46.強化!
「私がアキです。そして、こちらの男性がミチルさんです」
「ラヤにトドメを刺した方でしたね。あの時は有難うございました。それで、実は、お二人にお越しいただくよう依頼を出したのは私なんです」
「えっ?」
「今回の相手は、ある意味、ラヤ以上かもしれません。ですので、普通の兵士では相手にならないのです」
そりゃあ、ドラゴンに匹敵する人間だもんね。
普通は相手にならない……と言うか、相手にしちゃいけないよ。
「たしか、反乱軍の長の名前はマリカでしたよね?」
「そうです」
「どんな能力を持っているのでしょうか?」
「常識の枠を遥かに超えた火炎魔法と聞いています。マリカは、人々に王家への批判を訴えると同時に、その強大な魔法を披露して、戦わずして人々を反乱軍の配下としているようです」
うーん……。
正しくは、人々が強大な魔法で脅されて配下になったって言うより、むしろ強大な魔法の持ち主が物欲だらけの王を討伐するのに決起したので、それに喜んで乗っかったって感じなんだろうな。
どっちが悪者か分からなくなってきたよ……。
まだ一応、日が出ている。夕方だもんね。
それなのに、なんで戦場なのに戦っていないんだろう?
「失礼ですが、前線なのに妙に静かですね」
「恥ずかしながら、マリカの魔法を見せつけられて、わが軍は既に撤退したとの報告を受けております」
「へっ?」
「アデレー王国からの援軍も同様とのことです」
「はぁ……」
「それで私が、お二人の参戦をアデレー王国に申し入れ、私自身も、つい今しがた、ここに到着したところです」
とんでもないところに連れてこられたんだね、私達。
しかも、私とミチルさんの二人だけで戦えってことか。
ヒドい話だなぁ。
「それと、敵陣営では一つのテントに兵士達が五十人くらい、列を作っていますけど、あれって何でしょう?」
「あれはどうやら、マリカが男性兵士達にご褒美をおねだりしているらしいのです」
「マリカがですか?」
「多分、あれで半分くらい終わったと思います」
「では全部で百人くらいってことですか?」
「そうです。どうも、相当なH好きみたいでして、一度に数人の兵士を相手に、1対多の複数プレイを楽しんでいるようなのです」
「はっ?」
「数人ずつテントに入ってマリカを相手にするようです」
「えっ?」
「戦っていない時は、大抵Hしているようです。たくさんの男に愛されて嬉しいって話ですね。多分、あれだけの人数を全部、相手します」
おねだりって、それかぁ!
凄すぎるなぁ。
途中で何本……じゃなかった、何人目か分からなくなるんじゃない?
「しかも、全員、日替わりみたいですね、あれ」
「へっ?」
じゃあ、十日で千人切り?
相当な淫乱娘だね。私の設定よりも凄いんじゃないかな?
ただ、沢山の男性をはべらすのは私の領分だよ!
それに、これから私の時間帯に突入する。
取扱説明書:アキ-108号は、基本的には、どちらかと言うと夜行性です。
私は、
「HP最大&女王様モード!」
戦闘モードに切り替えた。
ところが、この直後、
「是非私の後妻に!」
と言いながら、背後からサマルスキー大佐が私に抱き付き、さらにイヤラシイ手付きで私の身体を触り出した。
おいおい、紳士かと思ったら、コイツもビナタの野郎共と一緒かよ?
と思ったけど、今の私はHPが二百万もあるんだっけ。むしろ、反応を示さないミチルさんの方がおかしいってことか。
「私は触る、好き、体位!」
体位?
……大尉か。
って、お前は大佐だろ!
エロギャグのために勝手に降格しているよ。
サマルスキーが触る好きになっているし、もう完全に大佐が壊れちゃっている。
仕方が無い。
「離れなさい、このブタ野郎! それと、お座り!」
この私の強烈な言葉を浴びて、
「はい。女王様!」
サマルスキー大佐は私から離れて、その場に正座した。
ただ、喜んだ表情でハアハア言っている。完全に私の犬になったね。
これからはポチと呼んであげよう。
「超高速稼働!」
私は、物質創製魔法で鞭を出してすぐ、超高速で敵陣に突っ込んでいった。
着ていた服は、一瞬で燃え尽きたよ。空気摩擦スゲー!
そして、敵陣に着くと超高速稼働を解除した。
今、私は布面積が著しく少ない紐のような白い水着を着ている。ビナタの野郎共が選んでくれた戦闘服だ。
ミチルさんの魔力で燃えないようにされている優れモノだ。
最近は、この姿になるのが快感になって来た。
私も、少しおかしくなったっぽいな。
私の姿を見て、反乱軍の男達が一斉に私に襲い掛かって来た。
勿論、暴力的な意味じゃなく性暴力的な意味合いでね。
でも、そんな男共に、
「ピシッ! パシッ! ペシッ!」
私は容赦なく鞭を入れていった。
しかも、今回のは一本鞭。当たるとムチャクチャ痛いヤツだ。
あっ! でも、相手が多過ぎて、このままじゃヤバイ。
私は、再び超高速稼働に切り替えて、男達に鞭を入れ、ケリを入れ、さらには踏み付けていった。
「おおっ!」
「ううっ!」
「ああっ!」
「イイッ!」
女王様に痛め付けられたり踏まれたりして喜びの声が上がって来たよ。
まったく、そんな嗜好を持っているヤツ等ばっかりなんだから。
そんなバトルを繰り広げて約十分ってところで、テントの中から一人の女性が面倒臭そうな顔をしながら出てきた。
しかも、裸Tシャツで出てきたよ。
いかにも、『今までHしてました!』って感じだね。
ただ、この女性の顔って、どこかで見覚えが……。
あっ!
思い出した。こいつ、やっぱり中学で同じクラスだったヤツ。晴れの日の温度変化を知らなかった真理香だ!
でも、向こうはこっちの状況を知らないはずだよね?
前世とは全然違う姿になっているし、私が篠原亜紀だって分からないはずだよね?
だったら他人の振りしておこう。
もし知られたら面倒だ……って私は思っていたんだけど、この女、私を見るなり、
「もしかして、アンタが篠原亜紀?」
って聞いて来たよ。
「えっ? そうだけど、なんで分かるの?」
「私をこっちの世界に連れてきた堕天使? たしかセフレなんとかってヤツ?」
「もしかしてラフレシア?」
「そうそう、それ!」
やっぱ、頭悪いな、コイツ。
『フ』と『レ』しか合ってないよ、それ。
「そのセフレなんとかがさあ、この世界に私の中学の時の同級生がいて、それが宿敵って聞いてさ。それで、誰って聞いたら、篠原亜紀って答えてさ」
さっそくラフレシアって名前を忘れ去ったよ。
仮にも、オマエにチートな能力を授けてくれた相手だろ!
それを忘れるって、どれだけ失礼なヤツなんだ。正直、ラフレシアが凄く可哀そうになって来たよ。
まあ、今は、普通に会話をしておこう。
「それで分かったんだ、私のこと」
「でもさ。篠原亜紀って聞いて、『そんなのいたっけ?』って思っちゃってさ。全然覚えてないの」
「……」
なんか、随分腹立つな。
でも、私もユキの名前を憶えていなかったし、他人のことは言えないけど。
「ほら。私って記憶力は悪くないんだけどさ、影が薄いヤツのことは全然記憶になくて」
いやいや、ソッコーで思い切り影が濃いラフレシアの名前を忘れているじゃん。
半端なく記憶力悪いよ、アンタ。
「私はマリカのこと、憶えていたけどね」
「そうなんだ。やっぱ。私って存在感あるからさ!」
いやいや、アホ過ぎて覚えていたんだよ。
晴れの日の温度変化の話が無かったら、多分、私だってアンタのことを覚えてなかったと思うよ。
アンタも、その程度の存在感だったってことだ!
「あの堕天使には感謝してるよ。この世界じゃ、凄い魔法が使い放題だし、男とはHし放題だし。だから、元同級生相手でも、私は容赦しないよ。ここでの性生活を守るためにね!」
守るのは生活じゃなくて性生活なんだ。
まあ、イイケド。
「私だって、この世界での生活を守りたい。だから、マリカが相手でも全力で行くよ」
「そうこなくっちゃ。じゃあ、行くよ!」
そう言うと、マリカは、いきなりムチャクチャ巨大な火炎球を作り出して私目掛けて投げつけてきた。
これを、私は超高速稼働で避けたけど……。
地面に火炎球が通った跡が残っているよ。
まるで、直径十メートルにも及ぶ超巨大な大蛇が這って行ったように見える。
もしかして、ここに元からあった大蛇が這った跡みたいなのって、マリカが火炎球を放った跡だったってこと?
だとすると、多分、マリカの超巨大火炎球を見せ付けられて、ラージェスト王国軍もアデレー王国の援軍も敵前逃亡したってことだね。
ラヤの時と合わせて、これで敵前逃亡は二回目だけど、まあ、仕方が無い気がするよ。
さすがに生きていてナンボだもんね。
しかも、その火炎球は、そのまま消えることなく突き進んで行き、山にぶつかると、
「ドゴン!」
と大きな音を立てた。
これは、下手をするとトンネルが出来ているかもね?
「うまく避けたね。なら、これでどうだ!」
マリカが、二発目の火炎球を放って来た。
さっきよりは小さ目だけど、スピードは、今回のヤツの方が早い。
「転移!」
私は、これを転移魔法で避けた。
まあ、転移って言っても、百メートルくらい移動しだけだよ。
さらにマリカは、
「てぇぃ!」
三発目、四発目と火炎球を放って来た。
これを私は避けたけど、その直後、マリカは私の背後に転移して来て、
「死ね!」
至近距離で私に火炎球を撃ち込んだ。
これは、さすがに避けられない。
私は、マリカの強烈な火炎魔法をまともに食らってしまった。
取扱説明書:アキ-108号の強化魔法は、火炎魔法には耐えられません。
そう……。
私は、これで一気に燃え上がり、形すら残らず消し飛ぶはずだった。
…
…
…
でも、それは、飽くまでもデフォルトの私だった場合の話だ。
今はミチルさん……つまりレッドドラゴンの血を浴びて、私の強化魔法は、格段にレベルが上がっていた。
強化された強化魔法……。なんか、くどいな。
まあ、イイか。
とにかく、私は無傷だった。
正直、ここまで凄いレベルアップだったとは、自分でも驚いたけどね。
ただ、私以上に驚いているヤツがいた。
誰がって、マリカだよ。
彼女は、多分、これで私に打ち勝ったと思っただろう。
それが空振りに終わり、唖然とした表情をしていた。
またペースを落とします。




