「吾輩は猫である」とは
俺は「吾輩は猫である」という小説を読んだことがない。母さんが言うには大人はみんな知ってる小説家が書いた古い小説らしい。学生という時分で教養を得たい時期だが、そもそもタイトルから読む気にならない、そもそも猫っていうものが何かわからないし、吾輩なんてどう読むのかわからない。タイトルからわかる通りのホコリをかぶった代物だ。
だが分からないなりに「猫」というものが何なのか、興味はある。足は何本なのか、どんな声で話すのか、、「猫」というひとつの単語を通して俺が頭の中でぼんやりと描く「猫」は様々な姿に形を変える。体は毛でモフモフなのかな、、それだったらクラスメイトの犬山君みたいだな、あいつでも結構授業中ワンワンうるさいからあいつみたいだったらヤダな、、クラスには「モフモフ」も「ヌメヌメ」もいるから一人ぐらい猫に当てはまる奴はいるだろ。と頭にあった猫の形はぼんやりになったまま、俺は朝飯の四角い積み木みたいなやつを食べた。
学校のクラスに体がモフモフでワンワンいう奴や手足が八本ある奴、おまけに背中に羽があって目が5個も6個もある奴が生徒として入ってきたのは俺が生まれる前のことみたいだ、親によると以前はこの積み木以外のうまいものがあったが、ブーブーいう奴の抗議の声があって、この積み木に全部変わったらしい、マズくはないけどウマくもないあの四角形以外の食べ物も気になるがそれよりも「猫」のことが気になる、もしかしたら猫は昔、食べ物として以前は食べられていたのではと少し脳をかすめていったが、少しゾッとした後に、それはないとその考えを消した。理由、根拠は全くないが、これはたぶん本能ってやつだと思う。ちょっと俺自身の考えに怖さを覚えたがそれを振り払って、自分用の制服に袖を通した。
家でやることはやったし、もう家を出て学校に行かないといけない。親に行ってきますと言った後、家を出た。そのあといつものように、お隣さんの、とんがった耳で鼻にひげが生えている、大きくてパッチリ黒目で語尾に「ニャー」をつける三毛川さんに挨拶をした。「気をつけてニャ」と言ってくれた。マジで愛らしい人だ。猫もあんな感じだったらいいのに、そう感じながら走って学校に行った。