第３話 もうどうにでもなれ！
「ちょっと待ったああああああ！！」
いや、何がちょっと待っただよ！
ちょっと待って欲しいのはこっちなんですけどぉ！
もう終わったんだよ！
疲れたから自分の席に戻らせてくれよおおお！
そう思いながら声の主に目をやる。
手を上げながら立ち上がり、大声でちょっと待ったコールをしたのは、俺と１年から同じクラスでそれなりに仲の良い女生徒だった。
彼女は結城美鈴。
美鈴も人当たりが良く誰とでも仲良くなれるタイプだが、花崎みなもと違って男子とは必要以上に仲良くなろうとはしない。
しかし、俺とは何となく馬が合い友人として仲良くなっていた。
だから声の主が美鈴だとわかった瞬間、このおかしな状況を収めてくれるのだと、少しだけ期待に胸を膨らませた。
・・・・・
と、そんな時期が俺にもありました・・・
美鈴が俺達に近づいてきて、俺と３人を見渡すと口を開く。
「私にも告白してください！」
「「「「「はああああああああああ！？」」」」」
美鈴は俺の期待をよそに、更なる爆弾を投下しやがった！
クラス中のどよめきは止まらない。
俺は美鈴の爆弾投下により頭は爆発したため、思考停止中・・・
思考停止中・・・
思考停止中・・・
・・・・・・
・・・・
・・・はっ！？
俺はどうしたんだ！？
あまりの衝撃に完全に思考回路が止まってしまった。
・・・一旦、思い返してみよう。
美鈴「ちょっと待った！」
美鈴「私にも告白して下さい！」
・・・・・
ええ～！？
ちょ、マジで、マジで俺の方がちょっと待って！！
普通こういう場面の「ちょっと待った」コールは、告白する側・告白した男とは別の男がやるもんじゃないの！？
１人の女性に対して、複数の男が告白する場合に使うものだしょ！！
そうだしょ！？だしょだしょ！？
俺間違ってないよねえ！？
ねえ、ねえ！！
しかも告白してくださいってなんだよ！？
なんで、俺が告白することが前提なの！？
これは新手の嫌がらせか！？
俺があまりの混乱と動揺によって、オロオロとして何も口に出せずにいると・・・
「この３人はよくて、私には〈嘘〉告白してくれないんだ・・・？」
美鈴は落ち込んだ表情を浮かべながら顔を俯かせて、そう呟いた。
いやいや、お前はそういうキャラじゃなかっただろうがぁ！！
・・・・・
くそおおおお！！
もう、どうにでもなりやがれ！！
「くっ・・・み、美鈴も、す、好きです！つ、付き合って下さい！」
あ、あはははっ・・・
この状況、俺はどんだけクズ野郎なんだよ・・・
端から見た自分の今の状況を考えると・・・
自分自身のクズ野郎っぷりに乾いた笑いしか浮かばない・・・
もう、いっそ殺せよ・・・
殺してくれよ・・・
そして俺を楽にしてくれよ・・・
そんな状況の中、彼女の返事は更に俺を最低ゴミクズ野郎へと昇格させる事になる。
「はい、喜んで！」
そう言って美鈴は、顔を赤く染めながら可愛らしくモジモジする。
ぬおおおおおおおおおお！！
どこぞの居酒屋じゃねえんだよおおおおお！
はい、喜んで！じゃねええええ！
喜ばなくていいんだよ！！
違うんだよ！
今の俺が望んでいるのは違うんだよ！！
むしろ振ってくれよ！！
マジで！頼むからさ！
俺をピエロにしてくれよ！
笑い者にしてくれよ！
振られた俺を見て、皆で笑えよおおおお！
なぜだ！？
どうしてこうなった！？
俺は心の中で叫びながら３人・・・いや、４人を見回すと、４人とも顔を赤く染め照れたように顔に手をやったり嬉しそうにしたりしていた。
いやいや、４人とも本当にそれでいいのかよ！？
疲れ切った俺は、この場で話す余裕はないため、俺を含めて５人で放課後にでも話そうと言い残して席へと戻った。
俺の言葉に彼女達も「「「「うん！」」」」と最高の笑顔を俺に向けながら席へと戻っていった。
それと同時くらいに、予鈴のチャイムがなった。
・・・長かった。
いや、永かった・・・
本当に１０分間の出来事だったのだろうか？
もしかしたら、数時間は経ってるんじゃね？と思える程、無駄に濃い時間だった。
てか、何度も言うけど・・・
本当にどんな罰ゲームなんだよ！！
全然罰ゲームになってねえじゃん！
美女４人に嘘告したのに、全員からＯＫがもらえるとかさぁ！
何の美少女ゲームの主人公だよ！
普通に考えればウハウハじゃねえかよ！
でも俺は、ごめんなさいを望んでいたんだよ・・・
そう考えれば、究極の罰ゲームか！？
確かに俺の精神はガリガリ削られて、今はミリも残っていない。
俺と一緒にゲームをしていて、罰ゲームをしたわけではないのに精神的ダメージを負った他の３人と同じように、俺は席に着くなり机に頭がめり込むように倒れ伏せた。
その瞬間、教室のドアがガラガラと勢いよく開かれた。
随分乱暴にドアを開くなと思いながらも顔を上げる気力の無い俺は、どうせ次の授業の先生だろうと思い、そのまま突っ伏していた。
そして、ダンダンと大きな足音を立てながら入ってきた人が教壇に立つと・・・
「おい！これは私に対する仕打ちか！？そうか！？そうなのか！？」
と、訳のわからないことを言い始めた。
この声は、俺のクラス担任の真白伊織先生だな。
そうか、次の授業は真白ちゃんの授業だったか・・・
真白ちゃんは２４歳と若く、美人なのに男勝りな性格と口調のせいで、彼氏がいないと聞く。
そんな先生を、俺達は密かに真白ちゃんと可愛らしく呼んでいるのだ。
直接言えるわけはないけど。
「おい！誰だ！？真白ちゃんは彼氏いない歴＝年齢とかのたまった奴は！！」
ギクッ！！
皆、俺の心の声が聞こえるのか！？
とは思ったものの、俺はそこまで考えてないし・・・
どうやら彼女の被害妄想らしい。
そもそも、誰もそんな事を口に出せる命知らずはいませんけど？
「そんな奴の口は、私の口で直接塞いでやる！！」
ええ〜！？
鉄拳制裁じゃなくて、まさかのそういう展開！？
男勝りとはいえ、美人な真白ちゃんにそんな事言われたら、されたいと思う野郎が現れるに決まってるじゃないか。
「はい！僕が言いました！！ぜひ、塞いで下さい！」
ほら、やっぱり。
今言ったやつは、お調子者の鈴木だな。
机に突っ伏しながらも、何とか顔を上げて鈴木を見る。
すると鈴木は、目を瞑って口を前に突き出して準備万端であった。
・・・ちょ～キモい。
鈴木の姿に、誰もがそう思っただろう。
しかし、真白ちゃんは自分で言った手前、本当に口を塞ぐのか？
そう思いながら、行く末を見守る。
「・・・いや、お前はいい」
・・・あれぇ？？
さすがにそれはひどくない？〈笑〉
「そんな事を言わずに、彼氏いない歴＝年齢とかのたまうこの口を、さあどうぞ塞いで下さい！！」
・・・命知らずがここにいた。
いや、バカだ、バカがここにいる。
先程は誰も言ってなかったはずの、彼氏いない歴＝年齢と本当に言った事で、真白ちゃんの額に青筋が浮かび上がる。
これはさすがに、今度こそ真白ちゃんの鉄拳制裁が見舞われるな。
そう思って成り行きを見守っていると・・・
「・・・ごめんなさい」
と、真白ちゃんが頭を下げながら本気で謝った。
・・・・・な、なんだとおおおおお！！！
鈴木の野郎めえええええ！！
ごめんなさいと言われるのは、俺の役目だろうが！
訳のわからない心理状態に陥っている俺の心は、嫉妬心で埋め尽くされる。
そんな中、頭を上げた真白ちゃんが呟く。
「つーか、鈴木なんてどうでもいい」
ええ！？
それは酷くない？〈２度目〉
ほら、鈴木の落ち込みようが半端ない。
嫉妬したとはいえ、流石に同情してしまふ。
まあ、それはいいとして、先程の件で疲れ切ってしまっている俺は、茶番劇はもうどうでもいいと再び机に伏した。
のだが・・・
「そんな事よりも、星空！星空朔夜！」
ええ～！？
なんで俺の名前が呼ばれてるの～！？
疲れ切った俺には、もう顔を上げる気力はない。
そんな俺に近づいて来る足音が聞こえる。
そして、その足音が俺の側で止まると。
「先程、お前の告白大会が行われていたようだな」
え！？
なにそれ・・・
そんなものは行われていませんよ？
ただの罰ゲームだったんですけど・・・
・・・本当に罰ゲームだったのか？
顔を上げずに、真白ちゃんの言葉を聞きながら自問自答する。
俺がピクリともせず、言葉を発する事もせずにいる中、真白ちゃんは気にもせずに言葉を続ける。
「星空朔夜・・・いや、朔夜！私にも告白しろおおおおお！！」
「ごめんなさい」
疲れ切っている俺の口からは、即答でごめんなさいが出た。
むしろ、念願の“ごめんなさい”で終えることが出来たと、俺は安心して意識を闇の中に沈めていったのである。
「なんでだあああああああ！！」
真白ちゃんの魂の叫びが教室に響き渡ったのであった。
ええ〜！？
ちょっと待って！
作者本人までもが、ちょっと待って！状態です！
まさか思い付きで書いて載せた作品が、たった２話でここまで反響あるとは思いもよらず・・・汗
せいぜい、数人くらいに受け入れられる程度で考えていたのですが・・・
嬉しい反面、若干ビビリ中です・・・
どうしよう、どうしたらいいんだあああ！と主人公と似たような心境ですww
家のPCで執筆しており、仕事が不規則で帰る時間が遅い事が多いため、執筆と考える時間があまりとれません。
なので次話以降は投稿に時間がかかると思います。
でも、楽しみにしてくれている方のために何とか頑張ります！
気長に待っていただけると嬉しいです！
