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84.聖女&性女?

 丁度、私がデザートを食べ終えた時だった。

 美味しいモノを食べて『余は満足じゃ』状態だった私に、ラヤが話しかけてきた。


「ちょっと、アキさんに言っておきたいことがありまして。ちょっと、一階まで来てもらえません?」


 いったい何だろう?

 この時、ヴァナディスは、ちょっと心配そうな視線を私に送っていたよ。


 仮にもラヤは、一国を余裕で壊滅できる力を持っているし、その当時の話をヴァナディスも伝説として聞いている。

 ラヤに私が1対1で呼び出されたら、ヴァナディスだって私の嫁として心配せずにいられないのが普通だろう。

 いくら、今ではラヤが聖女しているとは言ってもね。



 私が通されたのは、一階の客間だった。

 いくらラヤが聖女に鞍替えしたとは言っても、一対一だと警戒してしまう。

 やっぱり、私の中でも、ラヤに対する『破壊神』のイメージが完全にゼロになっていないってことだ。


「私に言いたいことって?」

「アキさんには、さっきの答えをキチンと伝えたいって思ったんです」

「答え?」

「そうです。他の人がいるところでは答え難くて……。多分、アキさんは、私が使いっぱみたいになっていないかって心配されたんじゃないでしょうか?」

「ああ、さっきの話ね。本当は、『みたい』じゃなくて、マジで『使いっぱ』になっていないかって思ったんだけどね」

「それについては、アキさんの言う通りな気はしています。でも、私は出会った人達と一緒に生きている時間を大切にしたいって思っていますので……」

「でも、どうして、そこまで尽くせるのかなって?」

「それなんですけど……」


 ラヤが、私に彼女の背景について語り始めた。

 話は地球時代に遡る。

 正直、私が思っていたよりも重い内容だった。



 当時のラヤは、背が低くて筋力ゼロの非力な少年だった。

 それと、正式な診断を受けたわけではなかったけど、ラヤ自身がネット情報等から調べた限り、性同一性障害だったとのことだ。


 小さな頃から変身美少女アニメが好きで、美少女戦士への憧れが強かったらしい。

 それこそ、ラヤ自身も美少女戦士になりたかったとか。


 でも、幼少期に、同年代の男子達が変身美少女アニメを見るかと言うと、多分、大多数は違うだろう。

 ラヤの周りでも、ほとんどは男の子向け……つまりラヤとは違う番組を見ていたそうだ。


 勿論、変身美少女モノを見る男子は存在するけど、それは幼少期の男子よりも、ある一定以上の年齢を迎えた男子の方が圧倒的に多いんじゃないかなって勝手に推察する。

 別に、それが悪いわけじゃないけどね。



 当然だけど、幼少期のラヤは、周りの男子達と話題が合わなかった。

 また、可愛い服を着たいと思っていたけど、それを親に許してもらえなかったし、イヤイヤ柔道を習わされていたそうだ。


 先生や同級生達からは、

『男らしくしろ』

 とか、

『チ〇コ付いてんのか』

 とか罵倒される毎日。

 男性として生まれて来て、イイことなんて無いと心底思っていたらしい。


 ちなみに、チ〇コは大きかったらしい。

 付いてなくて良いって思っていただけに、これもコンプレックスだったようだ。

 一般男子からすればケシカラン悩みな気はするけどね。



 そのうち、周りの不理解に耐えられなくなって、殺意すら覚えるようになった。

 丁度そのタイミングで、ラヤはラフレシアに『最強の美少女戦士になれる』と唆されて、ここブルバレン世界に召喚されたらしい。

 その時に、例の首ちょんぱ魔法も与えられたとのことだ。


 でも、私とミチルさんのコンビに敗退してラヤは戦死した。

 あの時、ラヤは、そのまま地獄に落ちることを覚悟していたそうだ。

 大量殺人者だからね。


 ところが、ラヤは、女神から優れた治癒魔法を与えられ、トモティ世界に十四歳の女性の姿で転生することになった。

 その時から、ラヤの異世界漂流とでも言うべき生活が始まった。


 トモティ世界では、一定数以上の人を治癒魔法で救うことが課題……と言うか、女性の姿に固定させてもらうための条件だった。

 しかも、それを達成するまでの間は、二十四時間以内に一人救えないと、地球にいた頃の男子の姿に強制的に戻されてしまうとの話だったらしい。

 完全に女神からの脅しだね。

 でも、ラヤは、何とか課題とクリアして、女性の姿に身体を固定して、次の異世界へと移ることになった。



 そこからラヤは、並行世界を管理する各女神達の依頼に応えるために、エディアカラ、バージェス、シルリアの世界を回ったそうだ。

 しかも、チートな力は自分のためじゃなくて人々のために使うって感じで……。



「それで、エディアカラ世界でナツミって人に会いまして、アキさんそっくりだったんですよ!」

「私に? どう言う人?」

「異世界転移者なんですけど、バージェス世界まで腐れ縁で一緒にいた女性です」

「それじゃあ、そのバージェスって世界までラヤに付いてきちゃったってこと?」

「そうなんです。女神様公認でしたけど。あとですね、実は、ナツミがエディアカラ世界に転移する際に容姿を変えたらしいんですけど、その時に最近異世界転生した人の転生後の容姿リストみたいなのを見せてもらって、それにアキさんの姿が載っていて、それを見て決めたって話です」

「そんなの、あるんだ!」

「はい。しかも、アキさんと容姿が同じってことなので、老化しませんし、いくら食べても太らないんですよ」

「それってアリなの?」

「はい。アリなんです!」



 つまり、人形である私と同じで、永遠に体型も容姿も変化無しってことか。

 勿論、人形と同じだから老化も無い。

 それはそれでスゴイな。


 それにしても、異世界転生者の転生後容姿リストなんてモノが作られているとはね。

 ただ、そんなモノが他の人に見せられているって、ちょっと載せられている側としては恥ずかしい気がする。


 でも、そのナツミって人には一回会ってみたいね。

 寸分の狂いなく私にそっくりってことだろうから。



 ラヤは、一番長くいたのはバージェス世界で、その次が、今いるシルリア世界らしい。

 ただ、シルリア世界に来て二年が経過すると、異世界出張なんて厄介な仕事が新たに発生した。

 最初の出張先は、ここブルバレン世界と同じ宇宙に存在するデボニアン世界。

 そこに行って、絶対的支配者を倒し、その星の平和を取り戻した。

 その時に、お母さんを連れて、私のところに立ち寄ってくれたわけだけどね。



 さらに、デボニアン世界から直接、別の依頼でプレカンブリアン世界ってところにも行かされた。

 その世界は、『地球が位置する宇宙』に存在するところだ。そこで、女神様の依頼で表皮常在菌を置いて来たって話だったけど……。

 ただ、その時、ラヤは敢えて地球には立ち寄らなかったそうだ。


 そして、ここブルバレン世界に帰還した直後には、私のお母さんと一緒にカンブリア世界ってところまで派遣されて来たとのことだ。

 ちなみに、カンブリア世界は、私が自殺に巻き込んで殺してしまった青年が転生したネペンテス世界と同じ宇宙に存在するそうだ。



 多分、今いるシルリア世界からも、あと数年で離れることになるだろう。

 それで、出会った人達には尽くしてあげたいって気持ちが強いみたいだ。

 まさしく、一期一会みたいな感覚なんだと思う。


 また、『女神の使いっぱ』になっている件も、破壊神ラヤになった自分を救ってくれた女神達への恩返しのつもりで受け入れているみたいだ。

 それどころか、ラヤを唆したラフレシアに対してですら、ラヤは、

『地球時代よりも充実した生活を送れるようになったキッカケを与えてくれた存在』

 として心底感謝しているとのことだった。

 だから、先日、お母さんを連れてブルバレン世界に来た時に、お礼を言いたくてラフレシアを呼び出したってことだ。



 ただ、ラヤからは他言無用でお願いされた。

 それと、もし、ラヤが他の異世界に行くことになったとしても、異世界間を繋ぐ扉は存続するので、お母さんのことをヨロシクとも言われた。

 お母さんのことをヨロシクお願いするのは、むしろ私の立場なのにね。

 なんだか、私が想像していた以上にラヤはイイ娘なんですけど!


 でも、ふと、思ったんだけど、ラヤが周りに尽くせば尽くすほど、周りは堕落しないだろうか?

 だって、全部ラヤに頼って生きて行けるもんね。


 堕落し切ったところにラヤがいなくなったら…………。

 たしかに、ラヤが他の異世界に異動になったら、お母さんのことは私がキチンと見てあげないと、イケなくなりそうだ。



 それと、何だか女神達のやり口がズルいとも感じた。

 これだと、女性の身体にしてあげるんだから、何でも言うことを聞けって言われているのと同じだよね?

 ラヤ自身は、現状でイイって思っているみたいだけどさ。


 …

 …

 …


 それから、一か月くらいが過ぎた。

 カッシーナ村では、マナミが私の店と似たような店(マナミの店)を既にオープンしていたけど、今のところ、私にピンチヒッターの依頼は来ていない。

 多分、順調に進められているんだと思う。



 この日、私の店にミチルさんが来た。

 大抵、ミチルさんが来る理由は、パラスとの夜の生活のためなんだよね。

 つまり、勃たせる薬と長持ちさせる薬を買うため。

 ダブルドーピングしないと、性欲旺盛なパラスに対抗できないらしいから。

 でも、今日、ここに来た理由は全然違っていた。


「アキちゃん、おはよう」

「おはようございます。薬ですか?」

「まだ残っているから、それは、また今度で」

「マタだけに?」

「あのね……。それより、女神リニフローラ様から聞いたけど、ラヤがリニフローラ様達に頼んで、ラヤのいる世界とアキちゃんの家を特殊な扉で繋いだって聞いたけど?」

「そうなんです。ただ、内密にってことで、こっちの世界では私とヴァナディスだけ、あっちの世界ではラヤと私のお母さんとフルフラールって娘と、もう一人の女性だけの秘密ってことになっていますけど」

「そうなんだ。僕も、今日知らされたし、働かない女……」

「ユキですか?」

「そう。彼女には天界側も教えないって言っていたよ。今回の件は、かなり特例ってことらしいから」

「そうでしょうね」

「もっとも、未来永劫、誰にもバレないようにすることは不可能だろうけど。でも、基本的には他言無用ってことを念押ししておいてくれってリニフローラ様から言付かって来たんだ」

「分かっています」


 こんな特殊な扉の存在がバレたら、

『その扉を通って異世界に侵攻!』

 とか言い出す人間だって出てくる可能性がある。

 それは、ブルバレン世界側でもシルリア世界側でも同じだと思うけどね。


 他にもマリカだったら、

『布教活動のために扉を通りたい!』

 とか言い出すかもしれない。

 あんな宗教をシルリア世界で広めるわけには行かないよ!

 それ以前に、マリカ教の存在がシルリア世界に知られたら、ブルバレン世界の恥って気がするしね。


 一先ず、ミチルさんは、女神から依頼された言葉だけ私に伝えると家に戻って行った。

 どうやら、今日は丸一日、家で休むらしい。

 正直、ちょっとダルそうな感じだったから、仕方が無いと思うけど……。

 もっとも、ミチルさんの体調が優れないのは、パラスとの激しい『長時間性的バトル』が原因なんだけどね!


 それにしても、レッドドラゴンの精力を根こそぎ奪うって、パラスの身体ってどんな構造をしているんだろう?

 少なくとも普通じゃないことだけは明らかだと思う……。


 …

 …

 …


 それから数日後のことだった。

 私の平穏な生活が壊れる予兆をもたらすイヤな女が私の店に来た。

 誰って、ユキだよ!


 コイツは大天使セクロ……なんとかからの情報を私に伝えるためだけに来るんだけど、大抵はラフレシア絡みでね。

 だから、出来れば会いたくないんだよ、この女には。


「来たよー」

「また、変な奴が召喚されたの?」

「召喚者の話じゃないよー。ええと、ラヤが来たんだって?」

「来たけど?」

「特に戦いとかには、ならなかったって聞いたけど?」

「まあ、ラヤは、今は女神サイドの人間みたいだからね。それだけ?」

「ラヤの件については、それだけだよー」


 一先ず、異世界間を繋ぐ扉の話はしてこなかった。

 ミチルさんから聞いていた通り、本当にユキには、あの扉のことは伝わっていないんだろう。

 知っていたら、間違いなく聞いてくると思うからね。

 それこそ、

『私もシルリア世界を見てみたいんだけどー!』

 とか言い出すだろう。


「ラヤの件以外で、何かあるの?」

「マリカ教のこと」

「……」


 一番聞きたくない単語が出てきたよ。

 ディスプロシ島でもスプマ町でも大問題になっている宗教だからね。


「どうかしたのー? 黙り込んじゃって」

「いや、別に」

「それで、今では聖女ならぬ性女って呼ばれているマリカだけど、セクロピアが言うには、スプマ町の信者達をウンカ公国のエレクタ町に移住させようとしているのよー」


 性女マリカね。

 Hばかりしているから性女なんだと思うけど、私としては『性』と『女』の間に、是非とも『悪』を入れてあげたい気がするよ!


 それと、ユキを召喚したのはセクロピアだったっけ。

 いつも忘れるんだよね。

 もはや、長期記憶できる自信すらないわ。


「エレクタ町って、たしかマリカ教第二支部があるところだよね?」

「そうだよー。そこに仮設住宅を建設中らしいよー」

「でも、それだとエレクタ町からも苦情が出るんじゃない?」

「町人……特に女性達が、『性女は来るな!』とか『悪女を追い出せ!』とか猛反発して追い出しにかかっているみたいよー」


 結局、スプマ町を出て行こうにも受け入れ先が無いんだよね。

 恐らくだけど、人里離れた山の中とか島とかに移り住むしか無いんじゃないかな?


「ユキは、それを私に言いに来てくれたわけね?」

「そうだよー」

「だとすると、このビナタ町を狙ってくる可能性もゼロじゃないってこと?」

「今のところは大丈夫みたい。ただ、しばらくマリカ教はスプマ町にムリヤリ居座ることになりそうだから、スプマ町は放置プレイするしかないみたいよー」


 つまり、カッシーナ村の開発に注力した方がイイってことだね。

 後でマナミ達には伝えておこう。

 でも、カッシーナ経由でディスプロシ島に来させるのって、決してハードルが低いわけじゃないんだよね。

 不便な村だし。


 正直言って、スプマ町の方が開けているし、元々、スプマ町なら港町ってことで人の出入りがあったからね。

 ディスプロシ島行きゲートを置くのに、スプマ町は結構都合が良かったんだよね。

 それと比べると、やっぱり数段落ちる気がするんだよなぁ。

 まあ、その辺のリスクも承知の上でケイコもマナミもカッシーナ村を選んでいるんだと思うけどね。


「それと、マリカ教本部の方はどうなの?」

「ネトリ村?」

「そう」

「そっちは、完全に村全体がマリカ教に染まっちゃって、女性と子供は付近の町に移住したみたい」

「やっぱり?」

「ただ、周囲の町が共同でネトリ村の周りにバリケードを張っちゃってねー」

「そうなんだ」

「ネトリ村は完全に孤立状態らしいよー」

「それでも、周囲の町からマリカ教に入信したいって輩は出て来るんじゃない?」

「チラホラいるみたい。なので、そっちでも追い出し運動が近々始まるっぽいよー」


 まあ、そうなるよね。

 たしかに、魔導士エロスの意図を考えれば、私やマナミよりもマリカの方が、多分、正しい使われ方をしているんだと思う。

 でも、さすがに居場所を失うほど派手にヤっちゃマズいよ。



 一先ず、これでユキからの話は終わった。

 当然、

「じゃあ、例のを二箱、お願いねー」

 情報料としてカップラーメンのおねだりだ。


「へいへい」

「今回は、みそ一箱と塩一箱がイイなー」

「了解。出ろ!」


 そして、私は物質創製魔法で所望の品を出すと、ユキに渡した。

 ユキは、それを受け取ると、

「ありがとう。またねー」

 転移魔法で、その場から姿を消した。



 ただ、この時、ふと思ったんだけど、ユキのヤツはカップラーメンの容器とか、どうやって処分しているんだろう?

 ポイ捨てとか、していないよね?

 今度来た時、覚えていたら聞いてみよう。

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