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7.超高速稼動装置?

 凄い音がした。

 何だろうと思って二階の窓から外を覗くと、100メートルくらい離れたところに巨大な恐竜の姿があった。


 私は思わず、

「すっごい、大きい!」

 って言ってしまった。

 変な男共に聞かれたら勘違いされそうだな。



 まあ、それは置いといて。

 ヤバイよ、これ。マジでラプ男よりも、ずっと大きい。破壊力も段違いじゃないかな?

 勿論、身体全体の話だよ。勘違いしないでよね!


 これも、元彼と映画で見たヤツだ。二脚歩行の危ないヤツ。

 多分、ティラノサウルスって言う恐竜だよ。



「ウオォー……」

 凄い雄叫びだ。

 しかも、地面をズシンズシン言わせながら、こっちに向かって走ってくる。


 それもそのはずだよ。

 若い男性が、こっちに向かって走っているんだけど、それを餌と思って追いかけて来ているみたいなんだ。



 ティラノ君に向けて、誰かが横から強烈な炎を放った。

 火炎魔法を使う誰かが、その辺りの物陰に隠れているってことだ。


「一年前のカタキ!」

 あれは、ショーだ。

 そうか!

 一年前にショーを大怪我させたのは、このティラノ君だったってことか。


 でも、ティラノ君はシールドを張って炎を防いだ……って、何っ!?

 このティラノ君って魔法が使えるの?

 しかも、今度はティラノ君がショーに向けて口から炎を放った。火炎魔法を使えるのかよ、コイツは……。


 この光景に私は、

「凄く激しい!」

 と思わず口に出してしまった。


 勿論、激しいのはティラノ君の炎ね。

 まるで、

『ゴミは焼却すべし!』

 とでも言いたげだよ。



 ショーは間一髪逃げたけど、これってパワーに歴然とした差がある。とても、ショーが何とかできるレベルのモノじゃない。

 このままじゃ、この街が破壊されてしまうよ。


 だけどさ。

 あのティラノ君って、オス……だよね?



 取扱説明書:アキ-108号は、いかなる生物でも見ただけで雌雄を確実に判別します。



 取扱説明書:アキ-108号は、女王様モードに入ることで雄性動物(人間を含む)を完全に服従させることができます。雌性動物(人間を含む)でもM要素がある場合は服従させることができます。



 私なら何とかできるかな?

 そう思って私は店を出るとティラノ君の方へと近づいて行った。


 ティラノ君を背に逃げる男性が、

「ここにいたら危ないよ!」

 と言いながら私にダイブしてきた。

 こいつ、ドサクサ紛れに私に抱きつくつもりだな!


 この手の輩には、もう慣れている。

 私は、これを難なく避けると、

「店の中に隠れていてください」

 と、その男性に言った。


 そして、私は、その男性を背に、ティラノ君の方を向いた。

 間違っても、『ティラノ君の砲を剥いた』じゃないからね!


 ところが、その男性は、

「だから危ないって!」

 と言いながら私に背後から抱き付いてきた。

 しかも、手つきが何気にイヤラシイ。

 もう、こんな奴らばっかりだな、この街は。



 私は、女王様モードになって、その男性に、

「おやめ!」

 と言ってあげた。


 すると、その男性は私を放して、すぐ近くに正座した。ただ、ハアハア言いながら何かを期待した目をしているんだけど?


 これは、走って息切れしてハアハアしているのか?

 それともエロいことを勝手に想像して、それで興奮してハアハア言ってるのか?


 後者のような気がするんだけど、やっぱり、こいつら何気にMPが上がっていない?

 ここで言うMPはマゾポイン……まあ、説明はイイか。



 まあ、それはそれとして。

 私のターゲットは飽くまでもティラノ君。


 実を言うと、この一年間で、私は、自分の仕様を色々確認していた。

 つまり、取扱説明書を隅から隅まで読んだんだ。


 それで、色々な魔法を使えることが分かった。

 ここで、その一つを実際に使ってみることにした。


 ちなみに、LvはLevelじゃなくてLoverの略だった。

 つまり、愛好者数。

 実質的には使用者数らしい。

 なので、未使用品の私は、Lvが0で当然ってわけだ!


「超高速稼動装置、スイッチオン!」



 取扱説明書:アキ-108号は、超高速稼動装置が内蔵されています。本装置を使うことで様々な運動機能を超高速化することが可能です。単純繰り返し運動による刺激でさえも強烈な快感となって使用者の身体を襲い、快楽の世界へと誘います。



 取扱説明書:アキ-108号が超高速稼動装置を使う際は、全身が空気摩擦に耐え得るように強化魔法が自動発動します。ただし、摩擦に耐え得るのはアキ-108号の身体だけです。服は空気摩擦で瞬時に燃え尽きる場合があります。



 取扱説明書:アキ-108号の強化魔法は、火炎魔法には耐えられません。



 うーん。

 別に私は繰り返し運動をしたいわけじゃないんだけどな。

 でも、超高速稼動装置をどう使うかは私の自由だ。


 ただ、ティラノ君の火炎魔法はまともに受けちゃマズいから、そこだけは気を付けないといけないけどね。

 口から火を吐くから、ティラノ君の顔の前に出ちゃダメだってことだね、多分。



 さらに私は、

「HP(ハレンチパワー)最大&女王様スイッチオン!」

 フルパワーを大放出した。

 HPが最大なら、さすがのティラノ君も私を殺しに来ないはず。オスである以上、私の全身から放たれる空気を、ずっと感じていたいはず!

 しかも、雄性動物なら何でも絶対服従させる女王様モード!


 そして、私は、魔法で道具を出した。

 右手に現れたのは十本鞭。

 文字通り柄から十本の鞭が伸びているヤツだ。



 取扱説明書:アキ-108号が物質創製魔法で作り出す鞭は特別製です。超高速稼働にも耐えられます。



 超高速稼動装置で動く私は、もはや生物の目で捉えることはできない。

 ティラノ君とて同様のはずだ。


 恐らく、ティラノ君が感知できるのは、

『HP最大の空気が自分の近くに存在しているっぽいんだけど?』

 くらいのものだろう。


 私はティラノ君の背後に回ると、ジャンプしてティラノ君の背中を鞭で叩いた。

 超高速化しているため、軽くジャンプしても数メートルの高さに達する。


「パシッ! ピシッ! ぺシッ!」

 イイ音が鳴るなぁ。

 これ、鞭の音ね。


 反撃とばかりにティラノ君が尻尾を振り回してきても、今の私のスピードはハンパじゃない。

 余裕で避けられる。


 また、ティラノ君が私の方を振り返れば、私は再び超高速稼動装置でティラノ君の背後に回る。

 そしてジャンプして十本鞭を背中に打ち込む。


「パシッ! ピシッ! ぺシッ!」

 それを何回も繰り返した。



 ただ、空気摩擦に服がもたないことを失念していたよ。

 取扱説明書にも書いてあったのにね。

 気が付いたら私は、何時の間にか全裸になっていた。


 でも恥らっている暇は無い。

 今はティラノ君を屈服させることが第一優先だ。



 時間の経過と共に、ティラノ君の目からは次第に攻撃的な雰囲気が消えていった。何故なら、HP最大値の私が相手だからだ。

 入れ替わりに、発情した空気に包まれて行くんだけどね。


 さらに私は、大きくジャンプすると、ティラノ君の腰の辺りに仕上げの蹴りを一発お見舞いした。

 すると、

「ウオォー……」

 なんだか、妖しい雄叫び(?)を上げてティラノ君がその場に倒れた。

 もしかして、これって足蹴にされて喜んでないか?



 ここに一本の矢が放たれた。

 やはり、『攻撃態勢』から『攻撃受けたい態勢』に完全に切り替わっていたためだろう。ティラノ君は、シールドを張って避けることができなかった。

 それで、その矢は、ティラノ君の身体に命中。


 多分、結構強力な毒が塗られていたんだろう。

 この矢を受けると、ティラノ君の動きが止まった。


 ただ、HP最大値で、しかも全裸の私が視界に入っていて、よく矢をキチンと撃てたと思うよ。

 余程、ティラノ君を仕留めたかったんだろうね。


 矢を放ったのはダイ・スーシー。一年前の仕返しってとこだ。

「やったぜ!」

 もの凄い喜びようだ。


 人間の男共が歓喜溢れて私の方に走ってくる。

 全裸でHP最大のままでは危ない!

 魔玩具が言うのもなんだけど、思い切り貞操の危機だ!


 私は一気にHPを下限値まで下げた。

 まあ、それでもHPは50もあるからね。日中の一般女性と比べれば、それでも十分高い値なんだよね。



 ふと私の頭の中に、男性の声が響き渡った。

「俺は死ぬのか?」

「えっ?」

 これって、もしかしてティラノ君の声?

 まあ、シールド魔法を使いこなしていたくらいだから、それなりに知性はあって不思議じゃないか。


 テレパシーが使えるのには驚いたけどね。

 これも魔法なんだろうけど。



 ティラノ君は、既に自分の命の危機を察している。

 自分に毒矢が命中。

 しかも、その自分のところに人間の男性が沢山集まってくるわけだから、男達は完全に自分を仕留めに来るって考えるのが普通か。


 私個人としては、ティラノ君を殺す必要は無い気がするんだけど……。

 それに一応さ、一瞬とは言え私の下僕になったオスだからね。人間じゃなくても、ムリに殺したいとは思わない。

 うーん。普通の思考回路じゃないよね、私。



 でも、通常の人間の感性からすれば、危険は極力排除したいもんね。

 やっぱり仕留めに来るよねぇ。


「人間に迷惑をかけないと約束してくれればアナタを助けましょう」

「分かった。頼む」

 そして、私は、ティラノ君の身体に触れると、癒しの魔法を使った。


 私の方に駆け寄ってきていた男性達の足が止まった。

 そりゃそうだよね。ティラノ君の矢創がドンドン治って行くんだもん。

 裸の私に近づくよりもティラノ君に近づかない方を選ぶよね、普通は。


「なんで、そいつを治そうとするんだ!」

 こう言ったのはダイ。まあ、当然だろうね。


「もう、人間に迷惑をかけないと約束してくれたからね。それに、私にとってはアナタ達と同じ下僕だし!」

「うっ……」


 一応、彼らにも下僕と言う自覚はあるみたいね。

「でもよう……」

「大丈夫。それより、ティラノ君は森に住んでいたはずですよね? どうして、こんな街まで出てきたの?」


 すると、ティラノ君の言葉が、ここにいる全員の頭の中に響いてきた。

 心の声が周りに丸分かりって、なんか、昔、そんなドラマを見たことがあるような気がするなぁ。


「最近、妻が冷たくてね。機嫌悪いし。それでムシャクシャしてよぉ」

「八つ当たりかよ!」

「すまん!」

「で、何か奥さんを怒らせるようなことしたの?」

「いや、心当たりが無いんだよ。それに、最近は、あっちのほうもご無沙汰で」


 うーん。

 ちょっとティラノ君が可哀想になってきた。


 でも、これは飽くまでもティラノ君だけの言い分であって、ティラノ妻は別の言い分があるかも知れないけどね。

 これだけを聞いて、ティラノ妻が悪いとは言い切れない。

 うーん。乗りかかった船だし、ティラノ君の奥さんに会ってみるか。

敢えて『汚物は消毒』を避けて『ゴミは焼却』にしました。

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