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ライラの見えない世界  作者: LOLA BLANCO
2/13

ドキドキの玉砕

ひとしきり、学校説明やこれからのスケジュール、

自己紹介が終わり、村田樹(むらたいつき)に会いに行った。

樹とは中学からの親友で、情報科に入っていた。


教室を覗くと、樹は席に座って、

カバンの中に配られた資料を入れているところだった。


「樹!久しぶり!中学以来じゃん。」


「おお!よう!久しぶりってほどでもないけどな・・(笑)」


「ところでさぁ、そっちって、女子何人いる?」


「ああ、5人だけど?お前んとこは?」


「4人・・」


「すくねーよな~。覚悟してたけど、彼女出来そうもねーよな。」


樹は中学時代に付き合っていた彼女とは、

別々の高校に行くことになり、別れていた。


教室内がガヤガヤしている。樹は外に出ようと廊下を指した。

廊下に出ると、俺は朝、出会った子のことを聞いてみた。


「ああ、瀬戸ライラだろ?外国で生まれたらしい。何?気になるの?(笑)」


「瀬戸さんっていうの?気になるって言うか・・掲示板に向かってパンチしてたから。」


「なにそれ(笑)うける!でも確かに美人だけど、ちょっと変わってるかもな。入学早々、けっこう男子に声かけられるけど、妙な返しされてみんなヤバッみたいな(笑)それに、表情変わんねーから、何考えてるかナゾだし。」


「ふーん・・」


「でも、特定のやつと一緒にいる感じじゃないから、付き合ってる男はいないんじゃね?あ・・瀬戸ライラ!こっちこっち!」


樹が犬を呼ぶような手つきで、ライラを呼んでいる。


「おいっ!!!」


俺は慌てて静止したけど、遅かった。


廊下の向こうから、ライラが近づいてきた。

春風にふわふわと浮かんだ光を従えて、颯爽と歩いてくる。

ライラは呼んだ樹の方に向いていた視線を、ゆっくりと俺に向けた。

彼女の少し切れ長の澄んだ瞳に釘付けになった。

ハッと、気付いた時には、ライラはすぐそばに立っていた。


「あのさ、掲示板の前でパンチしてたの?こいつが見たっていうから。」


樹はいつも、誰とでも自然に話しかけることができる天才だった。


「・・・蚊がいたから。」


落ち着いた、心地いい、それにしては女の子にしては低めな印象的な声だった。


「なんだよ、それ!(笑)蚊がいたら、パンチするのかよ!(笑)」


ライラは樹をじっと見つめた。


「違うよ。握りつぶした・・」


「・・・マジか、すげぇ。」


「・・・」


樹は俺だけ聞こえるくらいの小さな声で言った。


「な?会話になんねーだろ?(笑)」


表情は本当にずっと無表情で読み取れなかった。

彼女の奥にある心情を知りたいと思った。

もっと話したくてたまらなかった。

通り過ぎそうなライラ・・・

とっさに俺は彼女の手首を掴んでいた。


「あのっ!俺!野崎悠です。」


自分の大胆な行動に驚いた。

だけど、もう引けない!


「瀬戸ライラさん、俺と付き合ってください!」


「おお!マジかよー!!!」


なぜか、樹が興奮している。

周りの学生がざわざわし始めた。


ライラは下を向いている。


(やばい!絶対突然すぎた。)


髪の毛で顔は隠れていた。

ドキン・・・ドキン・・・

心臓の音がうるさい。


分かっていたけど、

容赦のない一言の矢が俺のハートを突き刺した。


「・・・やだ」


数秒後、俺の手をゆっくり振り払ったライラ。

告白は無情にも砕かれたのだ。


だけど、手に取った彼女の手首から、脈拍の異常な速さを感じ取っていた。

俺にしか分からない彼女の感情だと思った。


砕かれたはずの俺は、自然と微笑んでいた。

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