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92/210

92.前世でナニをやったの?

 バカホン達をエロノベル島に置き去りにしてから二週間が過ぎた。

 この日の昼に、いきなりだけどユキが来た。


「来たよー」

「またラフレシアが誰か召喚したの?」

「特に、召喚については、セクロピアからは何も聞いていないよー」


 セクロピアは、ユキをこの世界に召喚した大天使ね。

 お約束のネタだけど、私はセクロピアって名前を長期記憶できないんだよね。

 次の日になると、どうしても、

『セクロ……なんとか』

 になっちゃうんだよ。


「じゃあ、もしかして普通に買い物?」

「それもあるけど、ちょっと相談事があって」

「相談?」

「実は、そろそろお金を稼がなきゃって思って」

「えっ? 今まで働いていなかったの?」

「うん。働く必要が無かったから。転移した時に、セクロピアから金貨三千枚を支給してもらっていたのよ。それが転移する条件の一つだったから」


 と言うことは、コイツはお金で動いたってことか。

 地球時代のことを考えれば、たしかに、それも十分有り得る気がする。


「働くって言っても、地球にいた頃にバイトとかは?」

「したことないのよー。全部、貢いでもらっていたから」


 たしかに、コイツは、全部それで済ましていたんだっけ。

 そのお陰で自己破産した男性も数知れずって聞いていたし。


「それで、金貨三千枚は、全部使っちゃったの?」

「まだ半分くらい残ってるよー。でも、まだ何十年も生きるんだし、稼がないとヤバいかなーって思って」


 その考えは正しいと思うよ。

 全財産が無くなってから、やっと就職活動するようじゃ、ハッキリ言って遅い。

 でも、コイツに労働って可能なんだろうか?


 それともう一つ。

 今、『永遠に生きる』って言わなかったところから察するに、コイツは、召喚された際に不死設定を貰ったわけでは無かったんだね。



「それで、どんな仕事がしたいの?」

「私の能力を生かした仕事が無いかなーって思って」

「能力?」

「私が転移して来た時にもらった魔法とか」

「そう言うことね。どんな魔法が使えるの?」

「転移魔法に火炎魔法、水系魔法も使えるし、風魔法も使えるよー」

「だったら、冒険者をやってみたら?」

「でも、戦うのはイヤだしー。だから、私の代わりにアキが来たんじゃん」


 そうだった。

 コイツが戦いを拒否したから、私がここに転生することなったんだっけ。


「転移魔法が使えるんだったら、タクシーとか宅配便とかは? 冒険者ギルドに行けば転移魔法使い特化でも需要はあると思うし」

「なるほどねー」

「他に魔法の家庭教師とか」

「それはムリかなー。教えるの苦手だし。じゃあ、タクシー係があるかギルドに聞いてみるよー。あと、ラフレシアが新たに召還した人はいないけど、マリカ教の動きならちょっと情報があるよー」


 多分、これで情報料として何かもらって行くんだろうな。

 別にイイけど!


「マリカ教がランゲルハンス島に移転してマリカ聖教国を名乗るようになったところまでは知っているけど、また何か問題でも起こしたの?」

「大した話じゃないけど、マリカ教で聖歌を作ったらしいよー」

性嫁(せいか)?」



 取扱説明書:アキ-108号は、聞いた単語をムリヤリHな造語に変換することが多々あります。



「言っておくけど、『聖』の『歌』だよー。『性嫁』でもないし『性歌』でもないし、あと、エロい八百屋だからって『青果』でもないからねー」


 意外にも、ユキに先を読まれているよ。

 そこまで私の機能を理解しているとはね。

 なんか、ちょっと悔しく感じるんだけど!



「それで、誰が作曲したの?」

「参謀のマイらしいよー。地球にいた頃にクラシックが好きで、色々と突き詰めるのも好きだったみたいで、自発的に対位法の勉強もしていたらしいよー」

「体位……法?」

「身体の方の体位じゃなくて、『対』の『位』で対位法だよー」


 これも、完全にユキに読まれている。

 ユキって、ここまで頭が回る女だったっけ?

 それとも、ユキに先読みされるくらい、こっちが低レベルってことなのかな?



「ええと……対位法ね。もしかして、マイって少しオタク気質?」

「そうみたい。あと、今回の聖歌を作曲する際にも、トリトヌスには気を付けていたとか聞いてるよー」

「〇リト〇ス?」

「言うと思った。トリトヌスね。悪魔の音階って言われているヤツで、増四度もしくは減五度のことだって」

「そんなのあるんだ」

「別に使っちゃいけないってわけじゃないけど、今回は、敢えて、その音階を使わないようにしているって話だよー。バロック音楽よりも前は使わないようにしていたって話だけどねー」


 なんか、良く分からないけど……。

 それにしてもユキのヤツ、やけに音楽に詳しい気がするんだけど?


 あと、ふと思ったんだけど、ラフレシアが絡んでいるんだから、マリカ教って、位置付けとしては悪魔崇拝みたいなモノだよね?

 やっていること自体も聖職者からは大きく離れているし。

 どっちかって言うと生殖者だよね?


 だったら、悪魔の音階をムリに排除しなくてもイイ気がする。

 むしろ、積極的に入れた方が悪魔崇拝らしいんじゃないかってイメージを勝手に持ったんだけど?

 何も知らないから勝手なことを言っているだけなんだけどさ。

 でも、なんか色々聞くと話が面倒な方に行きそうだから、ここで強制終了しよう。



「聖歌以外では?」

「特にないかな?」

「じゃあ、比較的平和ってことだね」

「亭主が入信しちゃった家庭は最悪だけどねー」

「それは、前からそうだけど、新規で変な行動を起こしているってわけじゃないよね?」

「そうだねー。新規の入信者も減っているみたいだし」

「そうなんだ!」

「やっぱり、ランゲルハンス島だと行き難いからね。でも、転移魔法使いの入信者数は、今までと変わらないみたいだよー」


 たしかに、転移魔法使いなら、結界さえ張られていなければ、どこにでも簡単に行けるからなぁ。

 でも、これ以上、精力……じゃなかった勢力拡大されても困るからね。

 マリカ教の動きが停滞気味なのは良いことだ。



「そうそう。それから、アキが気になってそうなことを、一つセクロピアから聞いていたんだっけ」。

「えっ? ナニ?」

「カナコっていたじゃない? 地球時代に引き籠りだった娘」

「ああ、彼女のことならラヤからも聞いた。なんでも、ラヤがカナコのためにヒールスライムを育てたって言っていたよ」

「そうなんだけど、実は、ラヤは少し過去のオルドビス世界に行っていて、今の時間軸だとカナコは、既に役目を終えて地球に戻ったって」

「そうなんだ!」

「でも、なんか凄い衝撃を受けていて、落ち込んじゃっているらしいよ」

「オチ〇コ、ジャーって? もしかしてカナコは、どこかの男性の凄く衝撃的なお漏らし現場を目撃したの?」



 取扱説明書(再掲):アキ-108号は、聞いた単語と語呂が近いHな単語しか思い浮かばないことが多々あります。



 取扱説明書:最近、それが加速度的に、かなり強引になっています。



「オチ〇コじゃなくて落ち込み! 落胆しているの!」

「なんだ。ユキにしては珍しいと思ったよ。でも、なんで落ち込んでいるの?」

「細かいことはセクロピアからも教えてもらえていないんだけど、どうも前世の記憶が蘇ったのが原因らしいのよー」

「前世ねえ……。彼女の前世は何だったんだろう?」

「そこは、良く分からないけど。でも、その後、違う異世界で自分を見つめ直したいとか言い出して、また別の異世界に転移したらしいよー」

「そうなんだ。それで、何て世界?」

「たしか、クリテイシャスって言っていたかな?」

「クリ〇〇ス?」

「そうじゃなくて、ク・リ・テ・イ・シャ・ス!」

「なんだ、クリテイシャスか。ビックリしたよ」

「私の方こそビックリしたよー」

「ところで、クリテイシャスって、どういう意味?」

「さあ……」


 さすがに、コイツに知識を求めた私が悪かった。

 言い寄る男子にカンペを作らせて、それでテストを乗り切っていた女だからね。

 基本的にモノを知らないヤツだったんだっけ。



「じゃあ、私はこれで帰るねー」

「えっ? カップラーメンは?」

「ちょっとやめとく。それじゃ」


 珍しいことに、特に情報料を私に要求することなく、ユキは、そのまま転移して、その場から消えた。

 今回は、私に相談に来たのがメインだから、もしかするとユキは、相談料と情報提供料でチャラって考えていたのかも知れないけど……。


 そう言えば、カップラーメンとかで出たゴミ処理をどうしているのか聞き忘れたよ。

 まあ、また今度来た時でイイか。



 それにしても、あのユキが働くって言い出すなんてね。

 絶対に嵐……いや、歴史的台風とかが来る気がする!


 …

 …

 …


 なんて思っていたら、その日の夕方に、マジで天気が急に荒れだした。

 まるでゲリラ豪雨だ。


 一瞬、私はスカーレットのことを思い出した。

 スカーレットはモシコリ出身の女魔導士で、たしか、ウンカ公国のオンコ村に住むマッドサイエンティスト風の魔導士スカラの『従妹の義姉の隣人の友人の知人』だそうだ。

 それって、ほとんど他人な気がするけど!


 彼女は、以前、モシコリからビナタの町を経由して、ホハハ方面に向かいながら人為的にゲリラ豪雨を発生させていたことがあった。

 ラフレシアの陽動作戦のためにね。


 でも、多分、この豪雨とスカーレットは無関係だろう。

 彼女は、私が改心させたはずだから!



 豪雨は、三十分くらいで治まった。

 本当に偶然……と言うか、ユキが働くなんて言い出すから降ったんだと思う。

 マジで普通の(?)豪雨なだけで済んで良かったよ。

 歴史的台風とかが来た日には、この町自体が壊滅的被害に遭うからね。


 でも、念のためラフレシアとの関係性については確認しておきたい。

 警戒しておくに越したことは無いからね。



 なので、私はパラス経由でミチルさんに確認することにした。

 ミチルさんのところには、女神リニフローラからの情報が行くからね。


 ただ、敢えてパラスに依頼するのは理由があってね。

 何故って、私が直接ミチルさんに会いに行くとパラスとヴァナディスが勝手に嫉妬するからなんだ。

 つまり、パラス経由で聞くのが一番無難だって判断だ。


「パラス。ちょっとお願い」

「何でしょう?」

「さっきの激しい雨だけど」

「前にもありましたよね、人為的に豪雨を降らされていたのが」

「まあね。それで、念のため、今日帰ったらミチルさんに女神リニフローラから何か聞いていないかを確認してもらいたいのよ」

「そうですね。了解です」


 これで、明日には、今回の豪雨とラフレシアの関係の有無がハッキリするだろう。

 さすがに今回ばかりは、ラフレシアは関係ないって思っているんだけどね。

 原因は、ユキが働くって言い出したからだろうから!

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[一言] >「転移魔法に火炎魔法、水系魔法も使えるし、風魔法も使えるよー」  これなら銭湯をやるって手もありそう。  銭湯を建てて、お湯はタダ。  温風(ドライヤー)も有料サービスか?  分かりやす…
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