呼応するビンタ
また次の日、ライラが登校する時間、俺は掲示板に向かっていた。
今日は暑いくらいの気温だった。
ライラはもうそこにいた。
どうやら昨日話した蚊の取り方を実践しているようだ。
(・・かわいい)
それにしても、この辺りボイラー室が近いせいか、蚊が多いんだな・・
ライラと同じコースで見かけたやつが、何してるの?とライラに話しかけていた。
ライラの手のひらを見せている。
そいつはギョッとして、慌てて去っていった。
「瀬戸さん、おはよう!」
俺に気付いたライラは、プイッと掲示板に体を戻した。
「何してるの?」
逃げられないと感じたのか、ライラは手のひらを見せた。
指が長くて、指先が少し細い。
刺激のせいで、少し赤くなった手のひらに、めちゃくちゃ蚊が取れていて目を疑った。
「マジで!すげー!20dBがいっぱいじゃん!」
俺は視線を感じて、ライラを見た。
目が合った瞬間、そこからまた目が離せなくなった。
「やっぱり友達でもだめ?」
顔を見ると気持ちが溢れて、ねだっていた。
「友だちはいらない」
(ああ・・・ライラの壁はどこまで強固なのだろう。)
急に気弱になってきた。
突然、後ろから声がした。
「何言ってんだ!もう、俺たちは友だちだぜ!?お前、友だちの定義が分かってないんだな。」
振り向くと、樹が笑っていた。
「友だちの定義?・・」
ライラが呟いた。
その時、ライラの体温に惹かれたのか、
ほんのりピンクに染まった頰に蚊が止まった。
「あ、蚊・・・」
パシッ
俺は思わず、ライラの蚊を退治しようと、平手でライラの頰を叩いてしまった。
ひぃぃーーーーーっ!
やばい!俺は何てことを!
「わァァァァ!ご、ごめん!!」
「あぁーーーーーっ、お前!!!何だよぉー!!!」
樹も俺の行動にうろたえてる。
「瀬戸さん!さっきのはわざとじゃない!こいつを許してやってくれ!」
樹が必死でフォローしている。
ライラは叩かれたほっぺたをスリスリさすっている。
(終わった・・)
(終わるの早かった・・)
「ほんと、ごめん・・」
言い訳が通じそうもないライラから、
現実を受け入れられず、後ずさりした。
「瀬戸さん・・・俺・・」
俺は・・・
その時、ライラがすごいスピードで近付いた。
パッシーーーン
一瞬何が起きたのか分からなかった。
ライラが俺の頰を叩いたのだ。
やっぱり、絶望的状況だった。
(うぅ・・・)
樹も何も言えずに、立ちすくんでいる。
ところが・・・
事実は小説よりも奇なり。
突然、思いがけない言葉を耳にした。
「悠と友だちになる。」
「え?」
「・・・友だちになる。」
耳を疑うようなライラの言葉に、一瞬、俺たちは言葉を失った。
「うそぉーーー!?」
俺と樹は驚きがシンクロした。