57.クレイゴーレム?
ミチルさんの話では、新たにラフレシアが召還した不感症の女性は、クレイゴーレムを連れてオルキス共和国に降り立った後、ステリア王国、ウンカ公国、ルディシア王国、コルダタ連邦など、この世界のあちこちに姿を現していた。
ただ、一般には不感症の女性のことは知られておらず、単にクレイゴーレムが出現して勝手に暴れまくったとの話になっていた。
ちなみに、クレイゴーレムは体高5メートルくらいって話だった。
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私もビナタ町のみんなから発見情報を得たら、すぐに転移魔法で現場に駆け付けたわけだけど、いつも到着した時には、既に姿を消した後だった。
一時間くらい暴れまくったら、転移魔法でも発動したかのように姿を消してしまうらしくてね。
町のみんなの情報じゃ、完全に事後だったよ。
各国でも、クレイゴーレムが、何時何処に出現しても軍隊が出動できるよう、準備がなされるようになった。
とにかく、出現したらタイムリミットは一時間。
それまでの間に急いでやっつけようってことになったんだ。
でも、意外とクレイゴーレムが強くてね。
軍の方でも、それなりの死傷者が出たらしい。
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そんなある日のことだった。
マナミが展望台から望遠鏡でルテチア島の様子を伺っていた。
敵情視察と言うことで、たまたま覗いていただけだったのだが……。
そこに、突然、クレイゴーレムが現れた。
噂通り体高は約5メートル。
その巨大な身体から振り下ろされる拳で、周りのモノを破壊しまくっていた。
数人がクレイゴーレムに向けて矢を放ったが、所詮、相手は泥。
全然ダメージを与えることは出来ずにいた。
「あれって、もしかして例の泥人形? だとすると、多分、近くに噂の不感症の女性がいるはずよね?」
それでマナミは、クレイゴーレムが出現した辺りに、それらしき人物がいないかを急いでチェックした。
すると、思った通り、リゾートホテルの屋上に日本人っぽい女性を発見した。
「たしか、名前はカナコだった。なので、多分、日本人だろうし、あの女性で間違いないわね。じゃあ、連続転移!」
本来なら、ここでマナミがルテチア島に飛んで、クレイゴーレムを操るカナコと戦いたいところである。
しかし、マナミとカナコは、共に堕天使ラフレシアが召還した同朋である。
故にマナミがカナコの足を引っ張るわけには行かない。
その行為自体が、ラフレシアとの契約違反に相当し得るからだ。
それでマナミは、ビナタの町へと急いだ。
アキを連れてくるためだ。
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それから数分後のこと。
マナミがアキ……私の店の前に到着した。
「アキ!」
「どうしたの、マナミ?」
「たった今、ルテチア島に、例のクレイゴーレムが現れたの」
「ホント?」
「ええ。まだ、五十分近くはルテチア島にいるはずよ。あと、ラフレシアに召喚された女性らしき人物もいた。カナコって名前だって聞いていたから」
「じゃあ、日本人?」
「多分ね。それで、日本人っぽいのが、クレイゴーレムが出た近くのリゾートホテルの屋上にいたから、その女性で間違いないと思う」
「分かった。じゃあ、ヴァナディス、パラス。ちょっと行ってくるから、お店の方をよろしく!」
そう言うと、私は、
「転移!」
連続転移魔法でルテチア島へと急いだ。
そして、数分後には目的地に到着。
目の前にはクレイゴーレムの姿があった。
さすがの私も、これを目にして、
「すっごい、大きい!」
って久々に言ってしまった。
これを近くで聞いていた男性達は、何気に股間を手で押さえていたけど……。
まあ、そんなことは、どうでもイイか。
まず、私は付近の建物の屋上を急いでチェックした。
探すこと数十秒。
いた!
マジでマナミの言う通り、リゾートホテルの屋上に日本人っぽい女性を発見した。
と言うわけで、私は、
「転移!」
そのホテルの屋上まで瞬間移動した。
そして、転移を完了すると、
「アナタがカナコ?」
その女性に確認した。
多分、この女性で間違いないと思うんだけど、万が一違ったらマズイもんね。
「そう、私は大野加奈子。この世界に堕天使ラフレシアの手によって召喚された者」
カナコは、私の方を振り返ると、そう答えた。
ぱっと見た感じ大学生くらいに見えるけど……。
意外と中身は厨二だったりして。
顔は、ヴァナディスと比較したら劣るけど、普通に考えたら、かなり上の方だよね、きっと。
HPの放出量は48だから、ニオベ(HP50)よりもちょっと劣る程度。
ただ、暗い雰囲気に包まれていて、それで美貌を損ねているみたいなんだよね。
実は、カナコのHP上限値は82ってなっているんだよ。
これって私が知る限り、ナヴィアの87に次ぐ高値なんだけど!
なんか勿体無いな。
「学年は?」
「中学二年生」
えっ?
マジで学年自体が厨二かよ!
そんなのばっかり送り込みやがって!
ただ、ラフレシアにお願いして、大人っぽい容姿に変えてもらったのかも知れないね。
まさか、ラヤと同じで元男性ってことは無いよね?
「召還前の性別は?」
「女性だけど?」
転性はしていないってことね。
まあ、別にそれはどうでもイイか。
ただ、ユキは不感症の女って言っていたよね?
じゃあ、もしかして中二のくせに既にHなことを経験済みってこと?
「Hの経験はあるの?」
ついつい、私は聞いてしまった。
口が滑った感じだ。
すると、カナコは私を睨みつけてきた。
「あるけど、悪い?」
「いや、別に、そう言うわけじゃないけど」
なんか、Hにイヤな思い出でもあるのかな?
ちょっと悪いけど、性的透視!
取扱説明書:アキ-108号は、精神を集中すると、見ただけで相手のHの履歴を霊視できます。いつ頃に何人とやっているかを全て見抜きます。
取扱説明書:どんなプレイをしたかも分かります。
取扱説明書:アキ-108号は、その気になれば他人の性的背景を全て把握することが可能です。
あっ! 納得。
これは、マジで聞いてはいけないことだったようだ。
話を変えよう。
「どうして一時間で消えるの?」
「吐き気がするから」
「はっ?」
「何人もの人間を見てると吐き気がしてくるから」
「もしかして、召還前は引き籠ってた?」
「そう。悪い?」
引き籠りの厨二かぃぃぃ!
ラフレシアのヤツ、また今までとは違うタイプを送り込んできやがったよ。
ただ、引き籠り……って言うか、人嫌いの原因が、Hなことと連動しているなら、それはそれで可哀そうな気がするよ。
「いや、別に悪くは無いけど。でも、アナタが暴れさせているのよね、あのゴーレム」
「そうよ」
「あのゴーレムにヤラれて、大怪我した人や死人が出ている以上、私は、アナタにどんな過去があるにせよ、許すことは出来ない。天中を下すよ!」
「ふーん。ところで、アンタ誰?」
「私はアキ。ラフレシアから聞いてない?」
「女性型の性処理用等身大フィギュアに転生した人ね」
「そこまで知ってるのね」
「つまり、Hの権化ってとこ?」
「別に、そこまでヒドくは無いつもりだけどね。でも、悪いけど早速イカせてもらうわよ! ダブルウィップ!」
私は、物質創製魔法で一本鞭を二本出すと、両手に一本ずつ掴んだ。
そして、
「行っけぇ!」
左右の鞭を、私はカナコの胸元を目掛けて交互に打ち込んだ。
「痛い!」
「でも、この痛みが、そのうち気持ち良くなって行くかもよ」
「そんなこと有り得ない。ただ痛いだけじゃない! ゴーレム!」
この直後、クレイゴーレムの手が私を目掛けて振り下ろされて来た。
カナコを守るために、この場まで移動して来たんだろう。
それにしても、いつの間に?
正直、これをまともに受けたら私がマズイ。
破壊されてしまうかも。
なので、
「超高速稼働!」
取扱説明書:アキ-108号は、超高速稼動装置が内蔵されています。本装置を使うことで様々な運動機能を超高速化することが可能です。
取扱説明書:アキ-108号が超高速稼動装置を使う際は、全身が空気摩擦に耐え得るように強化魔法が自動発動します。ただし、摩擦に耐え得るのはアキ-108号の身体だけです。服は空気摩擦で瞬時に燃え尽きる場合があります。
私は、その場から超音速で移動した。
もっとも、例の布面積が非常に少ない戦闘服……って言うか白の水着だけになっちゃったんだけどね。
毎度の如く、すっかり服は燃えちゃってさ。
クレイゴーレムは、さらに私を目掛けて大きく右手を伸ばして来た。
多分、私を捕まえるつもりなんだろう。
当然、ここでも、私は超高速稼働でゴーレムの攻撃を避けた。
こっちの動きの方が数段速いからね。
間一髪どころか余裕で回避したよ。
でも、そう言えば、クレイゴーレムって、泥で出来てるんだよね?
だったら、
「こっちこっち!」
私は、クレイゴーレムが再び伸ばして来た手をギリギリかわすと、ホテルの屋上から飛び降りた。
当然、私を追いかけてクレイゴーレムも飛び降りて来た。
思惑通り!
私は、そのままクレイゴーレムを海岸に誘い込んだ。そして、
「シャワー魔法!」
取扱説明書:アキ-108号は、何時何処でもHができるように魔法でシャワーを浴びて全身を綺麗にすることが出来ます
取扱説明書:相手に浴びせることもできます。
取扱説明書:ただし、魔法でシャワーを浴びますと、周りがびしょ濡れになります。本魔法は、必ず濡れても良い場所でお使いください。
別に、クレイゴーレムとHするわけじゃないけど、私はクレイゴーレムにシャワーを浴びさせた。
コイツは泥で出来ているからね。
シャワーは苦手なはずだよね?
狙い通り、シャワーが当たった部分が溶け出して、クレイゴーレムの体制が崩れた。
今がチャンス!
私は、シャワー魔法の出力を上げた!
しかも、丁度ここに大きな波が私達を襲ってきた。
まさにグッドタイミング。
クレイゴーレムが、この波に足を取られて倒れ込んだ。
さらに大波がクレイゴーレムを襲う!
そのまま、クレイゴーレムは波に飲まれて海水で溶かされてしまった。
こうなることを半分狙ってたけどね。
それが大当たりになるなんて、まさにラッキーな展開だよ!
でも、まだ終わりじゃない。
本当の敵はクレイゴーレムじゃないからね。
私は再び、例のホテルの屋上を見上げた。
すると、私を怖い顔で睨みつけながら、カナコは、
「次は、アナタの町を襲いに行くから覚悟してよね!」
と捨て台詞を残すと、その場から転移魔法で姿を消した。
「アキ。やったね!」
こう言ってきたのはマナミ。
立場上、カナコと戦えないのは分かるけど、本当は手伝ってもらいたかったな。
まあ、仕方ないけど。
「巧く行ったよ!」
そして、ハイタッチ!
「でも、彼女は他に二体のゴーレムを持っているから。岩のヤツと金属のヤツ」
「クレイゴーレムより厳しそうだね」
「うん。クレイゴーレムよりも間違いなくパワーは上だし、気を付けてね」
「分かってる。あと、あのカナコって娘……」
「アキも覗いたんだ」
「じゃあ、マナミも?」
「うん。なんで、あの年で不感症なのかなって思ってね」
「まさか、あんな過去を持っていたとはね。あの容姿も、性的背景を見る限り、ラフレシアからもらったモノではなく自前みたいだし……」
「だね」
「本来ならHP82だし」
「本気を出せば、かなりの美人のはずだよね。勿体ない」
「じゃあ、ヴァナディス達が心配するから、一旦戻るね」
「そうね。了解!」
「じゃあ、転移!」
そして、私は連続転移魔法で、急いで自分の店へと戻った。




