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魂の異邦人よ  作者: あんどろ
第一部 第1章
3/5

第2話 『魂の御業』

すみません、辺境神様はまだまだ語ります。世界観の話なんじゃー。短く纏める技量が欲しいです

「さて、理力周りはこんなものでいいかな。和隆君、理解できた?」


「…まあ、なんとか。不思議な力と超便利万能物質が存在するということは解ったよ」


「それは何より。あ、そうそう。実践もしてあげなきゃ。こんな感じ」


 と、エダの辺境神はそこまで言うと掌を開き、上に向ける。


「身体に巡る理力を解放してあげれば、ほら」


 その後エダの辺境神の掌から仄かな炎が産まれた。野球ボール程の大きさか。中空に浮き続けている。


「おお、ほんまもんの魔法ですな」


 和隆も驚きの感情より、感動や感心といった気持ちが多く湧き出た。まさかの超常現象である。いよいよもって異世界だ。


「名前も正式には『術法(じゅっぽう)』とか『術式(じゅつしき)』と言うんだけどね。魔法という名はまた別の意味を持つんだ」


「へえ、言葉の意味はわかるけど、定番ではないんだねぇ。魔法ではない、と」


「この世界での科学、と言っただろう?魔法とはあくまで術式の1ジャンルに過ぎない。魔術、法術とね、分けるのさ。なんでも出来るからこそ可能な限り区別していく。曖昧にしすぎると、理力運用の効率やその他にも問題が出やすくなるんだ」


「まあ、ジャンルがはっきりすれば混乱は少ないでしょうな」


「そういうことだね」


 エダの辺境神がそこまで言うと、掌の火球が消える。


「つまり、俺にも魔法、いや術式が使えるのか?」


 和隆は尋ねる。


「それは勿論。実践の前に伝えるべき事はまだあるけどね。続けるよ?」


「どうぞどうぞ」


「では、次は『魂』について。この世界での『魂』とは、地球で言う精神を司る魂とは根幹が違うんだ」


「そもそも地球でいう『魂』の位置付けなんてのも俺はよくわからないけどなぁ。なんとなくしか知らないよ」


「そういうものなんだね、地球での魂とは。この世界『プリシラ』での魂は、なんていうか、遍く生命の重さそのものなんだ」


「うーん、よくわからん」


「そうだね。まずこの世界の魂は目に見える。色や形が存在する。意識もあるものにはある。あわよくば会話も出来るよ」


「へえ、一部の霊能力者の専売特許じゃないんだ」


「そう、それこそ一般的に、という言葉が当て嵌る。そして重さがある。この場合は質量という意味ではなく、総量という意味でだけどね」


「それはなんとなーく解るかも。所謂『大きさ』ってやつ?」


「そうだね。大体は魂の重さ、魂の大きさ、という表現が一般的になると思う。この世界では肉体が死に滅べば、その身体は朽ち果て、魂だけが残ることになるんだ。逆も然りなんだけどね」


「この世界では、とは言うけど地球でも似た考えはあるか。逆も、ってことはつまり、魂が滅べば肉体が無事でも死ぬ、ってことかな?なんか脳死みたいな扱い?」


「凡そその認識で間違いないかな。でもこの世界にはアンデッドというのが存在していてね、魂が失われた肉体も全く動かなくなる訳ではないんだ。所謂ゾンビやグールといったものだね。スケルトンもか」


「そこら辺はファンタジーだなぁ」


「話が少し逸れたかな?魂のことだね。そこでこの魂、この世界では譲渡に近いことや略奪ができるんだ。売買に似た概念もある。その観点から命イコール魂ではなくなるんだけどね」


「魂を略奪というのはなんとなくわかるけど、譲渡に近いというのは?」


「流石にイコールではない、とは言ったけど命の重さには変わらない。でも、知識や経験等を分け与えることが出来る、というのが正しいかな。それこそ理力の干渉が必要になる所なんだけど。これも一般的ではないね。でも略奪は違う」


「ああ、殺せばいいのか」


「正解。しかも感情を揺さぶればそれだけ魂も震える。つまり惨たらしい死に方をすれば簡単に負の方向に魂が大きくなりやすくなるんだ。そして、その中で重要になってくるのは、『魂から記憶や経験を奪える』ということにある」


「まんま経験値ですがな」


「そう。ゲーム等によくある経験値。厳密には殺すだけでなく第三者から自身の魂を代替に経験そのものを任意に複写してもらったり、こちらから必要な経験や記憶を渡したりも出来るんだ。口頭説明や直接指導よりも効率的にね」


「例えば、剣の達人に魂を支払ってその剣の実力を手軽に買って身に付けることができるってこと?そうなれば、正に『魂を売る』だな」


「そういう事だね。理解が早くて助かるよ。別に取引相手が悪魔じゃなくてもいいのがこの世界独特の文化なんだけどね」


 因みにその経験を受ける事を「魂に刻み込む」と、エダの辺境神は語った。人類及びあらゆる生物に宿る魂に直接干渉する魂の御業(スキル)とのことで、


「『魂の御業(スキル)』。これは術法とは違い、理力は使うけどその魂に刻む事で、術法とはまた違う技能を行使することが出来るものだ。分かりやすいものでは、『鑑定』とかがあるね」


「物に触れると文章が出る、とか?」


 和隆が聞くと、エダの辺境神は苦笑いを浮かべる。


「そんなご丁寧に文章とかナレーションがでるわけじゃないよ。なんていうのか、鑑定に成功するとその物の知識が頭に流れてくるイメージかな。一目見て『ああ、これは〇〇で、こういう効果があるんだな』となんとなく理解するんだよ。精度が上がればそれが緻密に、鮮明になっていくんだ」


「そういう魂の御業(スキル)ってのは『魂に刻み込む』ってやつ以外の方法でも修得できるのか?」


「先天的に魂の御業(スキル)を持ち合わせることも当然あるし、遺伝する可能性もある。後天的なものなら、ただひたすら魂の御業(スキル)に応じた行動を繰り返したりすることで生まれ出ることがあるよ。そして、その魂の御業(スキル)も奪える」


「殺すことによって、か」


「それもあるし、殺すまでとはいかなくても盗むように修得できる事もある。悪い意味でなく『技を盗む』ということもあるね」


 と、エダの辺境神は一息つき、


「さて、次はさっき出てきた無限の器(インフィニティア)の事かな。喋りすぎて喉が乾いてきたよ。少しお茶を入れてくるね」


 そう言うと、エダの辺境神は立ち上がり、部屋を出た。


(『魂の御業(スキル)』ねぇ。敵を倒して魂を集めて、技能を売り買いする。聞くだけじゃまんまRPGだよなぁ)


 和隆が地球で一人暮らしをしていた頃は、ゲームや漫画などを嗜むことは多かったし、異世界転生もののライトノベルを読んだこともある。なまじ現実で辛い事も多々あったが為にそういうものにに逃げていた時期もあった。アウトドアも好きだが、その辺のバランスはどうだったかな?と和隆はベッドの上で思い耽った。

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