは基本的にご飯いらないんだけど、甘いものには目がなくて。あとチュ◯ル」


「魔獣でも美味しいものには弱いのね」


 僕達は注文したものを持ってドッグ・シー・テラスへと移動した。

 ペット持ち込みのできるエリアだ。

 そこでいつものようにお皿を出し、ジークたちに提供する。

 もちろん、ジークはともかく従魔は姿を隠したまま。



「で、どうだった?」


「本当にお陰様で、とっても楽しかった!」


「いろいろ信じられない一日だったけど、本当に楽しかった」


「衝撃度は生まれてこの方、最高だったかも」


「いや、大げさな」


「悠星くんの三階での身のこなしみたら、納得できる」


「動きがまるで見えなかったよね、あのウサギ捕まえたとき」


「気付いたら、手にウサギ持ってた」


「マジックみたいだった」


「従魔とか結界魔法とかいろんな魔道具とか信じられないものたくさん見たし」


「ジーク、連れて帰りたい」


「あんな可愛い猫ちゃん、絶対にいない」


「すっかりアディクティッド」


 ※夢中っていう意味


「従魔くんがいるでしょ?」


「え、迷宮の外でも連れ歩けるの?」


「基本、君たちの護衛になるから」


「うそでしょ。嬉しい!」


「これで姿を現してくれたら」


「あのさ、自分の部屋でならシマくん、姿を現してくれる?」


「ああ、そういう場所ならいいんじゃない?」


「えー、従魔くんたちとお勉強? 徹夜しちゃうかも!」


「誰か来たら隠れるようにしておけばいいから、寝るときも一緒で」


「あああ、早く家に帰りたい! チュ○ル買っていかなきゃ」



「でもね、ホッとしたよ」


「「何が?」」


「あのさ、迷宮攻略で一番障害になるのは何だと思う?」


「体力?」


「あのね、討伐自体なんだよ」


「どういうこと?」


「普通さ、生き物って殺せないでしょ?」


「うん、ムリ」


「血を見るのも嫌っていう人たくさんいる。男女問わず」


「私がそう」


「迷宮の魔物が討伐できない人って、結構いるんだよ」


「ああ、なるほど。私達も来る前は不安だった」


「シーカーの先輩が、実際の生き物と迷宮の魔物は全く違うから。って言ってくれたからなんとかチャレンジできたんだよね」


「確かに、そのとおりだった。ゲームしてるような感覚。討伐しても実感がないのよね。遠距離攻撃主体だし。血も出ないし。黒い霧になって消滅するし」


「だけどね、そうじゃない人もいるわけよ」


「ああ、いるかも。『ウサギ』って名前がついてたら、チンチラとか思い出しちゃうもんね」


「そうね。実際はウサギとは形が似てるってだけで全くの別物、っていうか生物でさえないけど。どうみたって自然界のものじゃないよね」


「私達も少し間違えればお手上げだったかも。悠星くんが励ましてくれたり、優秀な魔道具かしてくれたお陰よね」


「特に最初のスライム討伐は助かった」


「そうそう。あれで、この世界がリアルじゃないってよくわかったわ。ピコピコハンマーで破裂するってどうなのって感じ。あれで迷宮のスタンスがわかったっていうか」


「うん、そうなら僕としても嬉しいよ」



「ところで、君たち、今日だけでレベル五になったでしょ」


「うん、嬉しいー」


「レベル五なんて半年以上かかるって話しだったものね」


「レベル1でだいたい四%程度体力とかが上がるって話知ってる?」


「そうなの?」


「レベル五ってことは、1.04の五乗。体力が1.22倍になったてこと」


「わ、凄いわ」「うん。あんまり実感がないけど」


「でね、この腕輪。魔道具なんだけど。迷宮のレベルを迷宮の外にも持ち出せる魔道具」


「え?」「うそ?」


「これつけて、迷宮施設の体力測定、簡単なのしてみたらいいよ。あ、腕輪つけたら自然と腕に馴染んでいくから驚かないでね。はずすときはそう念ずればはずれるから」


「わかった。私、ちょっと行ってくる」「私も」


 …………


「握力とか上がってた!」「だいたい、二割アップ!」


「レベル十だと、五割以上増加する。そうなると、明らかに以前とは違う自分になる。体力は男子と同程度か上回ってくるんじゃないかな」


「うそ、やったー!」「うれしすぎる!」


「でね、頭もそれに応じて賢くなるから、期末テストとか期待できるよね」


「おおお」「トップになったりして」


「だからといって勉強しなかったらダメだよ」


「ま、そうだよね」


「でも、吸収力がダンチだから」


「ひょっとして、一番嬉しいかも」


「でも、画期的すぎない?」


「世の中ひっくり返るレベル」


「ジークのおかげさ」


「「ジーク、マジ有能」」


『(ふふ、われを崇めるにゃ)』


「ははー」


「ああ、あと今日だけで二万円以上もらえたんだけど」


「やっぱり悠星くんにお礼すべきだと思うの」


「いや、それはいいよ。遠慮なくもらっちゃってよ」


「いえ、そういうわけにはいかないわ。ちゃんとしたお礼はまた後日するとして、半分だけはもらってよ」


「そうよ。是非」


「うーん、じゃあ遠慮なく」


「でも、凄い稼ぎよね。これ、下の階に行けばいくほど魔石の値段が高くなるんでしょ?」


「A級シーカーとかになると数千万円、億を越える収入の人がいるって」


「そんなに魔石って必要とされているのかしら」



 ここで若干の説明を加える。

 迷宮に関しては魔素の悪影響ばかりが喧伝され、迷宮は悪いイメージしかなかった。

 実際、数多の犠牲者を出した。


 そんな迷宮悪玉論が大転換した。

 世界同時多発大地震のあった三年後。

 迷宮の有効性を説くものが現れた。

 MIT出身の物理学者ダニエル・ハリーである。


 彼は積極的に迷宮攻略を進め、世界でも最初期に魔導具師となった一人である。

 魔導具師になるのは迷宮でレベルを上げる必要があり、さらにその中で選ばれたもののみがなることのできる、かなり偶発性の高いものである。


 魔導具師になったおかげで解析の進んだものがある。

 迷宮で発見される巻物の解析だ。

 この巻物に描かれてある文字は失われた古代文字とされる。

 その意味不明の文字をなぜか魔導具師はスラスラとよむことができるのだ。


 博士は迷宮攻略中に『魔導発電』魔道具が記載された巻物を発見した。

 魔石を電力に変える魔道具である。


 この魔導発電、恐ろしく変換率が高い。

 魔石のエネルギー変換率は体積基準でなんと石油の1万倍にも及んだのだ。

 しかも、環境への負荷が極めて少ない。


 ダニエル・ハリー博士はこの情報をすぐさま公開した。

 この論文に基づき、各国ともすぐさま魔導発電に取り組んだ。

 ちなみに博士の発見した巻物は各所の迷宮で容易に発見されるものであった。

 各国で論文は精査された。


 あっという間に魔導発電所が建設され、何かと批判の多い原子力や自然エネルギー発電所に取って代わられていった。


 魔導発電所の建設の容易さも相まって、数年で全発電量の数%を魔導発電が占めるまでに急成長し、さらに十年以内には占有率が十%を越えるのは確実であると予想されている。


 人によってはこれを第三次エネルギー革命という人もいる。

 現在では迷宮産業は未来を切り開く花形産業としてもてはやされている。

 将来的には年間の市場規模は全世界で千兆円を超えると目されている。



 また、迷宮の有用性にはもう一つある。

 魔素が個人の力量を向上させることだ。

 魔物を討伐するとレベルが上がる。

 このレベルによるステータス向上は主に迷宮内でしか発揮されない。


 しかし、迷宮外においても影響力がなくなるわけではない。

 十分の一程度の能力向上が見られるのだ。


 これに世界のトップ水準で争うものたちが一斉に飛びついた。

 競技者や科学者とかいった連中だ。


 例えば、陸上競技で世界記録を出すものは全員が迷宮攻略者である。

 ノーベル賞受賞者も将来的には攻略者で占められると予想されている。


 その流れはトップのみではない。

 一端6の学生にまで及んでいるのだ。

 少しでもテストの点をあげたい。

 部活での成績をあげたい。

 そういう思いで多くの人たちが迷宮になだれ込んでくる。


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