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124/201

124.六十年後!

 ダ女神リニフローラから、ヴァナディスがク〇ト〇スペシャル魔法を与えられてから六十年ちょっとが過ぎた。


 この日、とうとう私アキとヴァナディスのお別れの日が来てしまった。

 不仲になって別れたとか言うんじゃないからね。

 さすがにヴァナディスも寿命だったんだよ。


 この世界の文化・文明は、中世ヨーロッパレベル。

 なので、平均寿命から考えると、ヴァナディスは、かなり長寿な方なんだろう。



 私は、『魔力で動く等身大美少女フィギュア』だけど、ヴァナディスは飽くまでも美し過ぎる『人間』だからね。

 いつか、この日が来るのは覚悟していたけど、実際にそうなると辛く悲しい。


 ちなみに、ミチルさんの嫁パラスも、五年前に亡くなっていた。

 なので、それ以来ミチルさんは……、非常に体力を持て余しているようだ。

 パラスに『夜のエネルギー搾取』をされることが無くなったからね(そんな年になっても毎晩ヤってたのかよ!)。



 今日は、ヴァナディスの告別式。

 参列者はお母さん、マナミ、ケイコ、ミチルさん、ナノハ、ユキ、そして、私の義理の妹のような存在のラヤ。

 ラヤは、ワザワザ、ここまで駆け付けてくれた。


 そして、ここビナタの町の連中……店の今の常連客達だ。

 さすがに、かつての常連客達は、大部分が既にお亡くなりになっていた。



 正体が七つの首を持つ赤い龍であるミチルさんは、五百年くらいは生きる。

 他の異世界召喚&異世界転生組は、このメンバーの場合は、基本的に不老不死なんじゃないかな?


 特にラヤは、この世界では未だに破壊神として語り継がれているけど、実は、あの後、女神の使いっぱから女神に大昇進していた。

 なので、多分、永遠の存在だよ。

 ただ、ダ女神にだけは、ならないで欲しいな。

 ちなみに、天界での名前はピルバラナだそうだ。



 ディスプロシ島在住メンバーでヴァナディスと直接交流のあった人達も、既に大部分がお亡くなりになられていた。

 ご存命の方々も、かなりの高齢になっていたから、ここまでワザワザ来ていただくのも厳しいだろう。


 それで、マナミ、ケイコ、ナノハの三人が、私の友人兼ディスプロシ島代表と言う形で参列してくれていた。



 ちなみに、マリカは信者達と例の修行中。

 六十年以上もそればかりで、良く飽きないな。


 それから、言うまでも無いだろうけど、六十年前とは、信者達の顔ぶれは随分と違っている。

 さすがに、以前の信者達も寿命が来ていてね。

 大半は、マリカを相手に修行している最中に、イクと同時に逝ったらしい。

 あの宗教の信者達らしい最期だと思う。



「アキさん。この度は、ご愁傷様でした」

「ラヤちゃん。もし、ヴァナディスがラヤちゃんの担当世界に行くようだったら、ヨロシクお願いね」

「はい」



 この世界では、基本的に土葬だ。

 ヴァナディスの遺体が入った棺が埋められて行く。

 みんなで、順に棺に土をかけて行った。



「現役女神に見送られるなんて、ある意味、ヴァナディスは幸せだよね」


 こう言ったのは私。

 これ対してラヤは、

「この世界では、むしろ破壊神として名が通ってますけど」

 って言っていたけどね。


 …

 …

 …


 その後の記憶はあやふやだ。

 やっぱり、ショックは大きい。



 気が付くと葬儀は終わり、参列に来てくださった方々も既に帰られていた。

 今日からは、この家に私独りか。


 この町に来たばかりの、一人暮らしの頃に逆戻りだ。

 でも、心の整理に、少し時間がかかりそうだけど、ちゃんと立ち直らないとね。

 じゃないと、ヴァナディスに怒られちゃうよ。


 ただ、心の整理がついたらついたで、いずれ私のLv値が、1じゃなくなるような気がするんだけど。

 元々、そう言う仕様だからさ。



 取扱説明書:ステータス画面の表記の意味は、次の通りです。

 Lv:Lover、即ち愛好者数を意味します。実質的には使用者数です。



 ちなみにマリカのLv値は、既に七桁らしい。

 さすがに、八桁に突入するには、まだまだ時間がかかりそうとの話だったけど……。


 …

 …

 …


 一方のヴァナディスは、

「あれ? もしかしてパラス?」

 その頃、あの世の入り口でパラスと再会していた。


 この時、二人共、十代後半の頃の姿をしていた。

 肉体を持たないため、本人の希望する年齢に姿を変えられるようだ。



「ヴァナディス、久し振り」

「元気してた?」

「うん」

「でも、その恰好って?」


 パラスは、何故か背中に一対の白い翼を生やしていた。

 しかも、着ている服は真っ白で、生前に比べると、数段清楚な感じがあった。


 この女が、毎晩、レッドドラゴンから精力を性的に搾取していたとは、とてもじゃないけど想像できないレベルだ。



「実は、今、ラヤの下で働いていてね。一応、天使サクラって名乗ってるのよ」

「マジで? 天使なんだ!」

「うん。今日は、ラヤがヴァナディスの葬儀に出かけていたからさ」

「そうなの? なんか、ワザワザ申し訳なかったな」

「それでね、異世界から転生組が何人か来ているんだけど、ちょっと待ってもらっている状態なのよ」

「ええと。まさかとは思うけど、もしかして私も異世界転生組?」

「そうだよ。なので、巧く行けば異世界転生特典とか貰えるかも知れないよ」

「そうなんだ」

「じゃあ、ちょっとラヤの様子を見て来るね」


 こう言うと、パラスは近くの門をくぐり抜けて行った。

 そして、女神の間に到着。

 そこで、ラヤが戻ってきていることを確認した。



「戻って来ていたんですね」

「さっき戻ったところです。それで、サクラさん。現状はいかがです?」

「転生組が何名か来ています。今、待ってもらっている状態ですので急いでください」

「了解です」

「それと、早速、ヴァナディスが、コッチに回ってきているんですけど?」

「分かってます。ただ、もう来られたのですね」

「はい」

「それじゃあ、ヴァナディスさんを最初に通してあげてください」

「分かりました!」



 パラスが、文字通り部屋を飛び出して行った。

 羽が生えているので、今の彼女は飛ぶことが出来る。


 一方のラヤは、急いで女神椅子に座った。

 そして、それから数分後、パラスに連れられて、ヴァナディスがラヤのいる部屋に入って来た。


「まさか、誘導係がパラスで、転生担当の女神がラヤちゃんとはね」

「私も驚きました。ヴァナディスさん。この度は、ご愁傷さまでした」

「私の葬儀にご参列いただいたようで、ワザワザありがとうございます。でも、長生きは出来た方だと思います」

「そうですね。それでですね。今回転生するに当たって、ヴァナディスさんには、二つの選択肢があります」

「それって、どんなモノですか?」

「トリフィオフィルムと言う世界にイケメン冒険者として転生するか、もしくは今の性別、容姿のまま三十八億年前のディルビウム世界に行ってですね……」


 すると、ヴァナディスがラヤの言葉を遮って、

「ちょっと待って! 三十八億年前って、もしかして、そこでナノハさんとかユキさんみたいに、私にウンコ撒き散らせってこと?」

 と叫んだ。


 ナノハやユキの前例を知っているため、

『三十八億年前』

 と言う単語だけで、その後、言われる内容がピンと来たようだ。

 さすがに、自分は、その担当をヤリたく無いって感じだ。



「いいえ。置いてきていただくのは表皮常在菌ですけど」

「でも、ナノハさんもユキさんもウンコ撒き係だったって聞いてますけど?」

「それは、誰が依頼主になるかで、人類の祖を腸内細菌にするか表皮常在菌にするかが変わるんです。女神が依頼した場合は表皮常在菌、それ以外、大天使とか堕天使が依頼した場合は腸内細菌になります」

「でも、どうしてそんな違いがあるのよ?」

「女神としては、可能な限り上品にしたいので、腸内細菌を避けているんです。でも、大天使や堕天使の場合は、確実に数を放ちたいってことで、それなりの期間、腸内細菌を撒くように指示するんです」

「じゃあ、本当にウンコ撒き係じゃないんですね?」

「誓ってそんなことはさせません。ですので、今の性別、容姿のまま三十八億年前のディルビウム世界に行って、表皮常在菌を置いて来ていただき、その後、現在のディルビウム世界に戻って来て平和に暮らしていただく。これが二つ目の選択肢です」


 取り敢えず、要求されているのがウンコ撒き係じゃないと言うことで、ヴァナディスも少しホッとしたようだ。



「でも、私が置いて来た表皮常在菌から、その世界の人類まで進化するのって抵抗ありますけどね」

「分かります。私もやりましたから」

「マジですか?」

「プレカンブリアン世界ってとこですけど」

「そう言えば、そんな話、聞いたことある気がする」

「しかも、その三十八億年後の世界に、私の好きな人が行かされてですね」

「うわ。それって最悪。そう言うのがあるんだと、やっぱり、そっちはパスで。さすがに、私の表皮常在菌から人類誕生なんて恥ずかしいので。なので、トリフィオフィルム世界に転生する」


 超美人のヴァナディスが、人類の祖を置いて来たのであれば、ラヤとしても、

『それはそれで絵になるな』

 と思っていた。


 それに、ヴァナディスが人類の祖なら、その世界に誕生するであろう男子共の中には、

『俺達は、あの超美人の垢から生まれたんだぜ!』

 とか言いながら喜ぶ輩も出てくる可能性も、ラヤは考えていた。



 しかし、ラヤ自身も、本当はプレカンブリアン世界の祖に望んでなりたかったわけではなかった。

 自分の垢から、その星の人類が誕生することに、当然だが抵抗があったのだ。


 なので、このヴァナディスからの返答は、ラヤの想定内のモノであった。

 だからこそ、別の選択肢も用意していたのだ。



「そう言うだろうとは思いました。分かりました。では、トリフィオフィルム世界への転生と致します」

「お願いするわ」

「かなりのイケメンの予定ですので、きっと女性冒険者達からモテるんじゃないかと思いますよ」

「でも、多分、私は、アキ以外は愛せないと思うけど?」

「そうですか。一応、ヴァナディスさんが成人する頃までには、アキさんレベルの美人さんと出会えるように、コッチも頑張ってみますけどね」

「期待しないで待ってるわ。あと、絶対に冒険者にならないとダメなの?」

「基本的に非常に高レベルな冒険者になる資質を持って生まれますので、そうなるのが最良でしょう。しかし、他の職業を選択しても構いませんよ」

「分かった。ただ、私の転生特典って?」

「魔法剣士です。魔法レベルはA級以上。冒険者として間違いなく大成功できると思います」

「あ……ありがとう」

「では、トリフィオフィルム世界での活躍を祈念致します。転移!」


 そして、ラヤの転移魔法が発動し、ヴァナディスの魂は、トリフィオフィルム世界へと送り込まれた。

 その世界で、ヴァナディスは赤ん坊として生まれ、恐らく、イケメン冒険者として成長して行くことになるだろう。


 前世の記憶……アキの使用者第一号として、色々ヤッた記憶を取り戻すかどうかは、今のところ定かではないが。

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