89.自称勇者!
ラヤから、一か月後に別の異世界に転移する旨の報告を受けた次の日のことだ。
私の店に男性三人組が来た。
「そこの美しいお方。こちらにアキと言う女性がいると聞いて来たのですが?」
「アキは私ですが」
「貴女がアキ殿か。聞いていた以上に美しい……。俺は大天使ミルコメディア様の命を受け、勇者となったバカホンと言う者だ!」
バカホンって、以前、マナミに聞いたことがあるような気が……。
たしか、麻雀で、なんとかの一つ覚えで『混一色手』ばかり狙うことを意味しているんじゃなかったっけ?
別にイイけど!
そうそう。麻雀って言えば、カナコは元気かなぁ。
カナコは、この世界では三体のゴーレムを操った女性で、ラフレシアの手先となって私とも戦った相手。
ただ、地球時代は集団で性的暴力を受けて引き籠りになっていた可哀そうな少女だ。
美人故に狙われたんだよね、あの娘。
あと、ミルコメディアって、たしかユキを召喚したセクロ……なんとかの上司だった気がする。
やっぱり、セクロ……なんとかは名前を覚えられないなぁ。
今更だけど!
それはそうと、今は、この勇者を相手にしてあげないと……。
って、Hな意味の相手じゃないからね!
「勇者様……ですか?」
「そうだ。それから、コイツが賢者のフールマン。そして、コイツが治癒術師のクアック。三人でパーティを組んでいる」
フールマン(fool man)って、賢者と言うよりは愚者な気がするんだけど?
それから、クアック(quack)って、たしかヤブ医者を意味していなかったっけ?
なんだか、頼れる気がしない仲間って気がするけど、気のせいかな?
「それで、その勇者御一行様が、私に何の用でしょうか?」
「実は、アキ殿に我がパーティに入っていただきたい。これも、この世界の平和を取り戻すためだ!」
一見、これって勇者からの勧誘だけど、本当なのかな?
コイツの言うことの何処までが正しいのか、ちょっと怪しい気がする。
ミルコメディアはセクロ……なんとかの上司だからね。
もし、これが本当だったら、今までの経緯から考えると、ユキから事前に、私のところに情報提供があってもおかしくない。
でも、ユキからは何も聞いていないし、そもそも、この二年間、ユキは私のところに来ていない。
それから、ミチルさんのところに女神リニフローラ側からの連絡が行くこともある。
なので、ユキが来なくてもミチルさんから情報提供されることもある。
でも、ミチルさんからも、そんな話は来ていない。
それで、取り敢えず私は、念のためコイツ等の性的背景を確認することにした。
コイツ等は、女性が安易に近付くべき人間じゃない可能性が高いって気がしたんだ。
取扱説明書:アキ-108号は、精神を集中すると、見ただけで相手のHの履歴を霊視できます。いつ頃に何人とやっているかを全て見抜きます。
取扱説明書:どんなプレイをしたかも分かります。
取扱説明書:アキ-108号は、集中すると見ただけで相手の性癖を把握できます。
取扱説明書:アキ-108号は、その気になれば他人の性的背景を全て把握することが可能です。
確認の結果は最悪と言えよう。
三人共、趣味は乱交で、強制性交等が数十回アリ。
しかも、この三人での共謀が殆どだ。
コイツ等みたいなのが、カナコのような不幸な女性を量産する。
絶対に許してはイケナイ連中だね。
ただ、今日、コイツ等が私のところに来た理由は、言うまでもない。
私にHの相手をして欲しいってことなんだろう。
それも強制的にね。
こっちには、そんな気はサラサラ無いけどさ。
いずれにしても、答えは決まった。
あとは、どう話を進めるかだ。
「それなら、勇者としての証を見せてください」
「よかろう」
バカホンが鞘から剣を抜いた。
そして、
「これが勇者の証。聖剣エクスカリバーだ!」
と言って来たんだけど、これって本物かなぁ?
私には鑑定魔法が使えないから何とも言えないけどさ。でも、自称聖剣なんて、この世の中に何本もあるんじゃない?
これだけじゃ、コイツの言葉を鵜呑みになんかできないよ。
ここで、コイツ等を冷たくあしらうことは可能だ。
それでコイツ等が、キレて私に手を出して来たとしても、私なら問題ない。転移魔法で簡単に逃げられるからね。
でも、それで矛先がヴァナディスに向いたら困る。
ヴァナディスはHP98の最高の美女。
当然、ヴァナディスもコイツ等のターゲットに入っているだろう。
何とかしないとね。
「ええと……何故、私なんかを勧誘しにいらしたんですか?」
「治癒術師としても優れているし、戦闘能力も高いと伺っている。勇者のパーティに参加して当然の逸材との判断だ」
いやいや。
それって、勇者のパーティじゃなくて乱交パーティの間違いだろ!
下手に口には出せないけどさ。
もっとも、コイツらは、私の口(特に下の口)に別の白い何かを股間から出したいとか思っているかも知れないけど。
「それで、何かの討伐にでも行くのですか?」
「もう、五年以上前になるが、ラージェスト王国のアルミナム山から七首のレッドドラゴンが去っただろう」
「そうですね。そんな話、聞いたことがあります」
「そのレッドドラゴンが、最近、ラージェスト王国とハーレ王国の国境付近で見つかったらしい。先ず、その討伐に向かおうと思っている」
これを聞いて、
『語るに落ちたね』
と思ったよ。
そのレッドドラゴンの正体はミチルさんだから、ラージェスト王国とハーレ王国の国境付近にいるわけがない。
この近所にパラスと二人で住んでいるよ!
それに、もし別のレッドドラゴンが、その地にいたとしても、何か人間達に問題行為を起こしているならともかく、そんな話は誰からも聞いていない。
本当に問題行為が起これば、ユキかミチルさんから話が飛んでくると思う。
やっぱり、コイツ等には、お仕置きが必要だ。
ただ、どうやるかなんだけど……。
「分かりました。パーティに参加致しましょう。では、支度がありますので、明日、この時間に来てください」
「分かった」
取り敢えず、今日のところは、これで自称勇者達には帰ってもらった。
そして、早速パラスと相談。
「ミチルさんの応援をお願いしたいんだけど、ちょっと付き合ってもらえる?」
「今のヤツラのこと?」
「そう。聞いていたでしょ? アルミナム山にいたレッドドラゴンが、ラージェスト王国とハーレ王国の国境付近にいるって」
「言ってましたね。でも、アルミナム山にいたレッドドラゴンってミチルさんのことだよね?」
「そうね」
「ふざけた嘘つきやがって!」
「だから、私がアイツ等のパーティに参加する振りをして、懲らしめてやりたいのよ」
「分かった。すぐミチルさんのところに行こう。今日は隣町のギルドにいるはずだから」
この時のパラスは、破壊神だった頃のラヤを連想させるくらい怖かったよ。
旦那を嘘のネタに使われたのが、相当気に入らなかったんだろう。
私は、パラスを連れて、大至急連続転移に入った。
数秒後には隣町ギルドの前に到着。
今回は五十回も転移していないからね。
パラスは別にゲロゲロには、なっていなかった。
そして、ギルドに入ると、すぐにミチルさんを発見。
「ミチルさん。ちょっと相談が……」
「アキちゃんに、パラスも? どうしたんだい?」
「実は……」
私とパラスは、さっきの自称勇者達のことをミチルさんに説明した。
彼等の性的背景から予想されることも併せてね。
これを聞いてミチルさんは、
「だったら、こんな方法でこらしめたらどう?」
と私に一案を提供。
これは、面白そうだ。
でも、これを効率的に行うには、援護してくれる人が必要になる。
なので、私は、
「じゃあ、マナミのところに行って来る!」
ギルドにパラスを置いたまま、スプマ町に向けて連続転移に入った。
パラスは、ミチルさんが浮遊魔法で家まで連れて帰るだろうから放置!
別にイイよね?
連続転移を数セット行って、スプマ町に到着。
ここからは、特殊ゲートをくぐってディスプロシ島に行く。
この方が楽だからね。
そして、ディスプロシ島に着くと、再び私は連続転移に入った。
行き先は例の温泉。
温泉の中には、毎度の如く、マナミがいた。
「マナミ!」
「アキ。どうかしたの?」
「実はね……」
ここでも、例の自称勇者達のことを説明した。
それと、ミチルさんから授かった案についてもね。
これを聞いてマナミは、
「了解。じゃあ、ニコラスを使って」
と私の申し出を快諾してくれた。
今回の策を速やかに実行するためには、優れた転移魔法使いのニコラスが必要なんだ。
私の連続転移でもイイんだけど、万が一、自称勇者一行を運んでいる途中でガス欠を起こすと、私がソイツ等の餌食になりかねないからね。
私とマナミは温泉を出ると、商工会館へと急いだ。
ディスプロシ島開発のために、少し前に商工会館が出来たんだ。
ニコラスやニオベは、今では、そこで働いている。
私は、早速、スタッフの居室でニコラスを捕まえた。
取り敢えず、私からではなくマナミから、
「ニコラスにお願いがあってね……」
今回の件について彼に説明してくれた。
ニコラスからは、
「分かりました」
すぐさま了承を得た。
私への恩を感じているみたいだから、彼は大抵のことには力を貸してくれる。
「それで、ちょっと、この件に関連して、これから行きたいところがあるんだけど」
「分かりました。アキさんの依頼なら喜んで。それで、どちらまで?」
「オキシラン共和国のインケイってところ。そこの海岸までお願いできる?」
「了解です」
そして、ニコラスは、その優れた転移魔法で、私を連れてインケイ町の海岸まで一気に移動した。
ただ、私が本当に行きたいところは、ここから二十五キロ離れたランゲルハンス島なんだよね。
でも、あんなところにニコラスを連れて行って、万が一のことがあったら、私はニオベに殺される。
なので、
「悪いけど、ここで待っててもらえる?」
「分かりました」
ニコラスには、この場で待機してもらうことにした。
一方の私だけど、
「出ろ!」
ソープマット(空気入り)を物質創製魔法で出すと、その上に乗って連続転移でランゲルハンス島へと向かった。
一回の転移が二キロだからね。
海に沈まないようにソープマットの上に乗ったんだよ。
十数回の転移でランゲルハンス島に到着!
ただ、ここはマリカ教の本拠地だからね。
今日の修行者(マリカとのH予定者)以外の信者(男性)達がアチコチに屯していたよ。
ただ、彼等はマリカを裏切ることは許されない。
私に襲い掛かりたいのを必死に我慢しているようだった。
その中に一人に、私は声をかけた。
「私はマリカの旧友で、アデレー王国ビナタ町から来たアキです。マリカに取り次いでもらいたいんですけど?」
「マリカ様の旧友と言う証拠は?」
一応、宗教国として独立したからね。
今まで以上に教祖の安全を第一に考えるだろう。
私に証拠を求めてくるのも当たり前だ。
でも、証拠なんて無いからね。
なにで、私は、
「HP最大! 女王様モード!」
久し振りに二百万ものHPを放出したよ。
しかも、女王様モード。
これを目の当たりにしたマリカ教信者は、
「コチラにお越しください」
私をマリカ教の建物の中に通してくれた。
やっぱり、最大パワーの女王様モードには、下僕達は逆らえないんだよね。




