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31.ラフレシア現る!

 実は、昨夜、私が自分の身体を修復した後、ミチルさんが話してくれたんだ。前世で起きた出来事をね……。


 …

 …

 …


 沼尾は、私の一つ上の代。でも、少なくとも私はコイツのことを死んでも先輩とは言いたくない。

 まあ、既に一回、死んだけどさ。


 そいつの教育係に、たまたまかも知れないけどミチルさんが付くことになった。

 でも、ミチルさんが、

「電話の応対は敬語を使って」

 と沼尾の野郎を注意すれば、

「そう言うこと自体がパワハラだよね!」

 と言い返してくるだけで注意を受け入れず、

「報告書の提出は早くね」

 と指導すれば、

「そんな、いちいち細かいことを言うのはパワハラだよ!」

 と言われ……って訳分かんないよ、これ。



 別にミチルさんは、全然間違ったこと言っていないよね?

 それと、沼尾のヤツ、ミチルさんへの言葉遣いが悪くないか?



 それで、仕事でトラブルが発生すれば、

「ちゃんと見てくれていないからだろ! 宇都宮のせいだ!」

 と責任転嫁され……。

 まあ、この被害には私もあったけどさ……。


 さらに、

「この文書、ダブルチェックしたいからチェックをお願い」

 って仕事を依頼すれば、

「そんなの俺がやらなくてもイイじゃん! 押し付けはパワハラだろ!」

 って言われ、とにかくやることなすこと全てパワハラに置き換えられた。



 別にミチルさんは高圧的じゃないし、むしろ言い方は優しいよ。言っていることも正しいし。

 なのに、何か言えば全部パワハラにされる。

 これって異常だよね?

 むしろ、完全な逆パワハラだよ。


 で、結局、コイツは仕事中にネットサーフィンして遊んでいただけだし、仕事の方はミチルさんの負荷が増えただけ。



 しかも、そこに馬鹿な上司が、

「教育が巧くできていないみたいだねえ。取引先から苦情が出ているよ。これは、君のせいだからね!」

 とか言って来たらしい。


 状況を説明しても、その馬鹿上司は取り合ってくれなかったし、

「それは、君のやり方が悪いんだろう!」

 の一言で一蹴されたって。


 さらに、その上司からは、

「沼尾君から私に、君からパワハラを受けているとの訴えがあってね」

 とも言われたらしい。

 これって、完全に冤罪だよね?



 それで、ミチルさんは身も心も疲弊して、逃げ場も失って……。

 もともとブラックな会社だったから、身も心休まる暇がなく、ドンドン心身ともに病んで行ったんだ……。


 そして、最終的に自殺に追い込まれた。

 ある意味、そんな状態で一年半以上も、良く頑張ってミチルさんは生き続けたよ。


 …

 …

 …


 なので、ミチルさん個人としては、魔王をおろし金で全身をすりおろしてやりたいくらいの気持ちだろう。

 それも、56億7,000万回くらい!

 って、そこまで過激なことを考えるのは私くらいか。



 とは言ってもね。結局、コイツを殺したころで、それはミチルさんの……あと、せいぜい私の前世の恨みを晴らしただけ。


 勿論、この島の人達も相当魔王を恨んでいるけどね。

 それこそ殺したいレベルで。



 でも、第三者目線で見ると、コイツは、この世界で処刑されるほどの悪党だったのかって言うと微妙なのかも知れない。

 HPを根こそぎ奪ったことは、本来、処罰の対象だと思うけど、私の方で何とかフォローできたレベルのことだしさ。


 それでなんだと思う。

 魔王を仕留めるべきか否か、ミチルさんの心の中で葛藤が生じていたみたいなんだ。

 大人しくするなら、このまま見逃してやってもイイかってね。



 ところが、突然、空に閃光……稲光が走ったかと思うと、魔王は、その直撃を受けた。

 しかも、その稲妻が上から下じゃなくて、横に走ったよ。

 こんなことあるんだ!


 これはミチルさんの魔法じゃない。

 ミチルさん自身、唖然としていた。

 どうしてこうなったのか理由が分からないっぽい。


 勿論、私には、こんな魔法は使えないし、ニオベもパラスもユリも、こんな芸当はできない。

 言うまでもなくデブス三人娘もね。



 この稲妻攻撃を受けて魔王の身体は一気に燃え上がり、消し飛んでしまった。

 信じられないことだけど、骨すら残らなかったんだよ。感電だけじゃ済まなかったってことだね。


 つまり、強力な魔法を使える誰かが、意図的に魔王に稲妻を撃ち放ち、焼き殺したって言うか、この世界から消滅させたってことだろう。



 魔王の身体は、この世界から消えてしまったけど、地球に戻されたのか、それとも、この世界の悪人達が落ちる地獄に飛ばされたのかは分からない。

 骨も残っていないってことは、ドサクサ紛れに地球に戻されたって可能性も、ちょっとだけどあるだろう。

 それにしても、こんなこと、誰がやったんだ?


 すると、上空から、

「フハハハハハ」

 高笑いを発しながら、背中に三対、頭部に一対、両手足首に一枚ずつの計12枚の翼を持つ者がゆっくりと降りてきた。


 ただ、その者が持つ翼の色は、汚れ無き白からは程遠く、むしろ、カラスのように真っ黒で邪悪に満ちた雰囲気を強く放っていた。


「まさか、救世主に続いて魔王まで使い物にできなくするとはな」

 思わず私は、

「アンタ誰?」

 と聞いてしまった。


「我が名はラフレシア。元々は天使長を務めていた大天使のトップだったが、今では大天使から『い』が抜けて堕天使と呼ばれている」

「…………」


 はっ?

 何? そのギャグ。

 聞いていて疲れてくるよ。

 歳はいくつだ?

 まあ、人間が誕生するよりもずっと前から存在しているんだろうから、ムチャクチャ年寄りか?

 じゃあ、オヤジギャグでもしょうがないね?


「アンタが、この世界のサタンってとこね?」

「そうだ!」

「魔王は死んだの?」

「当然だ。魔王は、お前に屈服した以上、もはや、お前の許可なしでは何も出来ないはずだからな。それで燃やせるゴミとして処分してやった。今頃、地獄の一丁目に入ったところだろう」


 手下をいきなりゴミ扱いかよ。

 それに、地獄の一丁目とか、表現が古いねぇ。

 やっぱりオヤジだよ。


 まあ、それは置いといて。

 こいつが、ラヤと魔王を異世界召還した張本人ってことだよね。

 ってことは、今度は、コイツと戦うってことなのかな?


 私は、一瞬身構えた。

 一方の堕天使ラフレシアは、

「まさか、ラメラータが治める異世界から人ならざる者として転生者を呼び寄せるとはな。リニフローラも考えたものだ」

 と言いながら、私とミチルさんに鋭い視線を向けていた。

 ガンを飛ばすと言った方が正しいのかな?



 それに、ラフレシアは、少なくとも私とミチルさんの正体を知っているっぽい。

 まあ一応、大天使だからね。

 それくらいのことを見抜く力はあってもおかしくないよね。


 それからラメラータは地球の神様ね。

 人によっては女神様とも言うけどね。

 あとリニフローラは、このブルバレンと呼ばれる世界を治める女神様ね。



 ただ、ラフレシアからは、邪気とか敵意は思い切り感じるけど、だからと言って、いきなり攻撃してこよう的な雰囲気は一切感じられなかった。

 決して穏やかってわけじゃないけどさ。


 そして、ラフレシアは、

「私がお前達に直接手を下せば、リニフローラが私に攻撃を仕掛ける理由を与えてしまうだろう。なので、ここでお前達と戦う意思は私には無い。ただ、面白い転移者を用意しておく。楽しみにしているが良い!」

 と言うと、その場から一瞬で姿を消した。

 まるで、転移魔法か何かで瞬間移動でもしたかのように見えた。


 …

 …

 …


 一先ず、これでディスプロシ島は魔王から解放された。

 私は、

「転移!」

 ミチルさんとニオベ、パラス、ユリを連れて転移魔法で山を下りた。


 行き先はユリの家にしようかと思ったんだけど、

「集会所でしょ!」

 ってユリに言われた。

 まあ、たしかにそうか。

 そこで、私は一旦、状況報告を行うことになる。



 デブス三人娘は、悪いけど置いてきた。

 結局、囚われの身とは言いながらもさ、魔王との生活……と言うか性生活を楽しんでいたみたいだからね。

 どっちかって言うと囚われよりも囲われだもんね。

 各自、自力で下山してくれ。



 でもって集会所に到着。

 結構、ここに大勢の人達が集まっていた。

 私の姿が目に入ると、一斉に私の方に押しかけて来た。


「無事だったのね!」

「魔王は?」

「結局どうなったの?」

「俺と付き合ってくれ!」

「勝ったのか?」

「これで平和が戻ったのよね?」

「一晩いくら?」

「もう植物に変えられたりしねえよな!」

「一発ヤリたいんだけど」

「魔王は死んだんだよな!」

「Hしよう、H!」

「魔王、ざまぁ!」

「抜いてくれんか?」


 なんか、ドサクサ紛れで変なことを言っているヤツがいるけど……。

 それどころか、変なことを言う頻度が少しずつ上がっている気がするんだけど?


 結局、私はそういう存在でしか見られないってことなのか?

 いやいやいや。きっと、この格好がいけないんだ。

 布面積が非常に少ない水着しか着ていないからね。

 ほぼ紐だし。


 ビナタの町の男共が選んだ戦闘服(?)は、完全にエロ一色だからさ。

 この上にチャンとした服を着れば、普通に接してくれるようになるよ、うん。

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