8.治癒魔法!
一先ず、私は転移魔法でティラノ君が住む森に行くことにした。
さすがに誰も怖がって付いてこようとするヤツなんかいない……って思っていたけど、どうやら私の前でカッコ付けたい男性は結構いるみたいだ。
「俺も一緒に行く!」
「俺も!」
「俺も!」
「俺も一緒にイクッ!」
なんか、一人変なことを言ったヤツがいるみたいに思えたんだけど……。
まあ、それはさて置き、危険なところに同行してくれようとしてくれる男性が、こんなにいてくるなんて、なんか嬉しい。
ダイとショーのスーシー兄弟。
この界隈で最強のパーティーと呼ばれるハクとアオとチュンのトリオ。
大三元かい!
前世じゃ、責任を擦り付けてくる男がいたくらいだからね。そのせいで、私は始末書を書かされて減俸処分を食らったんだ。
それに比べると、天国と地獄の差があるよ。
ただ、転移魔法が使える人間でないと困る。
相手はティラノサウルスのメス。雌性動物なので、私の存在を感知した途端に逆上する可能性が高い。
それこそ、下手をすれば、いきなり暴れ出して私達を瞬殺してしまうだろう。
なので、自力で逃げられる人ってことで、それなりの距離を一回で移動できる転移魔法使い……ダイとチュンだけに限定した。
一先ず私は服を着ると、私がティラノ君を連れて転移。
森に入ると、ダイとチュンが、私を両脇から挟むようにガードしてくれた。
そして、森の中を移動すること三十分。
前方約50メートルのところにティラノ君の奥さんを発見。
そうだな……ここではティラ美と呼ぼう。なんだか、名前だけ聞くとティラミスみたいでカワイイかも。
そう言えば、地球ではティラノサウルスは嗅覚がムチャクチャ良いって話だったと思うけど、この世界では、必ずしもそうじゃないみたいだね。
ムチャクチャ嗅覚が優れていたら、既に気付かれているよ。
でも、これ以上近づいたら気配でティラ美に気付かれるだろうな。
下手に私の存在に気付かれたら面倒なことになる。雌性動物からは拒否られているからね。それで私は、その場からティラ美を観察した。
そして、あることに気付いた。これは、私がエロ系の観察魔法を使えるから分かることなんだけどね。
「多分、おめでただよ!」
「えっ?」
「つまり、もう少ししたら二人(?)の卵が生まれるってこと。妊娠するとホルモンバランスが変わるからね。それでイライラしているんじゃない?」
「そうなのか?」
「多分……」
ただ、言った後に思ったんだけど、もしかして、私は、イイカゲンなことを口走ってしまったのではなかろうか?
人間の場合なら、妊娠するとホルモンバランスが変わるけど、ティラノサウルスの場合は、どうなんだろう?
やっぱり、違うかも知れない。
妊娠じゃなくて産卵だし。
でも、まあ、このティラノ君を見る限り知性もあるし、きっと人間と大同小異だよ。
うん、そう言うことにしておこう。
「奥さんを労ってあげなよ。クールダウンする時もあるからさ。その時を狙って、妊娠したんじゃないかって話してみるとイイよ!」
「分かった」
「じゃあ、元気な赤ちゃんが生まれるのを楽しみにしてるよ」
そして、私達はティラ美に気付かれる前に転移魔法で街へと戻った。やっぱり、メスのティラノサウルスは怖いもんね。
会うのは避けて逃げることにするよ。
街に平和が戻った。
でも、一見、何事もないように見えても、個々には何らかの問題を抱えているものだ。
ティラノ君事件の三日後、テラさんの奥さんが私のところを尋ねてきた。それも、客としてではない。珍しく相談事があるとのことだ。
「あのう……ここでは、ちょっと話し難くて……」
「では、店の奥にどうぞ」
「済みません」
私は、テナント奥の住居部分に、テラさんの奥さんに上がってもらった。
そう言えば、奥さんのHP……ハレンチパワーの最大値が、少し上がった。前は、8/32だったけど、今は8/43になっているもんね。
もしかして、私が出した野菜を食べているからかな?
あの野菜にHPを上げる効果があったりして。
取扱説明書には書いていないけどさ。
「で、どうされたんですか」
「実は、最近、おりものが増えて、黄色くて。それで下腹部もちょっと痛いんです」
「医者には行ったんですか?」
「いいえ、さすがに行けません。これって、怪しい病気じゃないかと思って」
「よくご存知ですね?」
「亭主と一緒になる前は、看護師をしておりましたので」
可能性は高いよね。
そう思いながら、私は彼女をスキャンした。
取扱説明書:アキ-108号は、患者を全身スキャンして性病を見抜きます。
うーん。残念だけど、結果は陽性。
間違いない。最悪の結果だ。
でも、テラさんの奥さんが、なんで?
もしかして不倫?
それでHPが上がったんじゃ?
「多分、淋病でしょうね。何かヤッたんですか?」
「何もしていません。なのに……」
「テラさんは罹患されていますか?」
「いいえ。最初は、亭主がアナタからうつされて、それで私にうつったんじゃないかって疑っていたんですけど……」
うーん。とんだ濡れ衣だ。
私は、この街に来てから誰ともヤッてないんだけどね。
「じゃあ、テラさんは発症していないんですね?」
「多分。痛がっている様子も膿が出る様子も無いみたいです」
「じゃあ、感染源は?」
「分かりません……。私、本当に浮気なんてしていません。でも、これが亭主に知られたら、絶対に私、疑われます」
うーん。
たしかに、一般論からすれば奥さんが浮気したって思われるもんね、これは。
私だって一瞬そう思ったもん。
「私、主人しか知りません!」
これは嘘だ、うん。
取扱説明書:アキ-108号は、精神を集中すると、見ただけで相手のHの履歴を霊視できます。いつ頃に何人とやっているかを全て見抜きます。
テラさんと出会う前に三人経験してるじゃん。
まあ、テラさんと出会ってからは、テラさん以外とはしてないっぽいけどさ。
でも、ここでそれを追及しても意味無いもんね。ここは知らない振りをしておいてあげよう。
あと、テラさんとの出会い以降は、他の人としていないってことだから、間違いなく不倫もしていないってことだね!
「でも何故、私のところに?」
「亭主に薬を出したくらいですから、何か処方していただけるんじゃないかって思って」
藁をも掴む状態だよね。
まさか、敵視している私を頼ってくるなんてさ。
「絶対に誰ともしていないんですよねぇ」
「はい」
「じゃあ、最近、普段とか違う何かをされたことはありますか? ええと、Hな意味ではなくてですよ」
「友達と温泉旅行に行ったくらいです。症状が出たのは、その後からなんです」
「うーん。もしかすると、そこでうつされたかもしれませんね。例えば、温泉で淋病の人が使った椅子を、洗わずに使えばうつる可能性はありますよ」
「あっ!」
どうやら、心当たりがあるようだ。
つい、うっかりさんだね。
「では、とにかく今は、人知れず治しましょう。薬を処方しても良いのですが、私は治癒魔法で性病を治せますので」
取扱説明書:アキ-108号は、女性同性愛者あるいは男性に懇願されない限り、一般女性には癒しの能力を発動できません。
取扱説明書:例外的に性病の場合は女性でも治します。これは、飽くまでも男性に感染するのを防ぐためです。
「本当ですか?」
「はい」
「では、お願いします!」
「じゃあ、横になってください」
私は、早速、治癒魔法でテラさんの奥さんの両手を握り、治療を始めた。
ただ、治療は一瞬で終わった。
って言うか、性病だから簡単に終わったんだろうね。私の仕様から考えるとさ。
性病治療に特化していそうだもん。
それから、体内の残っているおりものは、転移魔法でマントル層まで転移してあげた。やっぱり、これが残っていると嫌だろうからね。
「どうですか?」
「痛みはなくなりました。でも、本当に、これで治ったのでしょうか?」
「治っていますよ」
「有難うございます。でも、もしかして」
「はい?」
「実は、うちの亭主がアナタに淋病をうつされていて、証拠隠滅にアナタに治してもらったなんてことは!?」
もう、この人は、なんで私が旦那さんと浮気したことにしたがるんだろう?
もしかして、寝取られ属性とか有るんじゃなかろうか?
ここは思い切り否定するよ!
ヤッてないもんね。
「ありませんってば!」
「本当にですか?」
「はい。そもそも、私、一年以上、誰ともやっていませんよ!」
「でもねぇ、そんな身体していて、シていないなんて考え難いわよ。むしろ、誰とでも寝るバリアフリーな方と思っていましたけど」
「本当に、この街に来てからは、一切していないんだけど!」
「一度に複数の男性を相手にヤッていても何ら不思議じゃないなって思ってたけど?」
取扱説明書:アキ-108号は、100人乗っても大丈夫です!
取扱説明書:ついでに、100人に乗っても大丈夫です!
「そんなこと、(この世界に)生まれて一回もしたことありません!」
「嘘?」
「ホントです!」
うーん。
これは、相当なH大好きっ娘に見られているらしい。
たしかに、そう言う仕様に出来ているっぽいけどさ……。
でも、もしかすると、そう思っているのってテラさんの奥さんだけじゃないよね?
街中の人達にそう思われてない?
私のHPをもっと下げる方法は無いのかな?




