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  作者: ばろびあ
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第1章

20XX年

日本史の教科書を読んでも最近の日本は

昔と何も変わらない。

長生きしている人たちはさぞ

退屈に日々を過ごしているんだろうな。

でもそんなこの日本でも変わったものがある。

それは桜がなくなったことだ。

お花見っていう桜を見るイベントが

あったみたいだけど、

そんなイベントは今は

日本史のテストに出てくるレベルの昔の話だ。

今はその桜すらもう咲いていない。

学校の階段に飾られている

大きな桜の絵画を見ながら


「この目で桜を見ることができたらなあ」


とかたまに考えてしまう。

それもこの日本、

いや世界が殺伐とした空気の

政治になってしまっているからだ。

その影響で周りの大人たち、友達、

しまいには家族まで汚い人間性が

日々を過ごしていく中で嫌と言うほど見えてしまう。

そんな世間にうんざりしているとき

この桜の絵画を見つけてしまった。

美しいと思った。

美術なんか何も分からないけどこれだけは言える。

これは世界で一番美しいものだって。

その日から放課後にわざわざ階段を上がって

桜の絵画を見てから帰る生活になった。

これが今の生活の中で一番楽しい時間かも知れない。


学校から帰るときはいつも河川敷を通るけど、

今日はスーパーに寄りたいから

住宅街の方から帰ることにした。

自分の家庭は両親は共働きで、

兄も父と喧嘩して以来家に帰ってきたことはない、

仲のいい家族ではないと思う。

食材を買って帰って作るなんてもう慣れた。

他の家事も一通りできるし、

はじめは寂しかった食事も

今は何も寂しくなくなった。

とか自分の家族をふと考えながら歩いていると、

目の前に綺麗な色をした蝶が舞っていた。

その蝶に魅せられた僕は、

スーパーに行くなんてこと忘れて、

その蝶を追いかけていた。

知らない道、どうやって帰るかなんて

気にせずただひたすらに

美しく舞う蝶を追いかけて走った。

でもさすがに飛んでいる蝶を

追いかけるのは難しくて、

最後には道がなくなり、

飛び立っていく蝶を見ることしかできなかった。

帰ろうと後ろを振り返るが、

まあ知らない場所も知らない場所、

何もわからない、困ったな。

周りを見渡すと今まで無我夢中で

走っていたから気づかなかった。

横に小さな小屋があった。


この辺りのことは何も知らないから、

この小屋の人に道を聞こう。

そう思って小屋に近づき声をかけるが、

何も反応はなかった。

鍵はかかっていないみたいで

ドアを開けてみると中には誰もいなかった。

まあこんな山の入り口のような

林の中に人がいるとも思えない。

仕方ない、がんばって自力で帰ろうと

ドアを閉めようとした時、僕は惹かれてしまった。

その小屋の中に飾られていた桜の絵画に。

気がつけば小屋の中に入って

その絵画をじっと見ていた。

しばらくして落ち着いて小屋の中を見てみると、

周りには本や新聞がたくさんあった。

その新聞には「桜を見る会」について書かれていた。どうやらお花見のことのようだ。

学校の資料集でもあまり書かれていなかったから、

折角見つけたので読んでみた。

どうやら過去に「桜を見る会」という

政治家などが集まって桜を見る会があったらしい。

でも2020年、その桜の会が中止されて

以来一度も行われていないらしい。

そして隣国などとの問題や戦争などで

桜は燃え、枯れ、そしてこの日本にあった

最後の桜も数十年前に枯れて全てなくなったらしい。

1時間ほど読んでいってわかったことは

そのくらいだった。

あと見ていないのはこの一冊のノートだけだ。

このノートは誰かの日記のようなものだった。


2020年11月27日

去年なくなったからかわからないけど、来年もどうやら桜を見る会はないらしい。


そんな感じで桜を見る会に関することが

ずらっと書かれているなかに

気になった文章があった。

今から20年ほど前に書かれていた、


「桜を見る会がなくなってからこの国の政治がよくない方に進んでいった気がする。みんなピリピリしてる。過去に戻って2020年の中止をなくせたらな。」


と書かれていた。

ここは全然気にならなかったけど、

この後の文章が


「過去に戻りたい?」と綺麗な女の子が現れた。

戻りたいと答えると、

この写真にはその力があると

壁に一枚の桜の写真を飾りだした。

「この写真に触れると戻れるよ。

これで過去を変えてきてよ。」

そんなバカな話があるか。

と言い返そうと頭を上げると

そこには女の子の姿はなかった。

ここからこの日記が書かれていなかったら

私は過去に戻って桜を復活させているということだ。

もしこの日記を見つけた人が桜が好きな者なら、

復活させたいと考える者なら

写真に触れ、過去を変えて欲しい。

                 茨木大和


と書かれていた。

この日記は茨木大和さんが書いたものらしい。

この話が本当なら、

過去を変えて本物の桜をこの目で

見ることができるということだ。

そしてこの人が過去を変えることができていたら、

今この世界は桜が咲いていると言うことなんだろう。ってことは咲いていないこの世界は、

変えることに失敗した世界ってことだ。

でもこの写真に触れると過去へ行く?

そんなことができるなら、

絶対に触れて過去に戻り桜を見に行きたい。

行くしかない。

この人が失敗したことを僕が今度は成功させよう。

今この時間からいなくなっても

心配する家族なんていない。

ろくに家にも帰ってこない人たちだ。

何も考えないだろう。

覚悟はできた。

桜をこの目で見たい。

その一心で飾られていた写真に触れた。

視界が真っ白になった。

急激な眠気が僕を襲った。

もう半分以上眠りについたその時、

僕の前に長い髪の女の子が現れた。

これが日記に書かれていた女の子なのかな。

そんな事を回らない頭で思っていると、

「お願い。」

と女の子は僕に声をかけ消えていった。

何も聞くこともできず、

その女の子が誰かもわからないまま僕は眠った。


がやがやと街中にいるような飛び交う声が聞こえる。その声が次第にはっきりと聞こえてきて、

僕は目が覚めた。

目が覚め、周りを見渡すと、

自分が住んでいたような田舎では

見ることのない人の波、大きなスクリーン、

建ち並ぶビルがあった。そして


僕の後ろにはいつも階段で見ていた絵画よりも

はるかに綺麗で美しい一本の大きな桜の木があった。


ちょーてきとー

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