66.大ドンデン返し、再び?
次の日の朝、
「じゃあ、行くからね。転移!」
私はビナタ町のヤロウ共を連れて、例の性転換教祖シルヴィアのいるオルキス共和国のスプマ町に向けて連続転移に入った。
ただ、ヴァナディスもパラスも、今回は同行する気は全く無し。
店の留守番をしてくれることになった。
と言うか、二人共、HP二百万が、どんなものか知っているからだろうね。
シルヴィアは、私以上の高HPを持っていることが予想される。
だとすれば、当然、シルヴィアが視界に入ったら、二人共、吐き気とか怒りしか湧いてこないってことがイヤと言うほど理解できているってことだ。
ヴァナディスは、今でこそ私のホンキHPを喜んでいるけど、今の関係になる前は、私の最高HPに対して超不快でしか無かったからね。
パラスに至っては、今でも私のホンキHPを感じたら殺意以外、何も湧いてこないみたいだけど……。
ビナタの町から連続転移を繰り返すこと数回。
私達は、何とかスプマ町に到着した。
ただ、無事とは言えないなぁ。
ヤロウ共のほとんどは、予想通りゲロゲロになっていたよ。
でも、お前等が来たいって言ったんだからね!
ゲロゲロになってもイイって言ったのはお前等だからね!
私のせいじゃないからね!
と言うわけで、一先ず、この場で私達は休憩を取った。
私自身は、やっぱりシルヴィアがディスプロシ島行きゲートの設置場所にいるのが一番気になっていた。
十中八九、私を誘き寄せるためなんだろうとは思っていたけどね。
小一時間休んでから、私達はシルヴィア教の本拠地付近まで移動した。
ビナタ町のヤロウの一人が、既にシルヴィアを見に行っていたからね。そいつに案内してもらったんだ。
そして、シルヴィア教総本山の前に来た時、私は異様な雰囲気を感じ取った。
たしかに不快感とか殺意しか湧いてこない特殊な空気だ。
多分、シルヴィアがHPを最大にしているんだろう。
その空気が建物の中から外部まで漂って来るんだ。
今までは、この空気を浴びせる側だったけど、実際に受けるとイライラするもんだね。
たしかにパラスとか、かつてのヴァナディスが私のホンキHPを超嫌がっていたのが分かる気がするよ。
建物の周りには、女性の姿が全然ない。
そりゃあ女性なら、間違いなくこの空気を避けて通るよ。
って言うか、そもそも近付かない。
近付きたくもない。
でも、超高HP波動を受ける一方なのは気に入らないなぁ。
なので、私も、
「HPフルパワー!」
本気を出すことにした。
ビナタ町から連れて来た男連中も、その辺にいたスプマ町の男達も、私の方を見ながら股間が反応しているよ。
これって、ちょっとマズいかも?
一斉に襲いかかってきたりしないよね?
ただ、私の本気を感じ取ったのか、総本山の建物の中から一人の妖艶な女性が私達の前に姿を現した。
こいつが多分、シルヴィアだ。
それで私は、彼女(?)のステータス画面を覗こうとした。
HP値を確認するためだ。
ところが、シルヴィアの場合は、どうやらステータス画面を見られないように、魔力でガードされているらしい。
でもね。
私には特別な力がある!
取扱説明書:アキ-108号は、相手のHPを測定するスカウターを装備しています。ただし、ここで言うHPとはヒットポイントではなくハレンチパワーです。
と言うわけで、シルヴィアのHPチェックを行った。
数値は二百一万。
私よりも5%アップだ!
ってことは、常識的に考えて、私を見る時よりもシルヴィアを見る時の方がヤロウ共のエネルギー充填度が高いことが予想される。
気に入らないなぁ。
ただ、ヤロウ共の反応が、ちょっと変だ。
私の予想と違っているっぽい。
取扱説明書:アキ-108号は、男性が裸になっていなくても、服の上から見ただけで男性のエネルギー充填状態を完全に把握できます。
良く分からないんだけど、私の方を見た時には、ヤロウ共のエネルギー充填状態は発射直前の119%になっているんだけど、シルヴィアを見た時には102%に落ちているよ。
それでも100%を超えているけどね。
この時、ビナタ町の住人が言っていた、
『うーん。なんだかよく分からないんだけどさ。アキちゃんの方が見ていて、何て言うかな、安心するんだよ』
って言葉を私は思い出していた。
恐らくだけど、コイツ等、シルヴィアの中身が男性だってことを、本能的に気付いているんじゃないかな?
それで、どこか違和感を覚えて、シルヴィアへの反応度合がHPから予想されるレベルよりも下がっているんじゃないだろうか?
だから、ビナタ町の住人も、私の方が見ていて安心するってことなんだろう。
ここにいる連中は、普通に女好きな連中だからね。
見た目が女性でも中身が男性なのは避けたいってことなんだろう。
ただ、エネルギー充填が100%を超えているってことは、却下するところまでは行っていないってことなんだね。
シルヴィアが私の方に近づいて来た。
そりゃあ、このホンキHPを見れば私がアキだってことは容易に想像がつくもんね。
「アンタがアキね?」
「ええ、そうよ」
「ここにいれば、絶対に来ると思っていたわ。ディスプロシ島に行くゲートがある場所だからね。私はシルヴィア」
「名前はユキから聞いているわ」
「ユキ?」
「大天使セクロ……なんとかが召還した……」
「ああ。あの働かない女ね。たしかに『セクロ』って来たら『ピア』って続くとは思わないわね。普通は『ス』を連想するだろうから」
「そうなのよね。でも、ゲートは壊さなかったのね」
「壊す意義が無いからね。それでなんだけど、ここでは、ゆっくり話が出来ないんで、ちょっと、付き合ってもらうわよ」
「何処に?」
「来れば分かるわ。転移!」
コイツ、転移魔法が使えるのか。
まあ、カナコも使えたしね。一応、魔法装備はされているってことか。
それに、転移魔法があったから、シミア町からスプマ町まで容易に移動できたってのもあるだろうしね。
転移して出た先は、スプマ町から数百キロ離れた場所に位置する荒野だった。
そして、急にシルヴィアの口調が男性っぽい感じに変わった。
二重人格か、お前は!
「ラフレシアからは、お前にも他の降臨者にも関わるなと言われていたんだが、お前には興味があったからな!」
「私に?」
「ああ。ラヤに魔王にエロ女、それから鉄女を撃退したって聞いていたからだ」
「エロ女はマリカのことだろうと思うけど、鉄女ってカナコのこと?」
「そうだ。ただ、お前は思ったほど頭が良さそうな雰囲気じゃないな」
「余計なお世話よ」
「一応、ゲートを壊さなかった理由を教えてやろう。あれは俺と同じラフレシアに召喚されたケイコの計画に基づいて作ったゲートだからな。これを現段階で破壊することは、ラフレシアに対する背信行為になりかねないとの判断だ」
「そうなんだ」
「一応、ラフレシアは俺の召喚主だからな。ただ、お前は分かっていたのか?」
「何を?」
「お前はケイコとマナミに利用されていたことをだ!」
「利用?」
「そうだ。マナミは、お前と旧友関係である立場を利用して、ラフレシアの敵であるオマエの労力を、ラフレシアのために使わせたってことだ」
「えっ?」
「頭の血の巡りが悪い女だな。あのゲートはケイコが世界統治に向けて動くための地盤固めとして作った第一歩だぞ。お人好しだな。気付いてなかったのか?」
こう言われて、私は、その場に呆然と立ち尽くした。
そう。まさに友人に騙された馬鹿な自分に気付いたって感じだ。
そんな私を見て、シルヴィアは、猛々しく笑い声を上げながら、私を目掛けて魔法で雷を落として来た。
コイツは、そんな魔法も与えられていたのか。
雷は、私の身体を直撃した。
当然、シルヴィアは勝ち誇った表情をしていた。
「おめでたいヤツだ」
「おめでたいのは、どっちかしら?」
「何?」
私は、次の瞬間、超高速稼働でシルヴィアの背後に回った。
呆然としていたのは演技だよ、演技!
ケイコとマナミが、どんな形で世界支配をしたいか知っているからね。
友人ってこともあるけど、二人の理想に私自身が共感して、私はディスプロシ島開発を手伝ったんだ。
なので、別に利用されていたって構わないんだよ!
元々、こう言った口撃をしてくる可能性も想定していたしね。
だから、敢えてショックを受けたふりをして油断させたんだよ。
バカな女のふりは疲れるよ。
案の定、シルヴィアは隙だらけだった。
と言うか、この隙を作らせたかったんだ。一気にカタを付けるためにね。
一方の私も、超高速稼働をやったから、毎度の如く非常に布面積の少ない白のビキニ姿になっちゃったけどね。
ビナタのヤロウ共に言わせると、これが私専用の戦闘服なんだけど。
それから、私はミチルさんの血を浴びて防御力が尋常じゃないレベルに上がっていたからね。
なので、これくらいの雷を受けても何ら問題はないんだ。
つまり、アンタの攻撃は全然、効いていないんだよ!
心も身体もね!
そして私は、
「性的背景透視!」
取扱説明書:アキ-108号は、その気になれば他人の性的背景を全て把握することが可能です。
コイツが何でラフレシアの性転換魔法を受け入れたのか、その背景をチェックした。
なるほど。そう言うことか。
さらに、間髪置かずに、
「必殺! 性的大ドンデン魔法!」
私はシルヴィアに、以前カナコに放ったのと同じ魔法を食らわした。
しかも、この魔法は、どの性癖を大ドンデン返しさせるか、私の方で指定できるんだよ!
次の瞬間、
「どうして俺は、女の服を着ているんだ?」
シルヴィアが、そう大声でわめき始めた。
性的背景チェックでハッキリしたよ。
コイツは、ストレス解消のために背徳感から来る刺激が欲しかっただけなんだ。
だから、背徳感さえ得られれば、泥棒でも性犯罪でも何でも良かったんだ。
でも、それらは罪になる。
それで、罪にならない方法をコイツなりに考えたってところだ。
元々面食いで、美女への憧れがあったんで、それが屈折した形で女装に興味を持ち、さらに背徳感を得る行為として実際に女装をして行ったってところみたいだね。
しかも、それが性癖の一つとして定着した。
どうも、女装して自慰行為に走るのが病みつきになっていたっぽい。
一般的には変態扱いだろうね。
まあ、ストレス解消法なんて人それぞれだから、責めはしないけどさ。
でも、私はコイツの考え……と言うか性癖なんか理解したいなんて全く思わないよ!
性的大ドンデン魔法で、私は、その女装趣味に向かって行った全てのファクターをひっくり返してやった。
なので、今、コイツは女性モノの服を着ることに興味が無い。
むしろ女性モノの服を着ることに対して反吐が出るって感じだ。
なので、シルヴィアは、一気に服を脱いで全裸になったよ。
さらに私は、
「性的大ドンデン魔法アナザーベクトル!」
もう一発、コイツに性的大ドンデン魔法を食らわしてやった。
勿論、アナザーベクトルって言葉の通り、さっきとは違うファクターを思い切りひっくり返してやったよ。
すると、シルヴィアは、
「もう我慢できない。急がないと。転移!」
私の存在を完全に無視して、転移魔法で、この場から姿を消した。
もう、シルヴィアの視界には、私なんか映っていないからね。
他のモノ一色に頭の中は染まっちゃっていたからさ。
もっとも、シルヴィアの行き先は、私には分かっている。
だって、この世界でシルヴィアが行く場所って言ったらシルヴィア教の総本山しかないはずだもんね。
なので、私も、
「転移!」
シルヴィアを追いかけて、連続転移魔法で総本山へと向かって行った。




