転生だー!…って何これ⁉︎
「オギャアアアーオギャアアアー!」
(よっしゃこれ私じゃない⁉︎きっと成功したんだ。)
初転生記念最初の光景は白い天井だった。辺りを見渡すと随分と豪華な装飾品が多く有り、何処かの御曹司が生活する様な庶民の私にはとても勿体ない部屋だ。私が居る揺り籠ですら光に反射してキラキラ光る程の宝石が備わっている。
(…いや、何これ。)
ま、まぁ確かに。ある程度の地位や財産は求めたがここまでとは思わなかった。これから先、この家で生活するには精神が削れてしまうだろう。全く良くないがそんな事より推しだった。推しに会いたい。だが今は何もする事が出来ない赤ん坊だからなぁ。ひとまず推しが出てくる作品…いわば原作について思い出せる限りをまてめていこう。
(ってアァァァァー‼︎⁉︎推しに会える一心で忘れてたけど、推しが死ぬじゃん⁈)
このままでは不味い事になる。主に私が死ぬ‼︎対策を取らなければならない。とは言っても推しはモブの中のモブあまりにも情報が足りないのだ。推しが原作…乙女ゲーム『イケメン☆パラダイス〜真実の愛の結晶を作るのはだあれ?♡』に出てくる推しは基本プレイで2回程だ。序盤に推しが主人公に手を出すのだがその時、攻略対象の内の誰かに守られてあえなく推しはボコボコにされる。2回目は終盤のほぼ終わりのエンディング前辺りに主人公は攻略者と結婚するのだが、主人公は何者かに攫われてしまう。その時に出てくるモブが推しで、激昂した攻略者に殺されてしまうのだ。…主犯は別に居て推しはお金を貰って協力していた。主人公は主犯を庇い『止めて!殺さないで!」などと宣い主犯は殺されずに済むと言ったものだった。
…私はあれが心底嫌いだ。何故主犯は見逃し、数ある中に出てきた推しだけを殺すのか未だに納得がいかない。他にも攻略者の行手を阻むモブは沢山居たのに、何故推しだけを殺すのか。推しに何か恨みでもあるのだろうか?どちらにせよ私はどんな理由があろうとも納得しないだろう。あんな最期は認めない。…そうか、私が転生した理由は____
(推しを幸せにする為…だったのか。)
なるほど、それなら納得がいく。私が、私こそが唯一推しを幸せに出来るのだ。私は是非とも推しの考え得る幸せとやらを全力でサポートしたい。恋人を作って何不自由無い生活を送るのも良し、世界征服なんて考えるも良し。推しが幸せになるなら別に世界がどうなろうと知ったことでは無いのだから。
などと考えているとふと、扉の開く音がした。誰かが入って来たのだ。
「はーい、ルーちゃん。おはようね。」
そう言って少し膨よかなメイドが部屋のカーテンを開け始めた。眩しい朝日が差し込み自然と目を細める。どうやら私の名前はルーちゃんと言うらしい。私はお腹が空いていたので、生存本能からか泣き出した。メイドさんが私を抱き上げミルクをくれた。目線が高くなり、私は怖くなってあちこち見渡した。するとまたまた豪華な装飾のされた鏡があった。私が映っている。
「オ…オギャアアア⁉︎」
(えっ⁈この見た目は…!えぇぇぇ?ガチ?マ?)
それはいつも見慣れた黒髪に眼鏡ではなく、長いまつ毛に赤い髪。ゲームの攻略対象の一人にそっくりだった。