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下界の魔術師。  作者: 成田りお。
1/1

序章。

 黒のローブに革製のグローブ。黒色の髪に青色の宝石のような目を備えた凛々しい顔立ち。そこらの女性だったら一声掛ければ食事にでも誘えるようなどこか男らしい、しかし不思議な雰囲気を醸し出している。世界の端くれ者。異端、放浪者。人々は彼のことを好き勝手にそのように呼ぶ。彼の名はハウロ。ハウロ・ブリウツ。

 彼はその凛々しい顔を日光に照らしながら、ルネッサンス時代の建造物を思い出させるような立派な屋敷から外へと出向く。

「おはようございます、ブリウツ様」

 屋敷の外で箒やブラシを器用に魔術で操り清掃をしていた老人はハウロに声をかける。

「やあ、おはようアルフレッド」

 ハウロはにこやかに、鋭い犬歯をのぞかせながら言う。年齢不詳、高級そうなスーツに身を包み白髪をスタイリッシュにオールバックで整えている老人。彼の名はアルフレッド。ハウロの執事を担い、ハウロの屋敷に住み込んでいる唯一の人物であった。

「今日も街を見に行ってくるよ」

 ハウロの言葉にアルフレッドは「行ってらっしゃいませ」と丁寧にお辞儀をし、仕事の続きへと戻る。街へと出向くハウロとすれ違う人々は皆、彼がハウロだと認識すると軽く会釈をする。

「よう! ブリウツさん! これ、持っていってくれ!」

 通りかかった出店で働く中年の男性は茶色の髪で包まれた小包をハウロに向けて投げる。ハウロは丁寧に小包を捕らえ、中身を確認し新鮮な肉だと言うことを視認すると男性に向け礼を言う。

「おっさん、いつもありがとう」

「なになに、俺らみたいに何も持っていない人がこの下界で安全に生活を送られているのはブリウツさんのおかげだろ?」

 男性は当然のことだと言う表情をする。ハウロはまた軽く礼を言い、街へと再び向かう。

「ブリウツさん、また最近森で魔物をよく見かけるようになったので退治をお願いできるかしら?」

 次は、すれ違う際に年配の女性が声をかける。

「ああ、わかったよ。任してくれ」

 ハウロはそう言い、今日の目的地が決まったことを確信する。自身の移動速度をあげる加速魔法を唱え、目的地へと向かう。ハウロはこのように下界の人々の人助けを行なっている。このような慈善活動をする者はハウロ以外には存在しないだろう。下界で生活する人々など上界で生活する人々にとっては出来損ない、救う価値のないゴミ同然の存在であるのだ。

 ツノを生やすものもいれば羽を生やしているものもいる。そんな人間とは程遠く、人を喰らい、食料とする異界の生物、魔物が姿を現してからはや100年。魔物の住む魔界への扉の出現の反動によって生み出された異界の力、魔術。今や魔術を使用することは日常生活の中に組み込まれていた。しかし、魔術は人間皆しようできるわけではなかった。人それぞれに適応というものが存在し、人類の2割が魔術適応者であり魔術の使用が可能であった。魔術適応者は皆、魔物から安全な上空世界、上界を作り上げそこでの生活を始めた。しかし、魔術をしようできないもの、つまり魔術非適応者は上界に行くすべもなく魔界の扉が開かれ魔物が溢れ出す下界での生活を強いられていた。下界の人々を魔物が上界へと導かないための食料と考えるものもいる。

 ハウロ・ブリウツ。世界一の魔術適応者と名高い彼は下界の人々を魔術で救い下界の英雄となっている。彼が唯一、下界の人々を守る魔術適応者であり、いずれ世界の敵となる人物であった。

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