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アメリカンガールズと妄想殺人  作者: ピタピタ子
2/17

いじめ

放課後になると、シンディーの席の方に向かった。クラスメートの多くが私を見てはわざとぶつかってくる。彼らはぶつかってそのまま無視する。

「シンディー、一緒に家に帰ろう。」

「ちょっと待ってて。電話来たわ。もしもし、ジョン?今教室の前にいるの?分かった今向かうね。」

シンディーに教室の外まで連れてかれた。

「ジョン、会いたかった。」

シンディーはとっさにジョンに抱きつく。

「今日はどこ行くの?やっぱり家に行く?」

「シンディー、今日は私と約束があるんじゃないの?」

「ごめん、私彼氏いるの知らなかった?紹介するね。隣のクラスのジョンよ。これから大事なデートがあるの。一緒に帰るのまた今度ね。」

彼女は私の耳元でささやいた。

「あんたと一緒に帰るわけないじゃん。期待してたの?私、あんたみたいに暇じゃないから。」

「えっ?」

「じゃあね。また今度ね。」

彼氏のジョンに抱きつきながら歩いては、後ろに振り向いて私の方を見て嘲笑った。

私は彼女とは違う世界の人間だから、関わってはいけないのだろう。

帰り道一人で下を向きながら歩いた。周りは友達と楽しそうに帰ったりしていた。しばらく歩く数人が口論している。様子を見ると先程のホームレスの少女が男女数名のグループに酷く暴行を受けていた。彼らは彼女をひたすら殴ったり蹴ったりした。

「お前、俺達の財布盗んだだろ。ガキの癖にいきがるんじゃねーよ。」

「俺達が誰だか分かってやってんのか?」

「誰か助けて。」

「うるせーよ。黙れ。」

私の方を見て彼女はかすかな声で行った。

「私のことおいて逃げるのね。」

私は彼らのことが怖くなり、ホームレスの少女をおいてそのまま帰ってしまった。私が助けに行った所で同じように殴られるだけ。彼女の痛みが軽減するわけでもない。いじめられっ子の私は弱いから何も出来ない。でもさっきの場面が頭から離れない。

家につくと、メイドがすぐに出迎えた。

「おかえりなさいませ。お嬢様。」

「ただいま。」

私はすぐに自分の部屋に向かった。電気をつけるほど私には余裕が無かった。手鏡で自分の顔を見た。見ているうちに自己嫌悪に陥って、鏡を投げ捨ててしまった。そして足元に落ちた鏡に自分が映り、思わず足で何度も踏みつけた。ベッドに倒れ込み泣いてしまった。

「私だって、高校で一人くらい友達が欲しい。だけど、皆意地悪なの。先が見えないよ。」

私はひたすら学校の出来事やホームレスの少女を助けられなかった罪悪感に襲われた。私は窓から思いきり鏡を投げた。どこか遠くに鏡は行ってしまった。その後もベッドに入ってひたすら泣いていた。しばらくするとハーパーがドア越しで私を呼ぶ。

「お嬢様、夕ご飯の準備が出来ました。」

「今日はいらない。何だか食べたい気分じゃないの。」

「そんな不健康なこと駄目です。少しだけでも食べてください。」

ハーパーに何度、いらないと言っても、彼女は私に夕ご飯を食べて欲しかったので、渋々食卓に向かった。

「何で私にそんなにかまうの?食べないならほっておけば良いのに。」

「お嬢様の健康が何よりです。私はメイドとしての仕事をしただけです。」

「そんなにしつこいメイドいないと思うけど。」

ハーパーはかなり真面目なメイドだ。中々彼女みたいなのはいないだろう。

「ハーパー食べないの?」

「今、私が食べる時じゃありませんわ。」

特に彼女と話すことは無いので黙々と食べた。

部屋に戻り、イヤホンをして、ひたすらレディオヘッドの曲を聞いた。所々口ずさむ。暗闇なのに、視界までも霧がかるような感覚だった。このまま部屋を出たくない。テレビをつけたが、つまらないのでつけたまま聞き流した。

「9月24日、ミネアポリスで10人が何者かによって刃物で刺され、そのうち5人が亡くなりました。犯人はそのまま逃亡して、行方が分からない状況です。」

「本日、休戦協定が結ばれました。」

「次のニュースです。来週は韓国の大統領選が行われます。」

どのニュースも私の住んでない所のニュースばかりだった。特に内容は頭に入らなかった。そのままテレビを消した。

小さい頃から、私は絵が得意だった。特にデッサンが好きだ。鉛筆を取ると、自然と手が動いた。目も鼻も口も髪の毛も見たままを描いた。気がついたらホームレスの少女を描いていた。部屋が暗くても彼女の顔がハッキリと浮かぶ。彼女はいったい何者なんだろうか?窓を開けて、双眼鏡で彼女のことを見つけようとしたが、無理だった。もう一回絵を見つめ直して、彼女がどういうキャラか設定した。今は路上生活を余儀無くされてたけど、本当は優しくて、思いやりがあって、いざという時にそばにいてくれる女の子と設定した。分からないよりかはどんな人か想像した方が良い。絵を見て気がついたら寝ていた。知らない間に絵になった彼女の唇にキスをしていた。

一週間の間、ホームレスの女の子を見ることは無かった。彼女のことを大して知ってもいないのに、何かとんでもない事件に巻き込まれているんじゃないかと心配になっていた。学校に着くと、フランクとルーシー、ミラが私のカバンを見て、馬鹿にしてきた。

「何そのカバン?スヌーピーのじゃん。全然似合ってないんですけど。安物のカバンすら似合わないなんて本当に終わってる負け犬ちゃんね。一回家に帰ったら?」

「私なんてグッチのカバン」

彼らに何も返すことが出来ず、そのまま教室に向かおうとしたが、フランクに足を引っかけられてしまった。

「私達を無視するなんて、あんた立場分かっててやってるわけ?現実見なよ。」

私の荷物の中身を全部ばら撒いた。

「私のカバン!」

とっさにカバンに落ちた教科書や文房具、スマートフォンを拾おうとしたが、手のひらを足で踏まれて、彼らはそのまま行ってしまった。

その後、シンディーがやって来て私のカバンの中の物を拾うのを手伝った。

「そのカバン最近買ったの?」

「うん。」

「そうなんだ。」

カバンを肩にかけると焦げ臭い臭いがした。カバンが燃え上がってしまった。

「何で?」

「熱い!いやっ!」

自分のカバンを投げ捨ててしまった。皆、私に水をかけた。幸い大きな火傷にはならずにすんだ。

「ゾーイ、そんな危ない物を入れてたら危険よ。大丈夫なの?」

シンディーがカバンを指して言った。焦げたカバンから、黒焦げになったマッチが出てきた。シンディーは拾うのを手伝うふりをして、火のついたマッチをわざとカバンの中に入れたのだ。ルーシー、ミラとその取り巻き達が様子を見て、先生達の来ないような所に私を連れた。

「火傷はちゃんと治さないとね。」

バケツの水を彼女たちは私にかける。わざと私にモップを押し付ける。私がむせて苦しんでいても、モップをひたすら押し付けた。

「まだまだ甘いようね。これじゃ治らないみたいね。」

どんどん彼女たちの力は強くなる。

「もうこれで手当て終わりね。」

モップとバケツを放置して彼女達はいなくなった。ビショビショのまま教室に入ったら、クラスメートが軽蔑した目で私のことを見た。私は何も喋れなくなった。怖くなって女子トイレまで逃げ出して、焦げたカバンとビショビショの洋服を窓から投げ捨てた。

「何してんの?このままだと風邪引くわよ。」

「私のことはもう良いの。」

私のクラスじゃない女の子がTシャツと短パンをくれた。

「それ返さなくていいから。じゃあね。」

彼女はそのままどこか行ってしまった。おそらく私がどんな状況になっているか分からないだろう。

家に帰ると、何となくいつもと違う雰囲気がした。

「おかえりなさいませ、お嬢様。」

「ハーパー、誰かいるの?」

「お嬢様のお友達ですよ。」

おそるおそる進むとこの前見たホームレスの女の子が居間にいた。数秒間の間、何が起きてるのか分からず、何も喋れなかった。

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