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88.出来のイイ妹からの報連相?

 それから二年が過ぎた。


 この間に、マリカ教ではランゲルハンス島に信者(男性性奴隷)全員を収容できる施設を建設し、スプマ町だけではなく、ネトリ村からもエレクタ村からも信者達を、その施設に移住させた。

 そして、信者達の移住が完了すると同時に、私達の予想通り『マリカ聖教国』として国家独立を宣言した。


 今のところ、特にマリカ達が、聖戦とか言って戦争を仕掛けてくるような気配はない。

 しかし、怪しい国家であることには違いない。

 毎日、施設内では激しい性戦をクリ広げているし。

 なので、今のところは各国でマリカ聖教国を監視している状態にある。



 マリカ教第一支部が撤退したので、スプマ町ではディスプロシ島方面行きのターミナルゲートを復活させた。

 カッシーナ村にも、この二年間で随分と人が集まるようになっているみたいだし、ケイコとマナミの計画は、割と順調に事を運んでいるようだ。

 私は、自分の店の運営だけで手いっぱいだったけどね。

 それと、今後は、大陸側ゲートをスプマ町とカッシーナ村の両刀使いで行くらしい。



 そんな、ある日の夜のことだった。

 私の家には、二階の部屋に、この世界とお母さん達が暮らしているシルリア世界とを繋ぐ特殊な扉が設置されているわけだけど、その扉が半分開いてラヤが顔を出してきた。


「アキさん。ちょっとイイですか?」

「あら、ラヤ。どうかしたの?」

「ちょっと相談事があって。そっちに行ってもイイですか?」

「イイけど?」

「じゃあ、失礼します」


 ラヤは、私達の部屋に入ると、その特殊扉を閉めた。

 この時のラヤは、妙に神妙な顔をしていた。


 私から見たラヤのイメージは、どんな問題でも、その超チートな魔法で解決できてしまう超人に他ならない。

 なので、ラヤが、こんな表情を見せるなんて、余程のことなんだろうって、この時、私は思っていた。


「何かあったの?」

「実は、今朝、シルリア世界の女神様……ロリダ様が夢の中に現れまして、そろそろ準備をしろと言われました」

「準備?」

「私がシルリア世界に来た理由は、フユミさんの薬学知識でも治せない病気が幾つかあって、それを治すためでした。フユミさんがロリダ様にお願いしたんです」

「うん。それは、お母さんからも聞いた気がする」

「その病気のうち、特に問題視されていたのが、ある村で流行っていた風土病だったんです。住血吸虫感染症でした」

「住血吸虫?」

「寄生虫の一種です。それを撲滅することが、私に与えられた一番の課題でした。その撲滅を完了しましたので、私は、一か月後に次の世界に旅立つことになったんです」

「それって、お母さんには?」

「既に報告しました」


 ラヤは、基本的に女神達の使いっぱ状態で、これまで幾つかの世界を旅して来た。

 なので、いつかは旅立つだろうとは思っていた。


 もうラヤとの再会から二年が経つ。

 スパンを考えれば、たしかに、そろそろ頃合いなのかも知れない。


「でも、ラヤの治癒魔法が無くなっちゃったら、お母さん達が住む街の人達が困るんじゃない?」

「その点は大丈夫です。スライムを一匹教育しまして、高次治癒魔法(ハイヒール)が使えるレベルのヒールスライムに仕上げましたので」

「ヒールスライム?」

「はい。切断された手足もくっつけますよ」

「それは凄い!」

「なので、私がいなくなっても後釜がいるから大丈夫です。それと、ヒールスライムはフユミさんに管理していただきます。フユミさんの従魔にしてもらいますので」

「お母さんって、従魔法も使えたんだ!」

「はい」

「でも、前にも、この宇宙の星に出張で行ったことってあったわよね。これからも出張対応ってわけには行かないの?」

「同じことをフユミさん達にも言われました。でも、私は女神様達のプログラムに従って動くだけのコマですからね」

「使いっぱでしょ?」

「そうですね」


 この時のラヤは、妙に落ち着いていた。

 多分、最初から数年で移動することを覚悟していたんだろう。


 でも、ラヤがいなくなったら、お母さんは大打撃だろうな。

 食事を用意してくれる人がいなくなるからね。

 もしかすると、何かと理由をつけて私達のところに食べに来るかもしれないなぁ。

 少しは覚悟しておこう。


「私としては、本当はラヤには異世界転移じゃなくて、異世界出張で済ましてもらえた方が有難いんだけどね。お母さんのこともあるし」

「実は、あれからもカルボニフェラス世界とオルドビス世界にも出張していたんです」

「オールドm……」



 取扱説明書:アキ-108号は、女性ヘイトな聞き間違いをすることが多々あります。



「オルドビスです!」

「聞き間違えちゃった。ゴメンゴメン」


 そう言えば、たしか、オルドビス世界は、カナコが転移した世界だって、以前、ユキから聞いた気がする。

 しかも、麻雀で何でも決める世界じゃなかったっけ?


「本当は、オルドビス世界の出張は断ったんですけど、どうしてもって言われまして」

「でも、行ったんだ、オルドビス世界」

「仕方なくですね……。もう、あんな世界には、二度と行きたくはありませんけどね」

「あそこには、私と戦ったカナコって娘が転移しているって聞いていてね」

「はい。その件は女神様からも伺っております」

「それで、カナコは、どんな感じだった?」

「済みません。実は、カナコとは直接話をしていないんです。あの世界で私に課せられた役目は、ヒールスライムを育てて、それをカナコと引き合わせることだけでしたので、それ以外の干渉は避けたんです」

「そうだったんだ」

「なので、私はカナコの姿を陰から見ていますけど、彼女の前には姿を現していないんです。案の定、カナコは他の麻雀打ちから暴力を振るわれて、お金を巻き上げられていまして……」


 やっぱり、そんな世界だったんだ。

 そんな世界に、カナコは、どうして望んで行ったんだろう?

 私もラヤと同じで、絶対に行きたいとは思わないけどな。


「カナコとヒールスライムを引き合わせたのって、やっぱり、そこが暴力的な世界だからってこと?」

「そうです」

「でも、ヒールスライムが一緒だったら、ちょっとは安心かもね」

「そうですね。ただ、怪我だけならともかく、性暴力的なことに対して正直心配です。攻撃系の魔法を授けられていないみたいですから」

「マジで?」

「マジです。でなければ、袋叩きになんか遭っていません」

「たしかに」


 カナコは、地球にいた頃に集団で性暴力を受けていたんだよね。

 だから、麻雀が法と化した世界に行くなんて判断が何故できたのか、理解に苦しむ。

 負け分を身体で払えとか言われかねない世界ってイメージがあるから。


 それ以前に、そんな危ない世界に彼女を行かせること自体、女神達の感性を思い切り疑っているけどね。

 ラヤみたいに戦闘に関しての特殊能力を持っていればイイんだけど、それも持っていないとなると、本当に心配だな。

 やっぱり、アイツ等は女神じゃなくてダ女神だよ!



「詳細は知らなかったけど、そんな状態だったとはね」

「ただ、麻雀中に攻撃魔法を発動させたら反則負けになるらしいですから。それで、敢えて反則を取られそうな魔法を、女神様はカナコに与えなかったようです」

「そう言うことなんだ」


 でも、私は麻雀なんかよりもカナコの身の安全の方が大事だと思うけど……。

 今となっては、カナコの無事を祈るしかない気がする。



 ところで、あのラヤの広い家はどうするんだろう?

 正直、気になる。


「話は変わるけど、今、ラヤ達が住んでいる家は、ラヤが魔法で出したのよね? ラヤが別世界に転移したら、あの家は消えたりしないの?」

「残りますよ。なので、フユミさんに相続してもらいます」

「そうなんだ」


 ってことは、あの広い家にお母さんとフルフラールさんの二人で暮らすってことか。

 勿論、新たに誰かを雇うかも知れないけど。


 でも、お母さんがこっちに食事しに来るくらいなら、こっちからヴァナディスと一緒に押しかけようかな?

 食材なら私が出せるし、ヴァナディスは料理が上手だし。

 毎日ってわけには行かないだろうけどさ……。



「それとさぁ。これからも、ラヤは、このブルバレン世界かシルリア世界に遊びに来ることって出来るの?」

「それは、別の異世界に旅立った後ってことでしょうか?」

「勿論!」

「そうですね。何かの折に、来ることを許可してもらえるかもしれませんけど、頻繁にはムリです」

「やっぱ、そうなんだ」

「はい。もし、それが可能でしたら、前にいた世界にも遊びに行っておりますので」


 ちょっと寂しい気がするな。

 ラヤとの出会いは最悪だったけど、今は出来のイイ妹って感じだからね。

 怖い存在であることに、変わりは無いんだけどさ。


「次は何処に行くか聞いているの?」

「聞いていません。変な世界じゃないことを祈るばかりです」


 でも、ラヤだったら何処に行っても無敵だろうし、心配はしていないんだけどね。

 どっちかって言うと、ラヤがいなくなってからのお母さんの方が心配だよ。


「女神様からの依頼だから、どうにもならないんだろうけど、身体には気を付けてね」

「はい。アキさんも、それからヴァナディスさんも、色々お世話になり有難うございました」

「でも、まだ一か月あるんでしょ?」

「そうですけど、その時に挨拶も出来ないとマズいなと思いまして。それで、先に挨拶をしておかないとって思ったんです」

「そうなんだ。じゃあ、また遊びに来れるようなら立ち寄ってね」

「はい。そうします」

「それと、あと一か月、よろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 そう言いながら、ラヤは、深々と頭を下げると、異世界間を繋ぐ扉を通ってシルリア世界へと戻って行った。

 この扉も、ラヤが私とお母さんのために、女神様達にお願いしてムリムリ設置してくれたんだよね。

 本当にラヤには母子共にお世話になった。



 ラヤを見ていると、本当に人間って変わるものだなって思う。

 もっとも、あの頃のラヤが精神的に壊れていたんだろうけどね。


 元々、ラヤは、ラフレシアの手によって降臨した破壊者だった。多分、ラフレシアの使者としては最強で、かつ最凶最悪だったと思う。


 沼尾も強かったし、マリカも催眠術師のリサも元SM嬢の老婆セツもヤバかったけど、ラヤの場合は近付くだけで首を刎ねられちゃうからね。

 レッドドラゴンのミチルさんですら、単身ではラヤには敵わなかっただろう。


 そのラヤの降臨を事前察知した女神リニフローラが、対ラヤ用特殊兵器として、この世界に私を転生させたわけだけど……。

 首ちょんぱされても死なない私をね。


 あの頃のことも、今となってはイイ思い出なのかも知れない。

 なんか、敵同士だったのが味方になるのって、少年誌の展開みたいだな。

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