第4話 とりあえずこれからすること
半年ぶりですがやる気はボチボチ。
俺は陣内和隆。ひょんなことからこの『 プリシラ』という異世界に渡り着いたのだが、とある神様が俺の身体を『無限の器』とやらに改造したと宣った。
まぁ、一度死にかけた身体を直すため、とは聞いているし、実際に日本で高所から飛び降りた事故自体も覚えてはいる。
「しっかしまぁ、バテないもんだねぇ俺」
今はとある森の中をひたすら走り込んでいる。皮の軽鎧に鉄の額当て、皮の篭手に皮の具足。所謂斥候型の戦士スタイルの格好らしいが、俺に改造を施した件の神様、エダの辺境神が
「とりあえずはこれで訓練をしてみようか」
なんて言い出して渡してくれたものだ。
「まさか齢30になって改造人間になって異世界を走り回るとは、人生わからんな」
話は少し遡る。
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「貪る者を狩ってくれ、とそういうことなのか?」
和隆は問い質す。
「まあ、そういう事になるかな。積極的にとは言えないけど。君に死なれても困るしね」
(死ぬようなことなのかよ…)
「ただ、誤解のないように敢えて言うけど、君に施した施術。君は改造、と言っていたね。それ自体が僕にとっても初の試みだったんだ。だからこそその経過の情報が欲しい、というのもある。戦闘行為もそうだし、他にもいろいろやってほしいことがあるんだけれど、今それを連ねてもしょうがないとも思うんだ」
「さいですか」
「『 人造無限の器』とでも言えばいいかな。君はその第1号だよ。自愛してね」
「無茶苦茶言いよるな」
無限の器の天敵、貪る者を狩れと言い、それで自愛しろとも言うこの胡散臭い神様に和隆は憤りを越えて、もはや呆れるばかりであった。
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「一息つくか」
森の中を走り抜いた俺は、息を上げることも無く小休止に入る。
森を抜けたそこは閑散とした山村。人の気配は無い。
と、思いきや、
「カズタカ殿、おかえりなさいな」
「ご苦労様でごぜぇます」
老夫婦が俺に声をかける。
「どうもです」
爺さんの方はロレンス、婆さんはマチルダという。エダの辺境神が紹介してくれた名もない小さな村の「生き残り」だそうだ。
俺が異世界に連れられて起きたこの村はこの老夫婦二人を除いて貪る者に壊滅させられたという。
『和隆、とりあえず僕はこの村から一旦出るけど、異世界に来たばかりの君に世話役をつけようと思う』
とエダの辺境神が連れてきたのがこの老夫婦というわけだ。
まあ、この世界の右も左も分からない今の俺にとっては助かるものなのだが、これってつまり、
「この村を壊滅させた貪る者を何とかしろ、ということなのかね・・・」