87.マリカ聖教国?
アキがカッシーナ村でアイカに日本酒を飲ませていた頃のことだ。
マイは、
「火炎球!」
恐るべき攻撃魔法を連発し、島に巣食う魔物達の一掃作業を開始していた。
勿論、魔物退治が一段落した後には、今度は下僕達からの性的な連発が待っているわけだが……。
ただ、魔物を退治し終えても、まだまだ作業は終わらない。
信者達の住居の建設や移住は勿論、島に移動した後でも、それなりの数の新規信者を確保し続ける方法も考えなければならないからだ。
むしろ、そこからが本番であろう。
勿論、魔物退治が一段落した後に、下僕達との本番が待っていることは、言うまでもないが……。
全体を通じて結構大変な作業になることが予想される。
しかし、既にマイの頭の中では、その全てを確実に実行すべく、本プロジェクトの計画及びスケジュールが完璧に描かれていた。
マリカ教のためではあるが、同時に、自分の快楽のためでもある。
せっかく手に入れた美貌。
そして、前世では味わえなかった、男性達との楽しい時間。
まさに、
『異世界最高!』
と叫びたいくらいである。
そんな環境を未来永劫維持するためだ。
最大の努力をするつもりで、マイは今、魔物共を次々と撃破していった。
…
…
…
それから三日が過ぎた。
早朝から私の店に、
「ヤッホー!」
マナミが来た。
「おはよう。朝早くから、どうかしたの?」
「アイカからアキとの共同提案ってことで出されてたヤツ。カッシーナ村で日本酒の販売をするって案が採用されたんで、ちょっと報告に」
「そうなんだ。それで、マナミは日本酒ってどれくらい知ってるの?」
「あまり飲んだこと無いけど、少しなら分かる。それにしても、アキがアイカに持たせた日本酒は、過去に私が飲んだ、どの日本酒よりも美味しかったよ」
「あれね。実は、お母さんが好きだったヤツで、いつも家に置いてあったし、私も試しに飲んだことがあったからね。でも、あれしか覚えていないんだ」
「そうなんだ。でも、あれならイケるかなって思って、一先ずあの日本酒をメインで販売してみようってことになったんだ。他の日本酒も一応出すけどね」
「まあ、お母さんの好きなお酒が役に立てるなら何よりかな」
「なので、カッシーナ村だけの販売にさせてもらいたいんだけど」
「了解。こっちじゃ売らないことにするよ。元々、売っていなかったし」
「ありがとう。助かる! あと、実はマリカのことなんだけど……」
今、マナミ達にとってはカッシーナの村おこしが最重要だけど、多分、ここからの話がメインな気がした。
少なくともスプマ町のゲートを封鎖する事態に発展したのはマリカのせいだからね。
「一応、昨日、ユキが来てね。マリカ教に女性幹部が入ったって聞いたけど?」
「そうらしいわね。ラフレシアの部下からの情報だと、私達と同じ町に住んでいた大卒社会人二年生の女性で、結構優秀な人みたい」
「そうなんだ。私達とは面識が無いだろうとも聞いたけど?」
「らしいね。あと、生前、容姿には恵まれていなかったけど、転生の際に美人に生まれ変わるってことになったって」
「一応、人間に転生って聞いているけど?」
「ええ。だから、今回は美少女フィギュアじゃないってことね」
「あと、以前のマリカレベルの攻撃魔法を使うって話だけど?」
「そうなのよねぇ。それで、今、転移魔法使いを含む男性信者……と言うか性下僕十一人を連れて、ランゲルハンス島に行っているみたい」
その島の名前って、どこかで聞いたことがあるけど……。
もしかして、それって膵臓にある細胞群の名前とかじゃなかったっけ?
別にイイけど。
「ええと、ランゲルハンス島って、膵臓は関係ないよね?」
「今回はね」
「どの辺の島?」
「オキシラン共和国とウンコ……じゃなかった、ウンカ公国の国境の、まさに南に位置しているのよ」
マナミのヤツ、絶対にワザと間違えやがったな!
この手の小学生男子レベルのギャグが好きだからなぁ。
「その島で、その女性は何をヤッているの?」
「ええと、マイって人なんだけど」
「マイちゃんね」
「先ず、性下僕相手に集団Hね」
「そんなH大好きな娘だったの?」
「前世では恋愛経験なしだったんだけど、H免疫ゼロの状態でマリカ教に入っちゃったから、反動で一気に超エロに大変身しちゃったみたいなのよ」
「そうなんだ」
まあ、性下僕って聞いた段階で、ある程度、集団Hのことは想定済みだったけどね。
さすが、マリカ教幹部と言ってあげよう!
「あとね、どうも、その島で魔物狩りしているみたいなのよ」
「魔物狩りぃ?」
「あそこは魔物が多くて人が住めないってことで無人島になっていたんだけど、今の彼女の魔法レベルなら、あの島の魔物を一掃できるんじゃないかって思う」
「じゃあ、あの島に行った理由って?」
「多分、信者達全員を、あの島に住まわせるつもりなんじゃないかな。それどころか、宗教国家として独立するかも知れないわね」
「独立国家か……。ところで、今、ランゲルハンス島って、どこの国の持ち物なの?」
「魔物の島ってことで、どこの国も領土として受け取り拒否している状態。なので、非常に珍しいことだと思うけど、どこの国にも所属していないわ」
だとすると、独立国家として宣言するには都合のイイところってことか。
それでも、ディスプロシ島側からすれば、それでスプマ町からマリカ教第一支部が出て行ってくれるなら、嬉しい限りだと思うけどね。
それが、たとえイカガワシイ独立国家だとしても。
でも、そんな計画を頭が弱いマリカが全て思いつけるとは到底思えない。
そのマイって娘が考えたんだろうな。
結構、ヤリ手かも知れない。Hな意味じゃなくて。
「それでさあ。そのランゲルハンス島だけど、大陸からどれくらい離れているの」
「オキシラン共和国のインケイ町から二十五キロくらい。インケイ町は、ウンカ公国との国境に接している海岸線の町ね」
「じゃあ、日本で言えば伊豆半島と大島くらいの距離ってこと?」
「正解」
それにしても、なんかイヤな名前の町だな、インケイって。
そう言えば、オキシラン共和国にあるマリカ教の本山が位置しているのがネトリ村だったっけ。
両方とも随分と悪意のある名前な気がする。
オキシラン共和国って、マジで大丈夫な国なんだろうか?
少し不安になってきたよ。
「それじゃ、その島は、この世界の科学力だと簡単には行けないけど、その気になれば何とか行ける距離ってことだよね?」
「そうね。それ以前に転移魔法持ちなら行き来可能だけど」
「まあね」
「でも、ディスプロシ島からは随分と離れているし、こっちとしては助かるかな」
「まあ、そうだね。ただ、マリカ達も早く島に移住してくれればイイけど」
「それは、二年くらいかかるんじゃないかなぁ」
「そんなに?」
「信者数も結構いるでしょ?」
「まあ、マリカのLvが一万を超えていたからね」
「マジで?」
「うん」
「多いとは思っていたけど、そこまで多かったとはね……。でも、何で知ってるの?」
「少し前にレベルが一万を超えたとか言って自慢しに来たから」
「やっぱり、取扱説明書を読んでいないな、アイツは」
ここで言うLvはLevelじゃなくてLoverの略なんだよね。
つまり、ここでは愛好者数を意味している。
実質的には使用者数だけど。
なので、マリカは一万人切りを達成。
このことから、信者数も一万人に達していると考えてイイと思う。
「でも、マリカ教国家の移住完了が推定二年後か。結構長いね。それまではカッシーナ村でマナミ達には頑張ってもらわないとイケないね」
「まあね」
「多分、マリカのことだから、国として独立したら『マリカ聖教国』とか名乗るんだろうな」
「ヤッていることを考えると、『聖教国』じゃなくて『性交国』だろうって思うけどね? そう言えばアキ。覚えてる?」
「何を?」
「中学の頃、マリカのヤツ、『リッチなフレンチデートとかしてみたい』って言っていたじゃない?」
「Hなハレンチデー? それって今のマリカそのモノじゃん。まさに夢が叶って良かったんじゃない?」
取扱説明書:アキ-108号は、聞いた単語と語呂が近いHな単語しか思い浮かばないことが多々あります。
取扱説明書:マナミ-365号は、以下同分。しかも、かなり強引です。
「Hじゃなくてリッチね。それからハレンチデーじゃなくてフレンチデート!」
「なんだ、そっか」
「また、Hな単語と間違える機能が発動しているみたいね」
「そうなんだよね。この機能、要らないと思うんだけど。この機能のお陰で、ユキを召喚した大天使の名前が全然覚えられないし」
「あれね。私も覚えられないわ。セクロ……なんとかになっちゃう」
「だよね~」
「あと、この機能のせいだと思うんだけどさ。ディスプロシ島の温泉に、『ご入浴はこちら』って紙が貼ってあるじゃない?」
「うん」
「それが、『二人浴はこちら』に見えちゃって」
「まあ、私のところは私とヴァナディスで、いつも二人浴だけどね」
「ホント、『仲イイ』わね」
「当然、こういう仕様だから、私の『中はイイ』に決まってるじゃない!」
「えっ?」
「えっ?」
完全に、アホなトークになってしまった。
どう考えても、これって『H単語勘違い機能』が発動しているよね?
「もう……変なこと言っちゃったじゃん!」
「えっ? 変なとこイッちゃったの?」
「えっ?」
「えっ?」
マナミのヤツも『H単語勘違い機能』が発動しているね。
二人共、完全に朝からエロ脳全開になっているよ。
「そう言えばさ。日本にいた頃の会話とか、ニュース報道のことを思い出して、その時に、『H単語勘違い機能』が発動することがあるんだけど。アキもそう言うこと無い?」
「まあ、あるかな」
「だよね~。ニュース報道で『人々は混乱に乗じて……』なんて言葉があったけど、これが『人々は淫乱な情事で……』って誤変換を思いついちゃったりしてさ」
「何となく分かる。よく、『ミスターX』なんて言葉があったけどさ。それが、勝手に頭の中で『ミスったセッ〇ス』に誤変換されたりしてね。でもベタなネーミングだよね、ミスターXって」
「えっ? 下手なペッティング?」
「えっ?」
ベタなネーミングが下手なペッティングに変換されているよ。
マナミって、もしかしたら私よりも症状がヒドイかも知れない。
「ミスったセッ〇スなら間違って中に出しちゃったってことだよね? それと下手なペッティングって、全然関係ないと思うけど?」
「下手じゃなくてベタね。あと、ペッティングじゃなくてネーミングだから」
「そっかぁ。ゴメンね、聞き間違えちゃって」
「もう、マナミったら……。それで、話をちょっと戻すけど、もしマリカが聖戦とか言って戦争を仕掛けてきたらどうする?」
「性戦なら、マリカは毎日やっているじゃない?」
「性別の『性』じゃなくて『聖』の方ね」
「聖戦ね。ただ、私もケイコもマリカもラフレシア側だから、一応、互いの足を引っ張れない状態にあるのよね。なので、マリカは私達の計画の邪魔は出来ないから、ディスプロシ島に侵攻してくることは無いはずだけど、逆に私達もマリカ相手に戦えないのよ。マリカが初めて転移して来た時と同じでさぁ」
たしか、マリカがラージェスト王国のカバミネアに転移して来たのは、もう三年近く前になるかな?
あの時は、ラージェスト王国を乗っ取ろうとしてマリカが戦争を仕掛けたわけだけど、マリカと戦ったのは私とミチルさんだった。
マナミもケイコも、立場上、参戦出来なかったんだよね。
多分、基本的には、前回と同じってことだ。
「やっぱり、万が一だけど、マリカ教が戦争を仕掛けてきたら、また私とミチルさんが対応することになるのかな?」
「要請が来れば、そうなるだろうね。ただ、アキとの戦いを避けるようにラフレシアには言われているはずだから、アデレー王国にだけは侵攻しないはずって思うけどね」
「でも、ラージェスト王国に戦争を仕掛けられると、結局、私やミチルさんのところに話が来ちゃうしね」
「その時は、因縁の対決ってことで」
「別に私は、淫乱の対決なんてしないけど? マリカじゃあるまいし」
「淫乱じゃなくて因縁ね。また、『H単語勘違い機能』が発動してる!」
「ゴメン。でも、この機能って要らないよね?」
「話のネタとしては面白いんだけどね」
丁度この時だった。
私の背後から、
「そろそろ仕事に戻ってもらえる?」
とヴァナディスの怖い声が聞こえてきた。
「ゴメン、すぐ戻る。じゃあ、マナミ。話は戻すけど、お酒の件はOKだから。あと、マリカの方は何か動きがあったら追加情報をお願い」
「了解」
マナミは、苦笑いしながらヴァナディスに会釈すると、イソイソと連続転移に入った。
多分、行き先はカッシーナ村だろう。




