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86.日本酒?

 ユキが来た翌日、私、アキは店をヴァナディスとパラスに任せて、カッシーナ村にあるマナミの店を訪れた。

 カッシーナ村の開発状況も知りたかったしね。


 基本的に、ケイコとマナミのプロジェクトをラフレシアが邪魔することはないと思う。

 ラフレシアは、二人を配下に持つ以上、むしろ、このプロジェクトを後押しせざるを得ない立場のはずだからね。


 それに、特段、二人がブルバレン世界に害を成しているわけじゃないから、女神側も足を引っ張る理由は無いだろう。

 なので、マナミ達が大ポカをしない限り、カッシーナ村が大打撃を食らうことは無いんじゃないかって勝手に推察している。


「こんにちは」

「これはアキさん。お久し振りです!」


 店の中にアイカの元気な声が響き渡った。

 彼女はHP……ハレンチパワーね……が67の美女。


 この店は、魔法で品物を出す係はマナミだけど、運営自体はアイカ、ナヴィア(HP87)、レナ(HP64)の三人に任されている。


 ただ、アイカは他の二人と比べると、どうしても少し太めに見えてしまう。

 これは、アイカが太いんじゃなくてナヴィアとレナが細過ぎるからなんだけどね。

 普通にしていたらアイカだって、十分細い方だと思うよ。


「店の調子はどう?」

「まあまあ順調ってとこです。シリバス方面からディスプロシ島方面に行く観光客が、それなりに来ていますので」

「あと、村人達には食糧を無償配布しているって聞いたけど?」

「そうです。でも、期間限定ですよ。ある程度、カッシーナ村が潤ってきたら、ちゃんと払うようにしてもらいますから」

「そりゃそうだ」


 今のところ企画倒れで終わっていないみたいで何よりだ。

 でも、シリバス町にターミナルゲートを置いた方が、もっと集客しやすかったんじゃないかって気がするんだけど?

 むしろ、そっちの方が良かったんじゃないかなぁ……。

 なんでターミナルゲートをカッシーナ村に置いたんだろ?



 その後、私は、アイカに連れられてカッシーナ村を見学した。

 やっぱり、スプマ町やビナタ町に比べると建物の数が圧倒的に少ない。

 マジで過疎地帯だ。

 言うなれば、私の店の裏に広がる荒れ地と同様、何も無い広い土地だけが延々と続いているって感じ?

 しかも、草木がほとんど生えていなくて……、それこそ雑草が生い茂っているわけでもなく、自然に恵まれた環境とは程遠い印象しか受けなかった。

 本当に、人どころか生物が住んでいるのか疑いたくなるレベルだよ。



 ちなみに私の店は、ビナタ町の外れにある。

 そこから先に建っているのは、随分離れたところにミチルさんとパラスの愛の巣が一軒あるのみだ。

 それで、単に手つかずで荒れ地になっているなんだけど……。


 ただ、この村の場合は、ビナタ町の外れに広がる荒れ地とは、ちょっと勝手が違うように思う。

 居住区域から出たら荒れ地なんじゃなくて、荒れ地の中に家が点在するって感じだ。


「本当に広大な土地ね」

「アキさんは、表現を選ぶのが上手ですね。私は、いきなり『何も無いところだね』って言って、村人達から一瞬、白い目で見られましたけど」


 たしかに、そう言いたくなるのも、分からなくはないよ。

 アイカ達の故郷、ディスプロシ島だって、少し前までは何も無いところだったけど、彼女達の努力で大きく変わってきているからね。

 その過程を見て来ているからこそ、余計に何も無いって言いたくなってしまうのかも知れない。


「その後、村人達との関係は大丈夫?」

「一応。でも、あの時だけは、ちょっと失敗したなと思いましたですよ」


 でも、アイカは私の店で、私以上に町の人達と上手にやっていたからね。

 基本的に社交性に大きな問題を抱えている娘ではない……と思う。



 一応、ポツンポツンと家は建っていたけど、住居以外の土地全てが畑と化しているわけではなかった。

 結構、放置プレイされている土地が多かったんだ。


「以前のディスプロシ島と同じで、カッシーナ村も、これまでは基本的に自給自足の生活をしているところなんですよね」

「まあ、そうなんだろうね」

「完全農作業魔法なんてのがあると助かるんですけど」

「たしかに、農作物の成長を促すだけの魔法ならあると思うけど、畑を耕すところから収穫までの全工程を魔法でってなると難しいかな?」

「そうなんです。しかも、ここは肥沃な土地とは言い難くて」

「だから雑草すらロクに生えていないってこと?」

「はい。なので、作物が育ちにくく、村人達は農業を縮小して、海に潜って魚を捕って自給自足の生活していたんです。別に大それた欲を出さなければ、その生活で十分だって村人達も今までは思っていたようです。でも、ディスプロシ島の開発の話を聞いて、少しずつ考え方が変わって来たみたいなんです」


 たしかに、なんとなくだけど、この村の雰囲気って、以前のディスプロシ島に通じるところがある。

 別にディスプロシ島は、全体が荒れ地ってわけじゃなくて、木々が生い茂っている部分も結構あるけど、農耕のために広い土地を確保するのは難しい。

 それで、漁業で自給自足の生活をしていたんだよね。


 ところが島民達の多くが、急に魔法に目覚めて方針が変わって、そこにケイコとマナミが登場して、随分ディスプロシ島も変わったと思う。

 カッシーナ村の人々も、もしかしたら、

『ディスプロシ島に続け!』

 とか思っているのかも知れないね。



「ねえ、一つ聞いてイイ?」

「何でしょう?」

「大陸側のターミナルゲートに、どうしてこの村を選んだのかなって。最初は、スプマ町の東側に移すから、地理的にこの村になったのかなって思っていたけど、もうちょっと東に行けばシリバス町がある訳じゃない?」

「まあ、たしかに私も、シリバス町にターミナルゲートを置いた方が集客しやすいと思いますよ」

「でしょ?」

「ケイコさんもマナミさんも、シリバス町への設置を押していましたし」


 そうだったんだ!

 あの二人のことだから、何か策があってカッシーナ村への設置を考えたのかなって思っていたけど、そうじゃなかったってことか。


「じゃあ、なんでこの村に?」

「昔のディスプロシ島に、雰囲気が似ているって感じたからです。言い出しっぺはニオベですけどね。ニオベとニコラスで、スプマ町の東側の町や村を調査して、その結果を基に、マナミさん達はシリバス町への設置を考えたんですけど、ニオベがカッシーナ村を押し初めまして……」


 なんとなくニオベらしいって思ったよ。

 でも、そんな理由でマナミ達が折れるとは、ちょっと考え難いんだけど?


「よく、あの二人を説得できたね?」

「最初に掲げた目的が、ディスプロシ島の復興でしたし、そこからディスプロシ島と大陸側と繋ぐゲートを設置した各島々の開発にまで発展して行ったわけですから、いっそのこと、大陸側ゲートの設置場所も出来上がった場所ではなく、共に開発して行く立場にした方が面白いんじゃないかって、ニコラス達まで言い出しまして」

「まあ、ニコラスの場合は、単なるニオベの擁護だと思うけど?」

「私もそう思います」


 アイカの目から見ても、そう映るか。

 やっぱりニコラスはニオベ命なんだね。


「でも、そんな甘い考えに、あの二人も乗ってくれたってことか」

「渋々ですけどね。でも、島民達がヤル気を無くしてしまったら、誰のためのディスプロシ島開発か、訳が分からなくなってしまいますから」

「それはそうだけど……。ただ、この村に大陸側ターミナルゲートを置くわけだし、一番重要な拠点でしょ? 結構大変なんじゃない?」

「思っていた以上に大変です。そもそも、この村まで移動すること自体、もの凄く不便ですから」

「私もそう思う」

「なので、実はシリバス町とカッシーナ村を繋ぐゲートも作ろうかって話になっています。馬車の定期便を作ってはどうかって考えもあったんですけど、ゲートの方が早いですし維持がしやすいので」


 たしかに馬車だと、馬の世話とかあるし、天気によっては移動が困難になるし、ゲートの方が確実だと思う。

 でも、それだと、利用者からすれば、カッシーナ村を経由すること自体が意味不明になるんじゃないかな?


「それって、一歩間違うとシリバス町から直接、島の方に行けないかって意見が出そうな気がするんだけど?」

「同じことをケイコさんからも言われました。なので、カッシーナ村に寄る意義を作らないとイケナイって」

「何かアイデアはあるの?」

「なかなか難しいですね。花火を打ち上げるって意見もあったんですけど、カッシーナ村で花火が見れたら、ディスプロシ島の花火を見る必要が無くなってしまいますし」


 そうなんだよね。

 各島々を巡る意義を失わせるわけには行かないから、カッシーナ村だけに特化した付加価値が必要ってことなんだよね。


「アキさんは、何かアイデアってありません?」

「そうだなぁ……」


 実は、一つだけ、確実に集客できる方法がある。

 私の店で、ミチルさん以外には売っていない『勃たせる薬』を、この村だけで販売することだ。

 そうすれば、その薬欲しさに男性客が来てくれると思う。


 でも、その提案は私の中で却下だ。

 マリカ教の魔の手を避けて大陸側ターミナルゲートを移設した訳だからね。

 やっぱり、そっち方面から離れなければイケないと思う。


「どうです?」

「結構難しいね。アイカは、何か考えているの?」

「この地方でしか手に入らないお酒とかがあったらどうかなって」

「でも、そんなモノあるの?」

「ですから、これから作ることってできないかなって」


 これから新しい種類のお酒を作り出すって、そう簡単な話じゃないよ。

 何かないだろうか?


 一応、この世界にも、ワインやビール、シャンパンとかはある。

 ジンやウオッカとかに代わるスピリッツも存在する。

 でも……。


「あっ!」

「どうかしましたか、アキさん」

「これって飲んでもらえないかな。出ろ!」


 私は、お母さんに出してあげたのと同じ日本酒を物質創製魔法で出した。

 それと、御猪口もね。

 ただ、エロ限定魔法なんで、出せた御猪口はエロい春画が描かれたヤツだった。


「なんですか、この絵柄?」

「そこは、勘弁して。それで、このお酒なんだけど」


 私は、そのお猪口に日本酒を注ぎ、アイカに試し飲みしてもらった。

 アイカからの感想はと言うと、

「飲みやすいですね、これ。美味しいです!」

 かなりポジティブな回答。

 これなら行けるかも知れない。



「これって温めても美味しいし、これなら余所で売っていないからイケるんじゃない?」

「イケると思います。でも、これって、どこのお酒なんですか?」

「ヴァナディスとかパラスから、私の前世のことって何か聞いてる?」

「はい。他の世界にいたって。たしか、ミチルさんもケイコさんもマナミさんも、そうでしたよね?」

「ええ。それで、そのお酒なんだけど、それは私達が前にいた世界のモノなの」

「そう言うことですか。でも、不思議な味ですね。ドンドン飲めてしまいます」


 そう言いながら、アイカは昼間から日本酒をガンガン飲んでいたよ。

 なんだか、アイカが日本酒に嵌まって行っている気がするんですけど?

 このまま飲んだくれにならないか、ちょっと不安になってきた。



 取り敢えず、日本酒の販売は、私とアイカの共同提案と言うことで、アイカからマナミ達に意見を上げてもらうことにした。


 それに、マナミだったら私が知らない日本酒を色々知っているかも知れないし、もしそうだったら、何種類か揃えることも出来るだろう。

 あとは、マナミ達がどう判断するかだね。


 …

 …

 …


 その翌日、私の店に働かない女、ユキが来た。

 つい二~三日前に来たばかりなのに、今回はヤケにスパンが短いな?


「来たよー」

「どうしたの、ユキ?」

「セクロピアからの報告があったのよ」


 セクロピアは、コイツをこの世界に召喚した大天使の名前。

 いつも『セクロ……』までしか思い出せないんだよね。



 取扱説明書:アキ-108号は、聞いた単語と語呂が近いHな単語しか思い浮かばないことが多々あります。



 多分、この機能に関係なく思い出せないんだと思うんだけど……。

 きっと私以外にも、『セクロ……』までしか思い出せない人っているよね?



「まさか、ラフレシア関係?」

「そう。ラフレシアが、また一人召還したみたいよー」

「女装趣味の中年男性とか、強力な催眠術を使うヤツとか、元SM嬢の老婆とかじゃないわよね?」

「今回は、アキが高校時代に住んでいた町の女性……」

「同じ町なの?」

「そうだよー。でも、多分、面識は無いだろうって」

「そうなんだ」

「それと、彼女は大卒社会人二年生だったらしいんだけど、事故死したんだって」

「じゃあ、転生?」

「そう。ただ、不老の身体を貰ったんで、不自然だけど、二十歳の姿で自然発生の如く転生だって」


 不自然だけど自然発生って……。

 自然なんだか不自然なんだか。

 別に、どっちでもイイけど!


「二十歳の姿って、人間?」

「そうだよー。アキとは違って生きた人間だって。二十歳の姿で転生したのは、赤ん坊からやり直しで不老だと、永遠に赤ん坊のままだからって」

「まあ、たしかに、そうなるか。それで、何か動き出したの?」

「マリカ教の幹部になったっぽい」

「えっ?」

「以前のマリカレベルの攻撃魔法も持っているっぽいよー」


 それって、もしかしてマリカ教が世界をひっくり返すくらい強力な戦力を手に入れたってこと?

 これってマズくない?

 マリカが、その娘を使って全世界に戦争をふっかけでもしたら大変なことになる!


「じゃあ、私にその娘と戦って欲しいってことね?」

「まだみたいよー」

「えっ?」

「警戒はして欲しいけど、今のところマリカも、戦争を仕掛けるとかは考えていないみたいだから」

「そうなんだ」


 でも、だったら、その娘は、何のためにブルバレン世界に転生して来たんだろ?

 普通の転生じゃなくて、ラフレシアが連れてきた訳だから、世界の破滅に導くための何らかの使命を持っていると思うんだけど……。

 後で機会があったら、マナミにでも聞くことにしよう。


「じゃあ、今日はこれで」

「情報料は?」

「この間、カップラーメンを二箱買ったばかりだから、無くなった頃にもらいに来る。じゃあねー」


 そう言うと、ユキは転移魔法で姿を消した。

 でも、昔のユキだったら、

「情報料に、この間払った金を返せ!」

 とか言い出したと思うんだけど……。


 正直、ユキも変わったと思う。

 かなり、マトモな人間になった気がするよ!



 あっ!

 カップラーメンとかのゴミをどう処分しているのか、聞くのを忘れた。

 まあ、別に今度来た時でイイか。

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