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アメリカンガールズと妄想殺人  作者: ピタピタ子
17/17

同化

崖の下を見るとゾーイが倒れていた。私はゾーイがいる所まで走って行った。彼女の身体を触ると冷たかった。落ちた衝撃で帰らぬ人になった。私はここにゾーイを呼んだことに後悔した。私はゾーイの唇にキスをした。唇までも冷たかった。彼女のノートを手に取り火をつけて燃やした。彼女も一緒に燃えていく。私は着ていた服を脱いで、それを燃やした。そして新しい服に着替える。最後にゾーイの死体を埋めた。ゾーイの車に乗る。車内にゾーイの匂いがまだ残っていた。これからは私がゾーイの匂いを放つ。

家に着くと母親が待っていた。

「ゾーイ連絡をよこさないでどこに行ってたのよ?」

「ごめん、ちょっと車借りて旅行してたの。特に危ない奴らとは絡んでいないから安心して。」

母親が私に抱きつく。これからは私がゾーイとして生きる。

「とにかく無事で良かった。」

父親も私の頭を撫でる。こんな家族を持つなんて初めてだ。前に一つの家族がいた。母親と娘を愛してない父親と愛されたい娘がいた。父親は実の娘が醜く思い愛せてなかった。家族は例え血縁関係もしくは法律上でつながろうとしても距離の近い他人でしかない。家族内でも他人だから思いやったり、逆に傷つけて追い込むことだってある。3人の一家は家族と言う名の集団ゲームをしている集団だ。そしてそのゲームは無惨な形で終わる。そして新たな家族という名の遊びが誕生した。私は彼らの実の娘でもないし、実際は法律上の娘でもない。ある娘になってしまった娘だ。もうサラとして生きるのはやめた。サラとしての5年間はあっと言う間に幕を閉じる。もう私はサラじゃない。今日が私の誕生日だ。ゾーイして産まれた誕生日だ。

「お父さん。」

「何?」

「私ね、突然絵が下手くそになったの。」

「まずは描いてみてよ。」

描いていくと、どんどん父親に直された。

「確かにゾーイらしく無いけど、これはこれで好きだよ。」

父は笑顔だった。父の手が暖かい。母親の眼差しも心地良い。

「お母さん、前より家にいるのが多くなったよね。どうしたの?」

「別に暇じゃないのよ。ゾーイとこうして過ごせるのが楽しいの。ゾーイが高校生になってから仕事ばかりで、ゾーイのこと見れてなかった。だから少しでもいようと思ったの。」

「私はもう高校生だし、好きな仕事に打ち込んでよ。私はその気持ちだけで嬉しいの。仕事してる時のお母さんカッコイイよ。」

「ゾーイ。」

また母親が私に抱きつく。そして背中を優しく叩く。部屋に戻ると、鞄に人形がついてた。サラの人形だ。私はサラの人形を撫でる。私はサラの人形に向かって息を吐く。

イーサンと会う。彼は私を見ると、満面の笑みだ。彼はもう私のもの。

「待ちくたびれたよ。」

「そう?それより今度一緒にライブ行かない?チケット2枚分持ってるの。」

「良いよ。ゾーイもライブに行くんだな。」

「前の私は行ってなかったけど、今の私は行くわ。私、変わったの。」

「不思議なこともあるんだな。」

私は彼に絵を見せる。

「この絵も中々味があるけど、君らしくないね。」

「私、絵が下手になったの。ドン引きした?」

「そう言う意味じゃないんだ。」

「分かってるよ。」

私は前のゾーイのように上手に絵を描けない。

「今度は前のように描けるようにするよ。」

突然後ろから空き瓶が飛んでくる。それを片手でとる。

「ゾーイ、大丈夫か?」 

急いでイーサンが駆けつける。

「こんなの平気よ。」

「君、運動も出来るなんて知らなかった。てっきり、芸術的な子だと思ってたよ。」

「映画でよくある実は強い女の子だと思ったでしょ?」

「何でそれが分かったんだ?」

「私ね。人の心が分かるの。何考えてるかだいたい分かるのよね。あと前まで家で引きこもっていたけど、いじられないように強くなったの。」

彼はまた驚いて何も言えなくなっていた。

そう言えば、まだ始末していない人間がいた。シンディーだ。カバンを燃やされて、黙っていられない。向こうの記憶にはもう消えたのだろうけど。

「ゾーイの奴、私を呼び出して何のようなのかしら?」

シンディーは取り巻きの女子達と一緒だった。彼女達にドラッグの売人が声をかける。彼女達は必死で逃げるが、シンディーだけ捕まってしまった。他の女子達はシンディーを見捨ててどこかに行ってしまった。所詮いじめでつながるような仲だから助けることなんてないだろう。お互い都合の良い関係だ。

「誰か助けて!」

他の男女にも囲まれて、彼女はそのまま車に乗せられてしまった。その様子を遠くから見た。それから彼女は行方不明になってしまった。

「あなたも思い通りに動いてれたわね。」

家に帰ると、ハーパーがいた。

「おかえりなさいませ、お嬢様。サラお嬢様はどうされたのですか?」

「新しい家族の元に行ったよ。その家メイドもいるみたいなの。」

「そうですか。」

ハーパーは驚くことも無かった。いつも通り真面目な感じだった。

「あのさ唐突なこと聞くんだけどさ、聞いても良い?」

「はい。何でもお答えします。」

「過去に人を殺したことあるでしょ?何か5人くらい殺したことあるんじゃないの?」

「いえ、殺したことありません。」

「その割には一滴汗かいてるし。目が一瞬違う方向に向いたわ。本当は殺したんでしょ?」

私は彼女を凝視する。

「何て冗談だけど。」

「もしそうだとしたら、今頃こんな所にいませんよ。」

「分かったわ。今の話忘れて。」

部屋に戻り、サラと私の絵を書いていた。サラの上から私を書いた。

1週間後海辺に行った。サラだった時の携帯を海に放り投げた。二人の出会いは必然だった。だから私はここにいる。二人で撮った写真を見つめながら海水につかった。しばらく私はゾーイとして生きる。

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