クロメの存在
結局、部長から説明を受けた後、
今日は解散となった。
「しんちゃん、帰る?」
ライラが聞いている。
「今日は、やり残したことあるから、またね。ライラ」
慎太郎は優しく微笑んだ。
「分かった」
悠は聞きたくないのか、
ゴソゴソとカバンを開けたり閉めたりしていた。
帰りは、みんなメトロだった。
駅までの道、悠はライラに質問攻めだった。
亜里沙も興味津々で、悠の反対側のライラの横を歩いた。
樹はニヤニヤしながら、後ろを歩いてる。
「あのさ、佐伯先輩とはどういう関係?」
「マリアの子ども。」
「マリア?!マリアって誰?」
「私と暮らしてる」
「え?外人?」
「スペイン人」
「ってことは!佐伯先輩とも暮らしてるの?」
「しんちゃんは一人暮らし」
「ぶわはははは!腹いてー! 」
樹が吹き出して笑い出した。
「お前ら、一問一答かよ!」
ライラの方が空気を読んだようで、説明し始めた。
「私のパパはスペイン人で、マリアはパパの妹。だから、しんちゃんとは従兄なの。」
「なーんだ!そっかぁ。わあはははは!」
野崎くんの高笑いが響く。
くっ、くっ、くっ、くっ
樹と亜里沙は笑いを堪えてる。
駅に着いた。
路線が違っていたので、悠と亜里沙、樹とライラでここで分かれた。
「バイバイ!また明日!」
「明日なー!」
悠は何度も振り返っている。
亜里沙が「明日も会えるでしょ」と言っている。
樹とライラは話しているうちに家が近所だったことが判明した。
樹は薄暗くなってきたので、ライラを家まで送ることにした。
「あのさ、何ていうか、お前変わってるから、何か困ったことがあったら言ってくれよ。友だちになったんだしな。」
(俺ってつくづく世話好きだな・・・(笑))
(まあ、ライラは悩みなんかなさそうだけど・・(笑))
「樹・・・」
「え?・・・なんかあんの?」
「うん・・・今日クロメがいた。近く、何か起こると思う。」
「何だよ、クロメって」
「あ、うち、ここ・・・」
ライラが指を指した南フランス風な家と、佐伯という表札を確認した後、
「ここ?」と振り返るとライラが青白い顔をして鼻血を出していた。
「おい、お前!大丈夫か!?」
「うん・・・」 バタンッ
ライラが倒れるところを、慌てて樹が支えた。
「おい!大丈夫じゃねーじゃねーかよ!」