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音羽&皐月5 ポム・メーラ始動

「ねえ。衣装さ、ロスゴリにしない?」


「賛成! プリ○ュア路線だと小学生とかだもんね。あとで見に行こ? ロスゴリパンクが私のイメージ」


 プリ○ュアは男の大きいお友達も好きらしいけど。


「わあ、攻めてるわね。私はフリルいっぱいつけたい」


「これはお店たくさんまわんなきゃ。研究しがいがある。デザイナーさんも紹介してほしいわね」


「やっぱり、一点ものよね」


 うーん、段々とブルジョアの会話になってきたぞ。


「悠星くん、ロスゴリ仕様の魔道具も作れる?」


「ああ、いいよ。手袋だよね? まず物をみせて。できないってことはないけど、生地の種類によって性能に違いがでるからね」


「レースでもいい?」


「レースって、カーテンなんかのレースと同じ?」


「ああ、あんな感じ」


「うーん、攻撃魔法だとできなくはないんだけど、威力的にちょっとまずいかも。厚手のほうがいいんだけど」


「皐月、革製のがあったよね?」


「ああ、大きなリボンのついた?」


「そうそう」


「それなら大丈夫そう」


「でも、暑そう」


「じゃあさ、夏は涼しくなるように、冬は暖かくなるように、温度調節機能をつけてあげるよ。ジークいいよね?」


『(無問題にゃ)』


「そんなことできるの?」


「難しくはないから。温度調節機能は初歩的な魔法なんだよ。温度調節だけなら、レースみたいな感じでもいけるよ。あと、衣装全体に温度調節機能と防御魔法も付与しておこう」


「うわー、魔法、なんだよね。すっごく現実感がないわ」


「でも、それすっごく助かる! ゴスロリ衣装ってさ、すっごく暑いのよね」


「音羽、私達は魔導師としてデビューするのよ?」


「魔導師ポムと魔導師メーラよね」


「魔導師りんごと魔導師りんごなんだよね」


「うーん、なんだか締まりがないかも」


「名前はゆっくり考えてね。でね、魔道具は君たちのステータスに比例して威力が出るわけ」


「つまり、強ければ強いほど魔道具は強くなると」


「そういうこと。まあ、必要なパラメータは魔道具の種類によって違うけどね」


「ああ、魔法攻撃なら魔力とか、防御魔法なら生命力とか?」


「うん。自分だけに見えるあのウィンドさ、詳細なパラメータが出てこないでしょ? だから細かくはわかんないけど」


「とにかく、レベル上げってことね!」


「そうそう。じゃあさ、今、こうして一階の草原にいる。周りには誰もいない。ちょっと魔道具を試してみようか」


「「やったー。ジークくん、よろしくね?」」


『(チュ○ルを忘れないようににゃ)』



「ところで海ホタル迷宮の一階の公園。代々木公園そっくりだってね」


「そうなの? 私、代々木公園行ったことない」


「私も」


「入口に時計塔があったでしょ? あれ、JR原宿駅から代々木公園に入るとすぐに見えてくるのと同じ」


「「そうなんだ」」


「世界中の迷宮地下一階には必ず公園があるらしいんだけど、どれもがどこかでみたような公園らしいよ」


「へえ。迷宮って異次元かもって話だよね? 時間の流れは同じなの?」


「全く同じ時間だと思う。ただ、不思議な空間であることは確かだな」


「じゃあ、地下二階に行く?」


「そういえば、私達地下一階にしか行ってないんだね」


「スライム叩きに熱中してたから」


「この地下二階こそがここが迷宮と名付けられた原因なんだよね」


「ああ、しかも二階だけじゃなくって多くのフロアが迷宮って話」


「しかも二十四時でルートが替わるんでしょ?」


「うん。まだ地下二階だから迷ってもいいんだけど、深く降りていったところにある迷宮で迷うと悲惨だよね。延々と厳しい敵と戦う羽目になる」


「「あああ、嫌だそんなの」」



 僕達は公園の奥に向かう。

 大池を越え、中央広場を横切り、さらに奥に行くと、建物が見えてくる。

 代々木公園だとサイクリングセンターのある位置だ。

 その建物の中に地下二階に向かう階段がある。


 地下二階に降りると、ちょっとした広場があり、その先にさらに入口が見えてくる。

 この入口の先が迷宮になっている。


 この迷宮は二十四時を基準として毎日更新される。

 同じ迷宮は二度と出現しないと言われている。

 そして迷宮はこの先、何度も現れるのだ。


 地下二階の迷宮はクリアすると二つの扉が現れる。

 一つは地下一階の入口へと通じる扉。

 もう一つは地下三階へと通じる扉。


 地下三階へと通じる扉には迷宮庁の係官が待機している。

 ライセンスをチェックするためだ。

 この先に行くには、F級ライセンス以上が求められる。


 このF級ライセンス取得が一つのハードルとなる。

 迷宮免許取得者は日本全国で一千万人以上いる。

 しかし、F級ライセンス以上の取得者は百万人に満たない。

 しかも、活動を継続しているのは二割程度と言われている。

 E級になるとぐっと減って二十万人。

 と、だんだんと減っていき、最高クラスであるS級は十人しかいない。


 あと、三階入口の迷宮庁係官は緊急救援隊の役割もする。

 事故が一番多いのは三階なんだ。


 一・二階はスライムしか出てこないし、かなり安全。

 でも、その調子で三階に降りていくと途端に事故る。



「地下三階に初めて降りる場合、三つの選択肢がある」


 一 何も手当をせずに自分たちだけで降りる

 二 迷宮庁のレクチャーを受ける

 三 E級以上のパーティメンバーがいる


「一は問題外。そもそも、F級しかいないと三階に降りることができない。これは迷宮庁の決め事」


「それだけ危ないってわけね?」


「ああ。F級だけで何も考えずに三階に降りたら、高確率でやられてしまう」


「うーん」


「だからね、普通は迷宮庁のレクチャーを受けるんだ。講師一人につき、受講者一人あたり一回一時間一万円。十人まで」


「微妙な額ね」


「この額で命が買えるんだから、F級しかいないパーティはこのコースを選ぶしかない」


「でも、私達は三のコースだと。つまり、悠星くんはE級だと。いつのまに」


「ごめん、D級なんだ」


「「え」」


「クラスは迷宮庁に提出する魔石の量で決まるから。目立ちたくはなかったんだけど、D級になるといろいろ特典が多くて」


「えー、悠星くん、まだカード取得してから一ヶ月でしょ?」


「そんなに難しくはないって。コツさえ分かれば、君たちだってすぐにD級に上がれるよ」


「「それ、絶対ウソ」」


「はは」


「でも迷宮庁ってすっごく慎重なのね」


「ああ。基本的には自己責任なんだけど、それでも地下三階へ初心者が降りていくのは非常に危ない。まず、地下二階と三階が全然違うから、みんな初めてだと戸惑うんだ。特にアル・ミラージっていうウサギが凶悪なんだよ」


「角ウサギね」


「百mを五秒、二十mだと一秒ちょっとですっ飛んでくるからね。見えたと思ったら、次は眼の前だよ」


「あの角で突き刺してくるんでしょ?」


「うん。雑食性で、人間を食べるからね」


「ウサギなのに」


「ウサギに似てるってだけでウサギじゃないし、実際はかなり獰猛だよ。ただ、対処は難しくない。角ウサギは猪以上に猪突猛進だから、盾をたてて正面に待ち構えていればいい。衝撃はさほど強くない」


「そうなの?」


「でも、F級をとって地下三階に降りていったはいいものの、半数近くはすぐに攻略をあきらめるらしいよ」


「結構なドロップアウト率なのね」


「そうだよ。じっくりやればちゃんと攻略を進めることができるはずなんだけど、迷宮庁はちょっと怠慢だと思う」


「シマくんたちの防御結界は大丈夫?」


「角ウサギの突進ぐらいじゃビクともしないよ。かなり下の階でも大丈夫」


「えと、ちょっと待って。十五歳になったばかりなのに、悠星くん、随分と下の階にまで行ってるってこと?」


「他にも、従魔とか、魔導具師であるとか、もうすでにD級だとか、悠星くん、ちょっと規格外すぎるんだけど」


「十歳ぐらいからこっそりと迷宮を攻略してた」


「「は?」」


「これもジークのおかげなんだよ。迷宮の悪影響を完全に排除して、いい影響だけを僕に与えてくれたんだ」


「へえ、迷宮の幼児教育がどうこうって話題になるけど、悪影響を排除すれば悠星くんみたいになるってこと?」


「幼いうちから活動できれば、かなりの成長が期待できるみたいだね。まあ、僕の実力はおいおいとわかるから」



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