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83/210

83.実は空間だけじゃなくて時間軸も繋いでいた?

 今日は、カッシーナ村で、大陸側ターミナルゲートの開通式が開かれた。

 私は不参加だったけどね。

 でも、これでディスプロシ島からマリカ教に入信する男性が減ることを期待するよ。



 この日の夜、私はヴァナディスを連れて、異世界間を繋ぐ扉を通ってラヤ&お母さんの家にお邪魔した。

 お母さんから夕食に誘われているからね。

 ラヤの料理には期待しているし、まさか、お母さんが、

『あれはリップサービス。形式的に言っただけよ! まさか本気にしたの?』

 なんてことは言わないだろうって信じているから。



 扉を通り抜けると呼び鈴が鳴った。

 多分、私が来たことを自動でお母さんとかラヤに知らせるように、魔法が仕掛けられているんだろう。


 そこは、長い廊下になっていて、廊下の片側には個室が四つ、もう反対側には個室、洗面、バス、トイレが並んでいた。

 部屋数が何気に多いんだけど……。


 奥から二番目の個室のドアが開き、

「アキ、来たのね?」

 お母さんが私達を出迎えてくれた。


「あっ……うん」

「じゃあ、こっちに来て」

「分かった」


 そして、廊下の突き当りまで行くと、そこには、二十畳は余裕で超えるであろうリビングダイニングが広がっていた。

 それプラス、広々としたキッチン。

 しかも、下の階に通じる階段も設置されていた。

 なんて広い家?


「広くて驚いたでしょう?」

「たしかに……言葉を失うレベルで広い家だね」

「前にも言ったけど、ここはラヤちゃんが建てた家でね」

「そう言えば、魔法で家を出せるって言ってたね」

「なので、ここはラヤちゃん個人の家。つまり、私はタダで居候させてもらっているの」

「……」


 私は完全に絶句した。

 そもそも魔法で、こんな広い家が出せるってナニ?

 改めて、もの凄い超チートだと思ったよ。


 少なくとも私の常識レベルを遥かに超越している。

 私の隣では、ヴァナディスも目が点になっていた。

 彼女も私と同じ感覚なんだろう。


「一階は、LDKと客間、トイレ、洗面で全体の半分。もう半分がラヤちゃんの医院ってとこかしらね」

「聖女が医院を開いているってことね」

「まあね」

「それで、何人で住んでいるの?」

「私とラヤちゃんと、医院の受付をしているフルフラールって娘の三人」

「三人だけ?」

「そう。だから、ちょっと寂しいのよね。じゃあ、ちょっとテーブルについて待ってて頂戴。二人を呼んでくるから」


 そう言うと、お母さんはラヤとフルフラールって娘を呼びに行った。

 どうやら、二人は、お母さんの部屋の両隣に、それぞれ住んでいるみたいだ。



 少ししてラヤと、もう一人の知らない女性がお母さんに連れられてきた。

 この娘がフルフラールだろう。


「今日は押し掛けちゃったけど、ラヤは大丈夫なの?」

「問題ありませんよ。それと、こっちの娘がフルフラール。私の医院の受付兼、私が営むお食事処のウェイトレスを担当しています」

「お食事処ぉ?」

「午前の診療が終わったら、昼だけ隣の建物でお食事処をやっているんです。私が魔法で料理を出すだけの店ですけどね。それが終わったら午後の診療を開始します」

「なんか、もの凄くハードな人生送ってない?」

「でも、地球にいた頃に比べれば充実していますので」

「まあ、それは何となく分かる気がする。それで、フルフラールさんだったわね。私が前世でフユミの娘だったアキです。それから、こちらが私の嫁のヴァナディスです」

「フルフラールです。よろしくお願いします」

「ヴァナディスです。よろしくお願いします」


 フルフラールは、私とお母さんが前世で親子だったことを素直に受け入れてくれたよ。

 普通は驚くと思うけどね。

 多分、予めラヤかお母さんから説明を受けていたんだろう。



 これで一通り顔見世が終わり、全員がテーブルについたわけだけど、そうしたらいきなり、お母さんから、

「アキ。悪いけど、日本酒出してもらえない?」

 って言われた。


「昨日出したのは?」

「久し振りで嬉しくて、一気に飲んじゃってね」

「ラヤとフルフラールさんと一緒にってこと?」

「ううん。一人で」

「はぁ? 一升だよ? そんな量を一人で? 一晩で飲んじゃったの?」

「だって、こっちに来て、もう十年経つし」

「えっ? 私は転生して六年ちょっとだと思うけど……」

「多分、あの扉は、空間だけじゃなくて時間軸も超えて繋いでいるのよ」

「時間軸って?」

「つまり、この宇宙と別の宇宙を、同一の時間を繋いでいるとは限らないってこと。それ以前に、私とアキが、それぞれの世界に降り立った時間が数年ズレている可能性も、当然、あると思うけどね」

「なるほどね」

「とにかく、それは置いといて、十年間も日本酒を我慢していたんだから、今回くらい大目に見てよ」

「もう……。はいはい、分かりました」


 仕方が無いので、私は物質創製魔法で昨日と同じ日本酒を三本出してあげた。

 これだけあれば、しばらく持つでしょう。


 ただ、ここで何故かラヤから、

「助かります。私は日本酒が出せないので」

 とお礼を言われたんだけどね。

 でも、ここで礼を言わなきゃいけないのは、ラヤじゃなくてお母さんだと思うけど?



「それで、夕飯はラヤが魔法で出してくれるって聞いているけど?」

「はい。そうです」

「今夜のメニューって?」

「実は、毎晩、全員メニューはバラバラでして。食べたいモノを言って頂いて、それを私が出しているだけです」

「そうなんだ!」


 それは嬉しい!

 異世界転生してから、今まで食べられなかったメニューを堪能できる!


「でも、食べたいモノが沢山あってね。でも、全部は食べ切れないし」

「だったら、いつでもゲートを通って食べに来てください。ちなみに、今はナニが食べたいですか?」

「一番は、うな丼かな。ブルバレン世界では鰻が手に入らないからね」

「たしかに、そうかも知れませんね」

「あと、カツ丼に天丼。牛丼も捨て難いなぁ」

「だったら、ミニうな丼、ミニカツ丼、ミニ天丼、ミニ牛丼を出しましょうか?」

「それでも、一人で全部はちょっとね」

「フユミさんだったら、余裕でたいらげますけどね。では、ヴァナディスさんと二人でシェアしては如何でしょう?」


 でも、ヴァナディスはヴァナディスで食べたいモノがあるだろうし……。

 と思いながらヴァナディスの方を見たんだけど、そうしたら、

「それがイイです!」

 と喜んだ顔でヴァナディスがラヤに答えてくれたよ。

 多分、私と半分っこしたいってだけなんだろうけど。


 それにしても、お母さんは前世と同じで食欲旺盛なのか。

 姿は変わっちゃったけど、中身は全然変わっていないんだね。



 ラヤが、

「では、行きます。出ろ!」

 と言うと、私とヴァナディスの目の前に、ミニうな丼、ミニカツ丼、ミニ天丼、ミニ牛丼の四点に加えて、お吸い物と紅ショウガ、さらには沢庵まで出て来てくれた。

 ただ、ミニサイズなので丼ではなく、茶碗サイズだったけどね。


 でも、本当に、こんなに簡単に料理が出せるなんてね。

 家事スキルが低い私からしたら、凄く羨ましいよ!


「嬉しい! ありがとう、ラヤ」

「どう致しまして」

「でも、これだとキッチンの意味って?」

「食べた後の食器洗い場兼食器保管所です。魔法で食器ごと食べ物が出てきますので、食器は洗って、ある程度溜まったら売りに出します」

「なるほどね」

「では、フユミさんは何がイイですか?」

「じゃあ、普通のうな丼とカツ丼」

「フルフラールさんは?」

「じゃあ、うな丼を試してみたいです」

「分かりました。出ろ!」


 そして、出てきたのは、うな丼二つにカツ丼一つ、それからミニうな丼が一つだった。

 お母さんがうな丼にカツ丼、フルフラールがうな丼だから、ラヤの分はミニうな丼ってことか。

 魔法で食べ物を出したラヤ本人が一番小食だと、私としても、少し申し訳なく感じてきたよ。


「なんか、私達だけ色々出してもらっちゃってゴメン」

「別に気にしないでください。それから、追加で何か食べたいモノがあれば言ってください。私がイメージできるモノでしたら出せますので」

「ありがとう」

「ではアキさん。お召し上がりください」

「うん」


 早速、私は、うな丼から手を付けた。

 ヴァナディスはカツ丼から。

 そして、次の瞬間、

「「!!!」」

 私もヴァナディスも、余りの美味しさに再び言葉を失った。



 本当に美味しいモノを食べると、言葉すら出なくなるんだね。

 感想を言う余裕さえなくなる。

 しかも、そこにあるモノを無言でガツガツ食べたくなる。


 気が付くと、私はヴァナディスと二人で分けることを忘れて、ミニうな丼を全部平らげてしまっていた。

 それだけ魅惑的な味だったんだ。


「ゴメン、ヴァナディス。余りにも美味しくて」

「私もです」


 どうやら、ヴァナディスも私と分けることを忘れて、ミニカツ丼を全部食べ切ってしまったようだ。

 似たもの夫婦だね、私達。

 いや、女性同士だから『夫婦』じゃなくて『カップル』と言うべきか。

 互いに見せ合う苦笑い。



 この状況を見て、ラヤが笑顔で、

「やっぱり二人分出しましょう。出ろ!」

 物質創製魔法食料バージョンで、ミニ丼四点セットをもう一セット出してくれた。


「あ……ありがとう。でも、なんだか申し訳ない」

「よくあることですから。ピザのLサイズを、みんなで分けようと思って出しても、いつの間にか一人で全部食べちゃう人もいますし」


 それって、多分、お母さんだよね。

 この時、私は、ラヤに重ね重ね申し訳ないって思ったよ。



 私は、続いてミニカツ丼、さらにミニ天丼、ミニ牛丼と順に食べて行った。

 どれも美味しい。

 毎日、こっちに食べに来たくなるよ。



「お母さんから聞いたけど、この家ってラヤが魔法で出したんだって?」

「そうです」

「広さも凄いし、照明も明るいし、洗面もバスもあるみたいで、設備面も凄いなって」

「でも、全部、魔道具を使っているだけですよ」

「そうかも知れないけど、ここまでの設備は一般家庭じゃ揃っていないんじゃない?」

「まあ、そうかも知れませんけど……」

「あと、家事の分担とかはどうなっているの?」


 これは、敢えて聞いた。

 お母さんが、ラヤに甘え過ぎていないかどうかを確認したかったんだ。

 言わないでいると、家事を全部周りに投げかねないからね。


「私がやるのは、食事の提供とお風呂の用意くらいですよ。各自の部屋は各自で掃除することになっていますし、食器洗いとリビングダイニングの掃除はフユミさんにやってもらっています。それ以外の部分の掃除は、フルフラールさんにお願いしていますので」

「そうなんだ」


 ちょっと安心した。

 お母さんが、その辺まで、全てをラヤに任せきりになっていないか心配だったんだ。

 本当に、今のラヤは、都合よく何でもやってくれそうだからね。


 …

 …

 …


 ふと、気が付くと、私はミニ丼四点セットを全部たいらげていた。

 いつの間にか、全部消えていたって感じだ。

 まだ、いくらでも入りそうな気がする。



 しかも、食後には、

「では、こちらをどうぞ」

 ラヤが私とヴァナディスにデザートとしてマンゴーパフェを出してくれた。


 お母さんにはダシ巻き卵とチーズ盛り合わせ……完全におつまみだな……、それからフルフラールにはチョコレートケーキを出していた。

 お母さんは、これから私が出した日本酒をグイグイ飲むつもりかな?


 そして、ラヤ自身のデザートは小さな抹茶アイス。

 ラヤは別腹も小さいみたいだ。


「ラヤって、本当に小食なんだね?」

「でも、小腹が空けば、いつでも適当に食べられますので」

「あと、ちょっと気になったんだけど」

「なんでしょう?」

「ラヤって色々な意味で……何て言うかな、周りに尽くし過ぎていない?」


 本当は『使いっぱ』って言いたかったんだけど、少し言葉を濁した。

 ただ、こう聞いたのは、私も相当お人好しだと思うけど、ラヤは私の比じゃない気がしたし、割に合わない異世界生活を強いられているんじゃないかって思ったからなんだ。


 女神には危険なところに単身で行かされるし、瀕死の状態の人を救っても、報酬の上限額は五千円のみ。

 お母さん達に、毎回、タダでこんなに食べさせてあげているのだって、普通じゃ考えられない。

 生きていて、アホらしくならないかなぁ?


 すると、ラヤは、優しい笑顔で、

「そうかも知れませんね」

 とだけ答えた。


 以前は完全なる破壊者だったのに、どうやったら、ここまで利他的に変身できるの?

 もう、完全に聖女一筋って感じだよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] >魔法で、こんな広い家が出せるってナニ? >改めて、もの凄い超チートだと思ったよ。  これも本人は気づいてないだけで、近いものは出せるはずなんですよね。  新婚で爛れた性活が出来る新築の家…
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