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4.野菜と果物以外も需要がありそう!

 その宿では、夕飯は食堂ではなく各部屋で食べる。程よい時間に、私の部屋に夕食が運ばれてきた。

 いきなりTボーンステーキって、とても豪華なんですけど!

 ワインもおいしい。


 宿泊料が高いのは、食事がイイからなのかな?

 これには私も大満足だった。



 取扱説明書:アキ‐108号は、使用者が一緒に食事を楽しめるよう、飲食機能が付いております。なお、食に関しての好き嫌いはありません。



 最後にデザートが運ばれてきた。

 運んできたのは屈強な身体をしたウエイター。

 ふと、私の目に飛び込んで来たのは、彼の頬に付けられた、大きな傷だった。

 しかも、ザックリやった感じで、結構痛そうだ。


「どうしたんですか、その傷?」

「これは、髭を剃る時にナイフでやっちゃって」

「シェイバーとか使わないんですか?」

「えっ? シェイバーって?」

「髭を剃る道具ですけど」

「へっ?」


 会話が噛み合わない。

 どうやら、この世界ではナイフで髭を剃るのが一般的で、地球のように髭剃り専用の道具と言うモノは存在しないようだ。

 私は、そのウエイターに見えないように、こっそり魔法で石鹸と髭剃りを出した。


「これを使ってください。これなら、もっと安全に髭が剃れると思いますので」

「は……はぁ」

 ただ、ウエイターは髭剃りを渡されてもピンと来ていない様子だった。


 …

 …

 …


 翌朝。

 朝食は夕食と違って食堂でのバイキング形式だった。

 なんだか、男性客が私を見る目付きがイヤラシイ。それに何故か、みんな朝っぱっから前屈みになっていたよ。


 対する女性客は、思い切り私を敵視しているっぽい。ムチャクチャ強烈に睨んでいるし!

 でも、なんで?


 ふと、自分のステータス画面の『ある数字』が私の目に飛び込んできた。

「(えっ? HPが2,000,000/2,000,000に戻ってる?)」

 私が心の中でそう叫ぶと、取扱説明書のページが開いた。

 くどいようだけど、HPはヒットポイントじゃなくてハレンチパワーだからね!



 取扱説明書:アキ-108号は、寝て起きるとHPが初期値(2,000,000/2,000,000)に戻ります。



 そう言うことか。

 私は、慌ててHPを70まで下げた。


 私が座った席の近くに、昨日のウエイターがいた。

 彼が、私に気付いた。

 まあ、今まで強大なHPに晒されて正気じゃなかったんで、キチンと認識できていなかったってとこかな?


「昨日は有難うございます。あのシェイバーって便利ですね。初めて使いましたけど、どこで売っているんですか?」


 そうか。

 たしかに、この世界じゃ売っていないもんね。

 じゃあ私の店で売ることにするか。八百屋で売るものじゃないけど。


「私、これから店を開こうと思っているんですけど、そこで販売します」

「そうですか。じゃあ、オープンしたら買いに行きます」

「お待ちしてます」


 前の世界では、ありふれたモノでも、こっちの世界では珍しい便利グッズってとこなんだろうね。

 少し、店で売るモノを考え直そう。

 八百屋主体でも、別のモノを売っちゃいけないわけじゃないよね?



 食事を終えると、私は受付の女性に声をかけられた。

「アキ様ですね?」

「はい」


 ただ、やっぱり目付きがキツイ。

 昨日と同じで思い切り睨まれているよ。


 その女性のステータス画面が見えた。

 どうやら私は、他人のステータスを覗くことができるようだ。


 HPは10/35となっていた。HPが低いなぁ。これが普通なのかな?

 って言うか、彼女がHPを最大値にしたところで、今の私に適わないってことだよね?

 言い換えると、この女性が全裸になったところで、服を着た今の私にエロさで敵わないってことになるんだよね?

 そりゃあ、敵視するわ。


「面会の方がいらしてます」

「はい?」

 いったい誰だろう?



 ロビーに行くと、そこには昨日自殺しようとしていた男性と、付き添いの女性がいた。

 その女性は、多分、その男性の奥様なのだろう。私が視界に入った途端、彼女は男性の腕を掴んで、べったりとくっついた。


 私を警戒しているっぽい。

 多分、Hな意味で。


 しかも、受付の女性と同じで、私を見る目付きがムチャクチャキツイ。

 思い切り敵視しているのが良く分かるよ。


 その女性のステータス画面も見えた。

 やっぱりHPは8/32か。

 もしかしてHPが最大値70ある人ですら珍しいってこと?

 ってことは、一応、私は数値をセーブしたつもりだったけど、まだまだ朝からエロ過ぎるってことか。


 私は、急いでHPを下げた。

 でも、50までしか下がらなかった。



 取扱説明書:アキ-108号のHP下限は50です。



 そうですか。

 まだまだ、これじゃ奥様に睨まれたままだよ。朝からエロ全開に見えるんだろうね。

 それどころか、私がエロを最小限に抑えても、服を着た状態でHP50だからね。受付の女性と同じで、この奥様の全裸よりも、今の服を着た私の方がエロエロだってことなんだよね、きっと。

 男性のほうは鼻の下が少し伸びているように見えるし……。


「昨日は、薬をいただき有難うございました。私はテラと申します。随分と精神的に楽になりました。あの薬のお陰だと思います」


 それにしても、これから今日のお仕事があるでしょうに。

 わざわざ朝一番でお礼を言うために、私を尋ねてきてくれたんだ。そんなの、後回しでも良かったのにね。


「そうですか。良かったです」

「それで、薬の代金なのですが」

「別にイイですよ」

「そう言うわけには行きません。高価な薬なのでしょう? それと、どこで売っているか教えていただけませんか?」


 なるほど。この薬も必要としてくれる人がいるんだね。

 じゃあ、これも店で取り扱いますか。


「今回の分のお代は不要です。あと、薬は私の店で販売しようと思っています」

「お店を経営されているのですか?」

「これから、この街で開こうと思っております」

「では、そこに買いに伺います」


 すると、付き添いの女性が、

「ちょっと、うちの亭主にちょっかい出さないでよね!」

 と怖い声を出した。


 私って、そんな女に見えるのかなぁ……。

 うーん、見えるんだろうなぁ。

 HP高いし。

 それに、もともとの定義が、Hなことをするためだけに作られた自立型の性なる魔道具だもんね。


「別にちょっかいだなんて……」

「そうやって亭主を家に誘い込もうって魂胆なんでしょ?」


 そこまで言うか。

 やっぱり私が、テラさんにH目的で近付いているとしか思われていないんだろうね?


「そんなことしません。もし不安でしたら、奥様に買いに来ていただければよろしいかと思います」

「そうね。そうさせていただくわ!」

「それから、昨日、お二人はHなことは?」

「なんで、アナタにそんなことを答えなくてはならないんですか?」

「実は、あの薬は遅くなる効果がありまして……」

「!!!」


 黙り込んじゃった。

 多分、効果はあったってことかな?

 まあ、追々聞くようにしよう。


「お店は、何処に出すか決まっているんでしょうか?」

 奥さんと違って、テラさんは口調が穏やかだ。


「今日、これから探そうと思っています」

「そうですか。ここから北に200メートルくらい行ったところに知人の不動産屋がありますので、是非、そこをお尋ねください」

「有難うございます」

「では、私は仕事がありますので、これで失礼します」


 テラさんは、会釈をすると宿を後にした。

 奥さんの方はムチャクチャ機嫌が悪いままだったけど……。



 私は少し時間を置いてから紹介された不動産屋を訪ねた。

 別に部屋にこもって、一人で変なことをして時間を潰していたわけじゃないからね!

 テラさんに会った直後に行っても、まだ朝早くて不動産屋さんが開いていないんじゃないかって思ったからだよ!


 そして、不動産屋に到着。

 私は、そのまま不動産屋に入った。


「あのう、テラさんに紹介されて来たのですが」

「話は伺っています。それにしても、聞いていたとおり……」


 店主は中年男性。やっぱり、私に向けられた視線がイヤラシく感じる。

 HPは50から上げていないんだけどなぁ。最大出力にしたら、絶対に危ないよね?


「ええと、お股を開くそうですが?」

「はっ?」

「失礼。間違えました。お店を開くそうですが?」


 うーん、ヒドい間違え方だなぁ。

 結局のところ、そんな女にしか見えないってことなんだろうなぁ。


「はい」

「薬の販売と聞いていますが」

「いいえ。薬は1~2種類だけで、メインは八百屋にしようと思っています」

「八百屋?」

「はい。あと、テナントと住居が両方必要でして」

「ではテナント付きの住居ですね?」

「はい」

「お望みはチン〇ンですか?」

「は?」

「あっ、間違えました。賃貸ですか?」


 もう、お約束みたいな間違え方して……。

 まったく、頭の中がピンク色なんだから。

 まあ、そうさせているのは私の高HPなんだろうけど……。


「はい、今のところは……」

「そうですか。となると、候補になるのは、この二つですね」


 店主が物件の資料を見せてくれた。

 片方は街の中心近く。

 立地条件はイイけど、やっぱり賃貸料は高いし狭い。


 もう片方は安いけど街の外れの方。

 スペースは広めだ。

 私は、それらの物件を実際に見せてもらうことにした。

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