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153.永久機関!

「アキ。その録音機器を売ってもらえないかしら?」


「構いませんけど、ただ、定期的に電池を交換する必要があります」


「電池?」


「つまり、この魔道具を動かすための専用のエネルギー源ってところです」


「魔石みたいなモノね」



 魔石って言葉自体、この世界に来て初耳な気がするんだけど?

 もしかして、この世界って魔石があったの?

 ちょっと驚いたよ。

 たしかに異世界だから、あっても不思議じゃないけど。



「ま……まあ、そんなところです」


「で、その電池って言うのは、アキのところで買えるの?」


「はい、買えます。まあ、魔石ほど高くは無いと思いますけど」


「そりゃあそうでしょう。本当に魔石があったら、いくらの値になるか分からないし」


「えっ? 魔石って無いんですか?」


「この世界には、創作物の中でしか出てこないけど……。もしかして、アキが元居た世界にはあったの?」


「いいえ、私がいた世界でも創作物の中にしかありませんでした。魔獣の体内にあるとか、そんな話だったような……」



 この世界への淡い期待が瞬時に失せたよ。

 ラノベで、魔石があれば永久機関が作れるみたいな話ってたまにあるじゃん?

 なので、ここでも永久機関が作れたりしないかなって勝手に想像しちゃったからさ。



 取扱説明書:アキ-108号はHの永久機関です。



「まあ、魔石なんて夢の話よね? で、話を戻すけど、録音機器二台と、電池って言うのを幾つかお願いできるかしら?」


「分かりました。もしかして、一台は王家への献上ですか?」


「実を言うと、国王陛下が興味津々でね」


「そうですか……」



 そりゃあ、この世界の人間からすれば魔法の箱だからね。

 興味があって当たり前か。



「で、値段なんだけど、取り敢えず1セット当たり金貨1枚でどうかしら?」



 つまり、

『マイク&電池付きで、一台十万円でどう?』

 ってことか。


 まあ、タダで作り出せる私にとっては悪い話じゃない。

 本当は、この世界にとってMDラジカセはオーパーツだから、金貨1枚じゃ激安なんだろうけど。



「はい。では、1セット金貨1枚でお願いします。あと、録音したデータは、このMDに入ります。ですので、MD毎に違うモノを録音できます」


「じゃあ、公爵専用MDと私専用のMDで分けることが出来るってこと?」


「そうです。あと、MDには容量……つまり、録音できるデータ量の上限があります」


「まあ、無尽蔵ってわけには行かないってことね。じゃあ、MDも二台分と言うことで合わせて二十個ほどオマケで付けてもらえるかしら?」



 つまり、MD二十枚はタダで頂戴ってこと?

 別にイイけどさ……。原材料費はタダだから。



「承知しました。今回だけ、オマケで付けておきます」


「いつも有難うね」



 そして、私は公爵夫人の要望通りMDを二十枚出したけど……。

 先ず、これらの中に入っているエロイ曲を消さないとイケナイ。

 エロい曲入りじゃないと出せないからね。


 私は、MDを一枚一枚、MDラジカセに入れては中の曲を消去した。

 地味に面倒だよ、これ。



「アキ。何してるの?」


「中に入っている曲を消しているんです」


「曲が入ってるの? ちょっと聞いてみたいんだけど……と言うか聞かせて!」



 本当は聞かせたくないんだけど、公爵夫人の要望じゃイヤとは言えない。

 渋々私は再生ボタンを押した。



 MDラジカセから流れるエロい雰囲気の曲。

 どうせ、この曲も、この世界の感性に合わずに不評なんだろうなって勝手に思っていたんだけど……。



「この曲、使えるわね。一枚だけ消去しないでおいてくれる?」



 どうやら、エロ方面の感性だけは、異世界間でも共通のようだ。

 多分、後で夜の雰囲気づくりにでも使うつもりなんだろう。



 その後、私はリンドラー公爵夫人にMDラジカセの使い方を教えた。

 ラジカセ部分は、カセットの方ならカセットを出せば使えるけど、ラジオは放送局が無いから使えないんだよね。


 公爵夫人から、

「何でついてるの?」

 って聞かれたよ。

「私が前にいた世界じゃないと使えないんです!」

 って答えておいたけど。


 でも、そのうちマナミとケイコでラジオ放送局でも作りそうだな。

「エロ・コーナーを放送したい!」

 って言えば、放送局が作れそうな気がするからね。

 私は面倒だからやらないけど。



 …

 …

 …



 その数時間後、花火大会が始まった。

 今日は、クローマ伯爵は来ていない。

 でも、前回同様、国内外から多数の見物客が馬車で来ていた。


 ビナタ町の連中が出している出店の数も、回を追う毎に増えている。

 実は、花火大会のお陰で……と言うか、その出店の売り上げで、それなりにビナタは金銭的に潤ってきているらしい。


 と言っても、花火がタダだから黒字ってだけで、花火の入手にお金がかかったら大赤字になるような気がするけどね。



 花火大会が終わると、公爵夫人はさっさと帰ったけど、他の見物客達は帰らない。

 基本的に彼等はビナタ泊だ。

 ビナタは宿泊施設が少ないから、ほとんどの人達は馬車泊だけどね。


 そして、多くの連中が……町の連中も見物客達もだけど……夜通し飲んで騒ぎまくる。

 私が来たころと比べると、良かれ悪しかれ随分と活気が出た気がするよ。



 たださあ、一応、この花火大会の立役者は私なんだけど……。

 ビナタの町のヤロウ共は、私のHPに慣れて来たのもあって、以前程は、

『脱げ!』

 とか、

『ヤラせろ!』

 とか言わなくなったけど、見物客のヤロウ共の中に、たまにそう言うのがいてね……。

 女性見物客達からは殺意の籠った視線を向けられるし……。


 なんか、今日の見物客は、その傾向が強そうだ。

 なので、今日は花火が終わったら、接客をしないで、ヴァナディスと一緒に、さっさと家の中に隠れたよ。

 その方が無難だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] MD……こっちの世界だとまだまだ現役だよ…………良かったね、MD(滝涙)
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