渋谷功という存在(佐伯慎太郎編)
俺はマリアのいる2階の部屋まで駆け上った。
ライラが鼻血を出して倒れていると言う電話があり、急いで来たのだ。
バンッ
ライラの部屋のドアを勢いよく開けると、ベッドでスヤスヤ眠っているライラがいた。
(ほ・・・よかった・・)
「マリア、ライラは大丈夫?」
「カリーニョ(英語でハニーの意)、ライラは大丈夫ね。いつものやつね。大きい男が来て、村田と言ったね。ライラを持ってきたね。」
マリアは、ちょっと日本語の使い方がおかしい。
「そう」
眠っているライラの頭をなでなでした。
白目を剥いてて、ちょっと怖い(笑)ほんと爆睡だな(笑)
野崎悠ってやつの顔が浮かんだ。
あいつは、こういうライラを知らないんだろうな・・
(ププッ(笑))
しばらくライラの横で、ロボ研の新入生の申込書を見ていた。
今後の役割やチーム編成、どの大会出場するかなど、ノートブックに打ち込む。
部長うるさいからな(笑)
「そうだ、忘れてた・・」
サーバーにアクセスし、ハッキング状態を確認した。
特定のIPアドレスから、何度か侵入を試みられていた。
アクセスログが残っている。
「ヘタクソ・・・」
まぁ・・、予想通りだけど。
ただ、気になるのは、このIPアドレス・・・
学校のパソコンからだ。
(フッ、なめられたもんだな(笑))
どれくらい時間が経っただろう。
深夜近く背中から、「しんちゃん?」という声がした。
「あ・・・ライラ、大丈夫?」
振り向くと、ライラがだるそうに体を起こすところだった。
ライラの目が充血している。
「私、どうしたの?」
ベッドから起き上がってきた。
「倒れたんだよ。村田ってやつが運んでくれたって。明日は俺が車で連れて行くよ。」
「ありがと。そっか、樹・・・。明日聞いてみる。・・・ところで、何見てるの?」
「新入生の申込書。今年こんなに来たんだぜ!」
俺は申込書を机の上に並べた。
「ふーん・・・」
一枚一枚丁寧に確認していくライラ。
その後ろから、ヨシヨシと背中をさすった。
「あ・・・」
ライラはそのうちの1枚の申込書に目を留めた。
「どした?ライラ?」
「この人、知ってる。渋谷功・・・?」
ライラが人のことを覚えているのは珍しい。
「会ったことある。・・・クロメ。前に言ったことがあるでしょ。白目のない人。」
(ぞぞぞーーーーっ!! )
「ややや、やめろよ!冗談じゃねーぞ!オカルトじゃねーんだぞ。」
「しんちゃん、ほんとだよ。私の目のこと知ってるでしょ。」
「ライラ、なんで、そんなんが見えんだよー!こえーよー!」
俺はライラのベッドに潜った。
布団の中でも、ライラの声がくぐもって聞こえる。
「クロメは、意外とみんな見えてるかもしれないって思ってる。じゃあ、なんで、みんな見えてないものとなっているのか・・・」
もう、俺は怖すぎて、何も言うことができなくなった。
「しんちゃん、自分の見える世界が正しいと思ってる?」
ライラが俺を布団の上からポンポンと叩く。
「しんちゃんの部屋、隣だよ。それ、私のベッド。」
(渋谷功、めっちゃこえー)
その日はライラが俺の部屋で寝たようだった。
俺はそのままライラのベッドで気を失っていたらしく、そのまま朝を迎えた。