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178.発症!

「どういうことですか? 教祖様」



 こう聞いたのはタイシ。

 どんな男性でも先ずは味見したがるマリカが、新顔のシトルを拒絶するなど、通常では考えられない。



「理由は二つ。一つ目は、コイツが入信後も転移魔法で島を抜け出して、私以外の女性との交渉を考えていることだ」


「しかし、そう言う男性にも試し打ちだけはさせていたではありませんか?」


「まあ、それは確かにそうだけど……。私の経験値が上がるし……」


「ですよねぇ」


「でも、通常は私のHPを受け続けることで他の女性に興味を無くすはずなんだけど、コイツは、そうならない」


「それで、信者としての資質がないと言うことですか?」



 マリカ教徒は、マリカ以外の女性を相手にするのは御法度である。

 マイのような例外もあるが、通常は、浮気をした途端に信者としての地位を失う。


 勿論、マリカ以外の女性には手を出していないと嘘をつく者もいるが、マリカのステータス覗き見スキルで、浮気は簡単にバレる。

 なので、信者達はHP最大開放状態のアキやマナミにも手を出さないよう、必死に耐えていたのだ。



「まあな」


「でも、味見くらいはするかと思いましたが?」


「普通であればね。なので、ナニもさせずに門前払いする理由としては小さい。問題は、ソイツが凶悪な性病にかかっていると言うことだ」


「性病ですか? しかし、性病でしたら教祖様のお力で直せるのではないですか?」



 マリカは、基本的にアキと同様の仕様である。

 なので、通常であれば彼女の治癒魔法で性病を治すことが可能である。

 故に、性病持ちでも安心して信者になれるし、入信後、すぐに治療を受けてソッコーで修行に入ることが可能なのだ。


 それに、マリカの体内は、使用者の安全確保のため、使用直後に必ず殺菌処理されることになっていた。

 そのため、通常であれば、次の人が使う前に菌は死滅し、マリカを介して菌が他の信者にうつることは無い。


 しかし、順番待ちが長いため、使用している信者の発射後、次の番の信者が大急ぎで挿入することは当然ある。

 その際、殺菌が不十分の状態であるケースが、万が一だがあり得る。


 しかも、シトルが感染しているのは多術式耐性淋菌。

 これがマリカ経由で他の信者にうつってしまっては、マリカとしては大打撃なのだ。


 勿論、多術式耐性淋菌感染症を治せれば、マリカだって味見くらいはするだろう。

 しかし、アキ達と違って薬での治療までマリカは頭が回っていなかった。



「いや、コイツが持っている菌は特別でね。私には治す術がない」


「えっ?」


「タイシも、他の信者達も私には大切な家族だからね。万が一にも、お前等に凶悪な性病をうつされちゃ困るんだよ。なので、その病気を治してから出直してきな。もっとも、その多術式耐性淋菌感染症を治せたらの話だがな」


「性病? 俺が?」



 シトル自身、この時点では特に症状は無く、感染しているとの自覚はなかった。

 それに、

『自分だけは大丈夫!』

 と言う根拠のない自信を持っていた。

 なので、彼には自分が多術式耐性淋菌に感染しているなど、到底信じられなかった。



「と言うわけで、お前達、この男をこの建物から追い出すように!」



 マリカの命令で、信者達はシトルを捕らえると建物の外に連れ出した。

 そして、転移魔法が使える信者がシトルを連れてウンカ公国の町エレクタまで転移した。


 ただ、この信者は、さっきまでマリカと修行していた。

 当然だが裸である。


 さすがに町中でストリーキングはマズイ。

 なので、その信者はシトルをエレクタに置いて、さっさと転移魔法でランゲルハンス島へと戻っていった。



「なんだ、あの女。俺が性病なんて、有り得ねえ」



 シトルが悪態をつきながら、そう言い放った直後だった。

 彼は尿意を催し、裏路地に入った。

 そして、用を足すと、激しい排尿痛が彼を襲った。しかも、膿が出ている。



「マジか、これ?」



 間違いない。

 これは淋病の症状だ。


 しかし、彼は治癒魔法が使えないし、淋菌感染したままHするのはマズイ。

 仕方なく、彼は近くの医院に駆け込んだ。



 …

 …

 …



 私、アキが多術式耐性淋菌感染症の治療を終えて、数分した頃のことだ。

 この医院の院長と担当の男性医師が病室に入ってきた。


 二人とも、私とマナミの姿を見た直後、一瞬だけど固まった。

 多分、私達が魔導師に作られた存在であることを知ったのだろう。


 しかし、彼等は表情を取り繕うと、まるで何事もなかったかのように振る舞って見せてくれたよ。


 そして、患者二人を見ると、再び院長達は固まった。

 診断魔法で、患者達の体内の多術式耐性淋菌が、少しずつだけど確実に減ってきているのを知って驚いたようだ。



「ロスバ。お前が治療したのか?」



 こう言ったのは院長。

 ちなみにロスバはスタチンさんの名前ね。

 スタチンは名字なんだよ。



「いえ。治療したのは私ではなく、この二人です」


「この二人が?」


「はい。特殊なポーションを肘の静脈内に少しずつ物質転送させたんです」



 少しずつって言っても、地球での点滴速度と比べれば、かなりハイペースだけどね。

 でも、スタチンさんは、それを知らないし、コッチの感性では二~三分の超ハイスピード点滴も少しずつってなるわけだ。



「特殊なポーション?」


「はい」


「飲むんじゃなくて?」



 すると、これにマナミが答えてくれた。

 さすがに、セフトリアキソンのことを色々聞かれても、スタチンさんには答えきれないだろう。

 その辺を読んでのことだ。



「今回のポーションの場合、治療成分をキチンと感染部位に届けるためには血管内への転送が必要なんです」


「飲ませたのでは効かないと言うことなのか?」


「ええ、多分」


「しかし、静脈内転送か」


「はい。二~三分くらいかけて行いますし、同時に特殊ポーションの成分による副作用が発生しないように治癒魔法を同時平行する必要があります」


「副作用?」



 まあ、普通のポーションなら副作用は無い……だろうからね。

 その異世界にもよると思うけど……。


 でも、これはポーションとは違う抗菌薬だ。

 当然、副作用もある。



「そうです。なので、多術式耐性菌に効くだけではなく、副作用が発生し得ることも含めて特殊だと思ってください」


「なるほど。それで、そのポーションは何処で入手したのかね?」



 こう聞かれて、マナミは一瞬だけど私の方をチラッと見た。

 何となくだけど、コッチに面倒を押しつけられそうな予感がしたよ。



「ビナタの町のアキの店で購入可能です。受注生産になりますが」


「アキ? では、君があの?」



 やっぱり、コッチに振ってきたか。

 ただ、『あの』ってことは、もしかしてスタチンさんが私の個人情報を流しているとか?

 まあ、医師同士でしかも親子だし、それは有り得る話しか。

 ……と一瞬思ったけど……。



「フリョロフ島の件とか、旧ノーソラムの件とか、噂は兼々。まさか、こんな美しい女性だったとは知りませんでした」



 そっちで名前が知れ渡っていたか。

 顔出しも名出しもNGだって各国のおエロい……じゃなくて、お偉いさん達には言ってあるけど、どうしても情報って漏れるからね。

 名前だけは一部でバレているってことだろう。

 まあ、仕方が無いんだろうけど。



「自己紹介が遅れました。私は院長のアトルバ。それから、これが、この患者二人の担当医師で私の息子のセリバです。ロスバの兄になります」


「ビナタ町のアキです。スタチンさんにはお世話になっています」


「こちらこそ、いつもロスバがお世話になっているようで。それと、こちらの女性は?」


「私の友人でディスプロシ島のマナミです」


「えっ? もしかしてディスプロシ島開発の?」



 これには、アトルバもセリバも驚いていたよ。

 私の名前を聞いた時以上だ。


 ディスプロシ島開発のお陰で、今ではシリバスから転移ゲート経由で南の大陸まで行けるようになったからね。

 当然、シリバスとしても、その恩恵は大きいと思う。

 マナミは、ディスプロシ島開発トップツーの片方だし、シリバスに暮らす彼等が驚いて当然だろう。



「はい、ディスプロシ島のマナミです。アキとは古くからの付き合いで、住んでいる処も普段の仕事も別ですけど、何かあった時には協力することが多いです」


「そうでしたか。で、お二人とも、ちょっとよろしいですかな。あと、ロスバも。セリバ達は患者の様子を見ていてくれ」



 病室には、患者二人は勿論、スタチンさんの兄セリバと、看護師の男性を残し、私とマナミ、スタチンさんはアトルバ院長に連れられて院長室に移動した。

 さすがに、ここからは患者達の前ですべき話しではないとの判断なのだろう。

ロスバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン……

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>ロスバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン……  一つ一つ検索。  …………ああ、全部コレステロール系のお薬。
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