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32.帰還!

 私は、

「服、出ろ!」

 物質創製魔法で無難な服を出すと、急いで身に着けた。勿論、私はどんな服でも似合う自信がある。

 これでエロばかりを期待する罵声は消えるだろうと私は思っていた。



 ところが、不満な顔をする野郎が何人か……と言うか何人もいる。

 しかも、

「服が邪魔だ!」

「脱げ!」

「お前は肌出してなんぼだろ?」

 との罵声が飛んで来た。


 なんだか余計に言うことが酷くなっている感じがするんだけど……。

 まあ、そんなことを言うのは特定の人間だけだと思うけどさ。



 一部のHな男性を除いて、基本的に、みんな、魔王との戦いがどうなったか気になっていると思う。

 そう信じたい。


 まあ、私達が無事に戻ってきたわけだから、少なくとも魔王に殺されたってことだけは無い。それは見て分かるだろう。

 あとは、勝って戻ってきたか、負けて降伏して戻されたかだけど、それも私達の表情を見れば普通の人達なら分かるだろう。



 私は、

「魔王ジローヌは死にました。もう、魔王ジローヌに搾取されることも姿を変えられることもありません」

 と声を大にして報告した。


 これを聞いて、

「やったー!」

「ザマミロ魔王!」

「これで平和が戻った!」

「万歳! 万歳! 万々歳!」

 と歓喜溢れる普通の島民達。


 これが一般的な反応だよ。

 この場でHなことしか言ってこないような連中は、間違いなく不謹慎だし、感性がおかしいよね?



 まあ、何はともあれ、彼らにとっての歴史的大事件は、これで幕を閉じたと言ってイイだろう。

 まさか魔王が突然空から降りて来て、人々を奇怪な食虫植物の姿に変えちゃうなんて、想像もしていなかっただろうからね。



 あとは、魔王に囚われて……と言うか囲われていた三人娘をどうするかだけど、そこは私の管轄外にさせてもらうからね!


 面倒事は絶対にイヤだからね!

 その辺は、私はノータッチにするからね!



 まあ、なんとなくだけど、この後、そのデブス三人娘達は、確実に村八分にされそうな気もするんだよね。

 みんなが魔王に植物にされた後、魔王にみんなを元に戻すように懇願したとかがあれば誰も責めてこないかも知れないけどさ。


 でも、私が霊視した限りだと、むしろ、

『美女が消えてラッキー!』

 って口に出しながら魔王との性生活を楽しんでいたっぽいからね。



 取扱説明書:アキ-108号は、精神を集中すると、見ただけで相手のHの履歴を霊視できます。いつ頃に何人とやっているかを全て見抜きます。



 取扱説明書:どんなプレイをしたかも分かります。



 そうは言っても、村八分は、ちょっと可哀そうな気もするけどさ……。

 今は、そうならないことを私は祈ることにするよ。



 と言うわけで魔王討伐完了!

 ってことで、ここから大宴会に突入……と言いたいところだけど、みんな、一昨日、植物から人間の姿に戻ったばかり。


 今まで人としての活動が、島全体で完全に止まっていたからね。

 自分達の食糧さえ入手が困難な状態だ。


 なので、

「出ろ!」

 私は、持ち前の物質創製魔法で、毎度の野菜やフルーツ、飲料を島民達のために大量に出してあげた。


 別に、これで宴会をしようなんて考えてないからね!

 普通に配給しただけだからね!



 これで、この島での私の使命は終わったはず。

 なので、私は、

「では、私とミチルさんは、これで戻ります」

 と言って転移魔法を使って、さっさとビナタの町に戻ろうとしたんだ。


 ところが、

「私も連れて行ってください!」

 と言いながらパラスがミチルさんの右腕を思い切り掴んでいた。

 これは、もう逃がさないよ的な感じだね。


 さらに、

「私も!」

 何故か、ヴァナディスが私の腕を両手でガッチリと押さえていた。

 この女、私についてくる気だよ。



 まあ、パラスはミチルさんとイイ男女の仲になってしまったみたいだし、分からないでもないけどね。


 あと、どっちかって言うと、ニオベの方が私に付いてきそうな感じに思っていたんだけど、ニオベは普通にこの島に残るつもりっぽい。

 どうやら、好きな男子がこの島にいる感じだ。



 だけど、なんでヴァナディスまで?

 何気にパラスがイヤな顔をしているよ。パラスはHP70以上の女性をもの凄く敵視しているからね。

 まあ、ヴァナディスの方はパラスの視線を気にしていないみたいだけど。


 そして、

「あのお酒が飲みたいし!」

 とヴァナディスの一言。


 どうやら彼女のお目当ては、ホストと遊ぶ時に飲む値段が高いスパークリングワインのようだ。

 私のところに来れば、それが毎日タダで飲めると思っているのかな?

「……」

 思わず絶句した私。



 まあ、ヴァナディスなら男女問わず客受けがイイからね。

 店を手伝ってもらえる分には助かるんだけどさ……。


 ただ、私についてきたい理由が軽過ぎないか?

 それに家族が心配しないか?


 なので、私は、

「せっかく島に戻れたんだし、島を離れたら家族が悲しむんじゃない?」

 って言ったんだけど、そうしたら、

「家族には昨日話しました。問題ありません!」

「私もです。許可をもらっています!」

 って即答だよ……。


 うーん。

 二人とも既に家族の了承を得ていたっぽい。


 それどころか、家族の方も、

「是非行ってきな!」

「これで食い扶持が減る!」

 ってな感じで、むしろ賛成派だ。

 追い出したいのかな?


 これは、ダメだって言っても絶対に自力でビナタまで来そうだね。

 むしろ、そうなった方が危ないか。

 高HP娘の旅なんて、絶対に野郎共の餌食にされるもん。

 特にヴァナディス。

 こんな美人じゃ、ビナタに到着するまでに何処かに売り飛ばされる。


 だったら仕方が無いか。

 彼女達の安全のためには、連れて行ってあげるしか選択肢はなさそうだ。



 と言うわけで、私はミチルさんとパラス、ヴァナディスを連れて、連続転移魔法でビナタの町へと向かうことになった。

 勿論、連続転移魔法を何回も使ったけどね。


 陸路だけじゃないから大変だったよ。

 ディスプロシ島から大陸に入るまでは海上に出るわけだからさ。


 なので、まずイカダを作って、その上に乗っての連続転移になった。

 大陸に入ってからは、アイテムボックスの中にイカダをしまったけどね。陸路しかないのにイカダに乗っているのは滑稽だもん。


 途中でパラスもヴァナディスも気持ち悪くなったみたいだけど、そっちが勝手に付いてきたんだからね!

 そんなこと知ったことかい!



 一応、その日のうちに私達は、無事にアデレー王国ビナタ町に入った。

 そして、ミチルさんとパラスをミチルさん宅に送り届けると、私はヴァナディスを連れて自分の家へと戻った。


 もう、美女がゲロゲロで凄惨な姿に変わっていたけど。

 ただ、今回はミチルさんも珍しく辛そうな顔をしていたけどね。


 …

 …

 …


 翌朝。

「戻ってきたんだ」

「まあ、無事に魔王をやっつけましたし」

「アキちゃんじゃなくてヴァナディスちゃんのほう!」

「えっ?」

「ヴァナディスちゃんも戻ってきたの!」

「やった! ヴァナディスちゃんが来た!」

「今日は宴会だ!」

「ヴァナディスちゃん最高!」


 店を開けると、なんだか野郎共は私の無事とか魔王を倒したことじゃなくて、ヴァナディスがビナタの町に再び来たことを妙に喜んでいた。


 まあ、美人ちゃんだからね。

 分かる気はするよ。

 でも、私の方が高HPなんだけどね!



 いやいやいや。

 違うだろ!

 その前に魔王との戦いのことを聞くべきだろ!

 なんか、こいつら、私の扱いが悪くなっていないか?



 この日の昼に、私はヴァナディスに店を任せて、ミチルさんと一緒にお城へと向かった。

 そして、国王陛下にディスプロシ島の件の結果報告と、ディスプロシ島に行く時にフロギスを貸していただけたことのお礼を申し上げた。


 できれば帰りもフロギスにお願いしたかったんだけどね。

 そうすれば、連続転移じゃなくて、一気にビナタまで戻って来られたと思うからさ。


 別に私自身は問題ないんだけどさ、連続転移魔法を何回も使うんだと、今回は珍しくミチルさんが辛そうだったからさ。

 多分、沼尾と顔を合わせたストレスがあったからだろうね。

 以前は、ミチルさんを連れて連続転移を連発しても問題無かったから。



 ヴァナディスとパラスは、ゲロゲロになろうがゲリゲリになろうが、そんなのは、どうでもイイけど。

 ちょっと今は、ヴァナディスにムカついているからさ。

 町のヤツ等、ヴァナディスが来たことばかり喜びやがって!



 国王陛下への謁見の後、そこからリンドラー公爵家へと移動して、同様に結果報告とお礼を述べさせていただいた。

 国王陛下にお願いする際に、仲介役として入っていただいたからね。



 でも、もう、こっちの世界に来て二年近くが経ったのか。

 早いものだ。

 これで私は、再び平和な生活に戻るはず……。

 だとイイんだけどな。


 でも、多分、また一波乱あるんだろうな。

 やっぱり気になるよ。ラフレシアの言葉が。

『面白い転移者を用意しておく』

 って、ラヤとか魔王よりも、もっと変なのを連れてくるってこと?


 しかも、それと私を戦わせようって話?

 それをマトモに考えるとドンドン憂鬱になるな。

 今は、その辺のことは何も考えないことにしよう!

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