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アメリカンガールズと妄想殺人  作者: ピタピタ子
8/17

クラス

休日、サラと一緒に博物館に行った。椅子に座りサラは携帯を操作していた。

「サラ、何やってんの?」

「出会い系アプリよ。」

「私達、まだ未成年よ。そんなことしちゃ駄目よ。知らない男に会って、暴行受けたり、殺される危険性だってあるの。私の従兄の学校でもそれで殺された女の子がいたの。」

「会うわけではないし、写真も載せてない。チャットがしたいだけなの。ハーパーとかにはこのこと言わないで、全力で止めそうだから。」

確かにサラは私のいない時間は退屈そのものだろう。

「出会い系に全力注いでるわけじゃないから。動画とか見るのも楽しいし。」

「趣味がいっぱいあるのね。休憩はおしまい。まだまだ続きあるから見ようよ。」

「分かったよ。」

たくさんの陶器が展示されていた。フランスや中国の青磁のものまでたくさんだった。一通り見終わると博物館を出て、一緒に小さなレストランで食事をした。

「ゾーイ何か学校であった?」

「実は私をいじめてた主犯格のクラスメートが自宅で自殺したの。突然だったから驚いてるの。」

「でも心のどこかでいじめっ子が一人減って、安心してるでしょ。」

「こんなこと考えちゃいけないけど、正直安心してる。」

「人間そんなキレイなもんじゃないわ。反省しない人間が死に際に助けを求められようが、何もしない人間が多いと思うよ。そんな聖人な人間なんて中々いないよ。世の中には聖人のように見せかけている人が多いわ。もう私にはそんな心はないわ。それより私、新しく朝方で配達のバイトはじめたの。」

「大変だね。」

「大したことないわ。この家もゾーイの親にバレたら、追い出されるだろうし。」

朝方はサラのいない日があった。そんな時はサラのイラストを描いたり、サラの人形を見つめていた。向こうはどう思ってるか分からないけど、サラが来てから家にいる時は明るくなった。

学校に通学中、バスには主犯格のクラスメートはいなかった。最近、車で通学してるみたいだからその時ばかりは安心だ。学校に着くとまたルーシーとミラとその取り巻き達に捕まった。

「あんたまだ学校来てるの?アダムに振られたのに、まだいじめが足りないわね。どんどん泣かせてやる。」

「前から気になっていたけど、これ何?」

ミラはサラの人形を触って引っ張る。

「自作の人形だよ。とても大切なものなの。返してくれない?」

「何趣味の悪い人形。」

ミラはひたすら人形を引っ張っていた。

「触らないで。返してよ。」

「こいつ、必死すぎる。何、本気になってるの?」 

「本当にダサくてありえない。」

ルーシーと他の取り巻きの女子達は一緒に笑っていた。

「もう良いでしょ。」

「返すわけないでしょ。」

ミラは思いきり人形を引っ張り、人形の顔は取れてしまった。

「私の人形が。」

ミラはルーシーに人形の顔をパスした。私は必死になってルーシーから取り返そうとした。しかしルーシーも他の女子にパスした。

「これを返して欲しければここまで来な。ジョセリン。」

どんどん色んな人の手に回る。今度はミラが胴体を誰かに投げる。私は涙が止まらなかった。途中でアダムも来て、サラの人形の顔と胴体の投げ合いっこに参加した。どんどんエスカレートしていく。

「返してよ。」

「走ってる走ってる。」

皆で私のことを笑う。終いにはミラが人形の顔と胴体を遠くに投げ捨てた。

「私の人形!!」

私が走ろうとすると、ミラとアダムが私の足を引っかける。顔をあげると、二人は抱き合っていた。

「ねえ、あんたがアダムと付き合える確率なんてゼロだから。アダムは美しい女の子しか興味ないの。分かったら、アダムに手を出すのやめて。不愉快だから。」

「私は何もしてない。」

「こんな女と付き合うなんて、地獄の時間そのものだな。」

「勘違いもうんざり。あんたと付き合う男なんて一人もいないんだから。」

「それ言えてる。もうこんなやつおいて行こう。」

皆、人形を拾うことなく立ち去る。フランクがいなくなっても私の立場は変わらなかった。クラスの頂点がいなくなると、また新たな頂点が生まれる。高校はそんなものかもしれない。

「あそこだわ。」

人形の胴体と顔を拾おうとしたら、誰が拾ってくれた。

「サラ。今日はバイトお休みだったの?」

「うん。それよりこれ大事なもんだろ。すごい無惨な姿だけど、渡すね。」 

「ありがとう。」

サラを追いかけようとしたら、もういなかった。

「学校にいるといつも消えるのが速いのね。」

サラはこの後何するつもりなのか。

家に帰ると、ハーパーが待ちかまえていた。

「おかりなさいませ。お嬢様。サラお嬢様が部屋で話があるみたいで部屋で待っております。」

「分かったわ。」

部屋を開けるとサラが待っていた。サラはスマートフォンで何かを見ていた。

「何見てるの?また動画?」

「動画じゃないよ。ライブ配信よ。最近流行ってるでしょ。特におしてるライバーとかいないけど何となく見てるよ。」

「よく分からないけど、そうなのね。サラもライブとかするの?」

「私は別にしないよ。ライバーは所詮、欲深い奴らの集まりよ。」

「そんな人達ばかりではないと思うけど。それなのに、配信見てるの?」

「流す感じで見てる。それにそんなに没頭もしてないし、課金してギフトを投げるなんてしないわ。それならストリートパフォーマンスに投げ銭する価値あるわ。」

サラは携帯を投げ飛ばした。

「それでハーパーから聞いたけど話って何?」

「次のターゲットは決まったの?あの二人を倒してもまだまだ心が晴れなそうな感じがするけど。」

「まだ決まってない。」  

「ここでやめるのはもったいないわ。ゾーイが嫌な人間なんて本当はいくらでもいるの知ってるんだから。」

「嫌というか、いない方が良いと言うか。いない方が安心するの。」

思わず口に出てしまった。

「ついに言っちゃったね。」

私は人形の壊れたパーツを縫いながらサラに話しかけた。

「それより今日はありがとうね。」

「何?急にどうしたの?」

「学校で人形壊された時、拾うの手伝ってくれたんじゃん。」

「私、今日一度も学校行ってないよ。」

「確かにサラだったのに。この前も荷物拾うの手伝ってくれたよ。」

「私は学校の中に一度も入ったことないわ。他の誰かと私を混同してるんじゃないの?」

不思議だった。あの姿はサラそのものだったのに。

「それよりその人形がどうしたの?」

詳しくサラに事情を話す。

「誰だがよく分からないけど、その女が次のターゲットね。」

「分かったよ。サラに付き合うわ。でも今日は宿題とかやんないとなの。今度ね。」

「ゾーイは勤勉ね。」

人形を縫い終わると、自然と笑顔が戻った。気がついたら、教科書の片隅にもサラの絵を描いていた。

3日後、学校に行くと学校の生徒達が騒いでいた。何かとんでもないことが起きたような雰囲気だった。

「皆、授業は始まってるのよ。先生が話すから教室に入りなさい。」

皆は先生言われ教室に入るが話すのをやめない。

「皆、静かに。今朝、ニュースでも見た人もいるかもしれないですが、クラスメートのルーシー・コリンズさんが見知らぬ女性に刺し殺されました。女性はまだ逃亡中で、詳しい身元も分かっていません。残念ながらルーシーはもうこの教室に戻れないの。何か心当たりがある人は先生まで報告ください。」

「犯人の女、捕まってないんだって?何で殺されたのかも分からないじゃん。」

「そんなのあんまりよ。」

クラスメートはそれぞれ思うことがあるようだ。私は心のどこかで安心感を感じた。駄目だと分かってる。でも一人いじめっ子がいなくなると、やっぱり解放された気持ちになる。

「皆さん、女性はまだ逃走中です。いつあなた達も刺されるのか分からないんです。くれぐれも夜の外出は控えるように。」

その日はすでに二人もクラスメートが亡くなった為、クラスはどんよりだった。今日も天気が悪い。

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