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10.超巨大なエメラルドがムチャクチャ重いんですけど!

「でも、私がアキだって、よく分かりましたね?」

「とにかく常識の枠を超えたレベルで、ムダにHな身体つきの女性と言われておりましたので」


 はいはい、そうですか。

 常識の枠を超えたって意味が分からないんですけど?



 ただ、彼らは同性愛者であっても性同一性障害ってわけじゃない。

 勿論、この世界にも性同一性障害の人はいる。でも、この世界には、まだ性同一性障害って概念が無いみたいだね。

 それから両性愛って考え方も無い。


 なので、性同一性障害者と同性愛者が混同視されているし、両性愛者は異性を愛する対象としているので異性愛者ってことにされている。

 だから私の取扱説明書にも、『異性愛』と『同性愛』って単語は出てくるけど、『性同一性障害』と『両性愛』って単語が出てこないんだ。

 最近になって、私は、ようやくそのことに気が付いた。



 早速、私達はフロギスの転移魔法で、一気にアルミナム山の中腹まで移動した。

 私の転移魔法じゃ、これだけの長距離移動は一回の転移じゃムリだ。さすが、国王陛下直属の転移魔法使いだね。


 森林限界を超えたところまで一気に行かなかったのは、レッドドラゴンに魔法と言うか、こっちの魔力を気付かれないようにするため。

 なので、ここからは魔法を使わずに歩いて行く。



 シンと静まり返っていて、マジで不気味な空間。

 うっすらと靄がかかっている。

 たまに、私達が落ちた枝を踏んだりして、

「パキッ!」

 と音がすると、それに反応するかのように、

「キー! キー!」

 哺乳類か鳥類か分からないけど、動物が鳴き声を上げてその場から逃げる。

 その鳴き声や、草の根を掻き分けて逃げる音に、こっちがむしろ驚かされる。


 前世では、一応、自然が少ない二十一世紀の都市で生活をしていたからね。

 こんな経験は初めてだよ。



 そして、三時間くらい歩いたかな?

 結構な距離だったけど、森林限界を超えた。

 そして、私達は、岩場の影でレッドドラゴンが眠っているのを発見した。


 たしかに首が七本ある。

 紛れもなく七つの首を持つ赤い龍だ!


 是非とも写真に収めてブログにアップしたい!

 新約聖書のヨハネの黙示録が好きな人達には最高のネタだもんね。もの凄いアクセス数が稼げそう!


 まあ、こっちの世界じゃブログなんて無いけどさ。

 でも、冠をかぶっていないし、十本の角も無いから、まがい物扱いされるかもね?



 七つの頭のうち、額にエメラルドがあるのは真ん中の頭だけだ。

 さて、これをどうやって取ろうか?

 先ずは性別判定!



 取扱説明書:アキ-108号は、いかなる生物でも見ただけで雌雄を確実に判別します。



 ええと、判定結果は……。

『性別無し。ただし、精神的には雄性52%、雌性48%。前世が雄性だったため、僅かに雄性に傾いている』


 なんだこれ?

 このパターンは初めてだね?


 女王様モードで屈服させることができるか微妙な気がする。これって、失敗したら完全にアウトなパターンじゃないかな?


 それに、私がHP……ハレンチパワーを最大値にした時に、オスの反応を見せてくれるかも微妙だし……。

 どうしよう?



 完全に私は思考が停止していた。

 頭の中で勝利の方程式が描けなかったからだ。


 一歩間違えば殺される相手。

 パワーは桁違いだろうしさ、それにドラゴンって火を吐くよね、多分。

 まともにヤラれたら、私なんて一瞬にして燃え尽きちゃうんじゃないかな?

 正直言って、それなりに勝てる見込みが無ければ迂闊に突っ込みたくないよ。



 でも、それは私が民間人(?)の立場で生きているからこその発想であって、フロギス達は違う。

 国王陛下直属の部下だ。自分の命を自分のものと思っていない。

 勝てる見込みが無くても戦うって考えを持っているっぽい。


「では、アキさん。ボクとグラビィとアキさんで三方から攻めましょう」

「えっ?」


 それどころか、フロギスは私が彼らと同じレベルで国王陛下のために命を賭けると決め付けているよ。

 勝手に決めないでくれ!

 でも、ここに来て戦わないって選択肢は無いんだろうなぁ。


「アキさんは転移魔法が使えると聞いております。ですので、アキさんはレッドドラゴンの左側に転移してください。ボクはグラビィをレッドドラゴンの右側に転移させ、その直後、レッドドラゴンの正面に転移します。そして、三人で一斉に攻撃魔法を打ち込んだ直後、プロタックが僕達にシールドを張って守る」


 うーん。

 攻撃魔法って言っても、わたしの場合、女王様スタイル以外、何もできないと思うんだけど?


 でも、レッドドラゴンが眠っている今がチャンスか。

 と言うわけで、とりあえずフロギスの提案どおり、私達は三方から攻撃を仕掛けることにした。



「転移!」

 私はレッドドラゴンの左に転移した。

 同じタイミングでグラビィがレッドドラゴンの右側に、そして一瞬遅れてフロギスがレッドドラゴンの正面に転移した。


 ただ、こっちが転移魔法を使ったことで魔力を感知したのだろう。レッドドラゴンが目を覚ましたようだ。

 とにかく、一気にケリをつけないと!



「HP最大&女王様モード!」

 私の右手に一本鞭が現れた。

 これをレッドドラゴンの背中に打ち込むつもりだ。



 グラビィが空中に舞い上がり、重力魔法でレッドドラゴンを押し潰しにかかる。

 フロギスも正面から炎の魔法を打ち込む。

 そして、私は、

「超高速稼動装置、スイッチオン!」

 ティラノ君を屈服させた時と同じように超高速移動しながらレッドドラゴンに鞭を打ち込む!

 三人総出での一斉攻撃だ。



 重力魔法でレッドドラゴンの身体が地にめり込んでゆく。

 ここに炎の魔法を受けてレッドドラゴンは全身が炎に包まれる。


 そこにさらに私が鞭を打ち込むんだけど、鞭が焼き切れないか心配だなぁ……。

 私だけ魔法の質が違うよ。

 直接見比べると、やっぱり恥ずかしい。



 しかし、僅か十数秒後、

「安眠妨害すんなよな!」

 と言うと、レッドドラゴンは私達三人に向けて反重力魔法を打ち込んできた。と言うか全身から四方八方に向けて放ったと言う方が正しいかな?


「シールド!」

 プロタックが、私達三人にシールドを張ってくれた。

 でも、強烈な反重力波はプロタックのシールドを突き破り、私達は後方に大きく弾き飛ばされた。


 そのまま私は、巨大な岩に全身を打ち付けた。

 でも、これくらいじゃ私は壊れないよ!



 取扱説明書:アキ-108号は、使用者からDVを受けても大丈夫なように、かなり頑丈に作られております。



 私は大丈夫だけど、フロギスとグラビィは立ち上がれないでいた。

 地面に身体を強く叩きつけられたみたいだ。


 プロタックが二人に向けて治癒魔法を放った。

 離れたところから二人同時に治癒できるなんて、彼も相当な魔力を持っているようだ。



 それにしても、龍も人間の言葉を発するのか。

 まあ、ティランサウルスがテレパシーで人間と会話ができていたんだから、龍が人語を話しても何ら不思議じゃないか。


 ただ、さっきの声、どこかで聴いた記憶が……。

 この特徴的な声。

 さて、何処の誰だろう?


「あっ!」

 思い出した。


「もしかして、宇都宮さん?」

「何故、その名前を?」


 そう。今でこそレッドドラゴンの姿をしているけど、彼は、私が自殺した一ヶ月前に、うつ病で自殺した宇都宮満(うつのみやみちる)さんだ。


「私です。前世で同じ会社に勤めていた篠原亜紀です」

「ああ、あの亜紀ちゃんか。それにしても、随分Hな身体してるね。前世では、もっと清楚な雰囲気だった気がするけど?」


 宇都宮さんは、多分、私が性なる魔玩具だってことには気づいていないみたいだね。人間の女性だと思ってくれている。



 取扱説明書:アキ-108号が性なる魔玩具であることを見抜けるのは診断魔法使用時の医師と、ランクがレベル10に達した魔玩具発明家くらいです。



 取扱説明書:他のいかなる生物も、アキ-108号が性なる魔玩具であることに気付きません。人間だと勘違いします。ドラゴンほどの魔力があっても例外ではありません。



 脚注:この世界ではレベル10に達した魔玩具発明家はエロスくらいです。



 それにしても、ドラゴンほどの魔力があっても正体がバレないって、それはそれで凄いよね、私。


「まあ、こっちに転生したら、こんな姿になっていました。それより、宇都宮さんも転生していたんですね?」

「本来、自殺者だと自殺の無限ループに入るらしいんだけど……」


 うん。それ、知ってるよ。

 私も半ば経験したから。


「ただ、僕の場合は神様が病死扱いしてくれてね」

 なるほど。そう言うことね。

 たしかに、うつ『病』だもんね。


 それと、今、私と宇都宮さんは日本語で会話をしている。なので、フロギス達には私達が何を話しているのか判らないようだ。


「それで神様が、この世界に転生してくれたんだけど、その際に僕の方から人里離れたところで静かに生きたい。誰にもちょっかい出されないように強大な力が欲しい。そう願ったんだ。そうしたら、龍の姿になっていたよ」


 赤い龍だけど、神様の手で転生したんだ。

 邪悪側じゃなかったんだね!


「そうだったんですか」

「でも、なんで僕を攻撃してきたのさ?」

「ゴメンなさい。国王からの依頼でして。訳ありなんですが、宇都宮さんの額にある巨大なエメラルドを取ってきて欲しいと言われまして……」

「これっ? でも、これってアオタンが緑に変化して固まっただけだよ」

「はっ?」

「一応、エメラルドで合っているけど。僕に身体って面白くてさ。身体をぶつけて赤く腫れ上がると、そこがルビーに変化するし、アオタンが出来れば、そこが変色してエメラルドに変化するんだ」

「なんじゃそりゃぁ!」

「こんなので良ければあげるよ。僕には不要なものだからね」


 宇都宮さんは、額からエメラルドを取り外すと、それを私に差し出してくれた。

 ただ、直径30センチにも達する超巨大なエメラルド。

 正直、ムチャクチャ重いんですけど……。


「でも、亜紀ちゃんもここにいるってことは、地球では死んじゃったってことだよね?」

「まあ、ちょっと不幸がありまして。でも、こっちの暮らしも悪くありませんよ!」

「そっか」


 宇都宮さんは、それ以上は私に詮索してこなかった。

 実は宇都宮さんって優しい人だったんだよね。それで何でも引き受けちゃって。それで許容量を超えて自分が壊れちゃったっぽい。


「で、亜紀ちゃんは、今、何処に住んでるの?」

「隣のアデレー王国です」

「あの小さな国か。そこから、ワザワザここまで来たの?」

「はい。そこのビナタって街で八百屋を開いています」

「そうなんだ」

「今日は、お騒がせしました」

「たしかに、いきなり一斉攻撃はしないで欲しかったな」

「スミマセン……。では、いただいたエメラルドを国王陛下に届けなければなりませんので、今日は、これで失礼します」

「気をつけてね。僕は、もう一回寝るとするよ」

 経緯はどうあれ、これで目的物をゲットした。



 ただ、フロギス達は、私が宇都宮さんからエメラルドを渡されたのを見てマジで驚いた顔をしていた。


 三人とも日本語が理解できていないからね。

 傍目には、私がレッドドラゴンを説得してエメラルドを手に入れたようにしか見えないんだろうなぁ。

 まさかレッドドラゴンと知り合いでしたとは……言えないよね。

痛覚に関する言及は削除しました。

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