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一人じゃないよ②

森は朝からストーカーへ警告、厳重注意を行っていた。

都心から離れた、けれども田舎というわけでもない七竈門市鍋倉町

その鍋倉町2丁目のアパート105号室の住人、

八潮大学二年生の松岡 光樹を戸口に立たせ、重ね重ねストーキング行為を止めるように告げた。

体と同じように心も細く脆そうな見た目の松岡は森の言葉にショックを受けていた。

なぜなら彼は、思い人に気づかれてないと思っていたのだ。

気づかれなくてもいい、ただただ…好きな人を見つめることができたら。

それだけなら迷惑にならない、迷惑なわけがない。

そう思っていた、彼は酷く落ち込んでいた。


七竈門市警察署犯罪捜査課特殊十六班所属

班長、森 克弘(47歳)


犯罪捜査とは名ばかりの、彼の本日最初の仕事がこれである。


注意を終えた森はアパートの前に停めてある車の助手席に乗り込んだ。

「おまたせ」

「お疲れ様です。どうでしたか?」

同課同班所属の西浦 信明(31歳)は操作していたスマホをポケットに入れながら森に訊ねた。

森がシートベルトを着けるのを確認してから西浦はエンジンをかけた。

「んー?自分の行為が、迷惑されてるなんて思ってなかったな。気づかれずに好きな人を、見守り続ける事ができたら満足なんだと」

森は胸ポケットにある煙草の箱から1本取り出すとくわえた。

「車内禁煙ですよ、署に戻ってから吸ってください。次は七竈門小学校でしたね。」

左右前後を確認し、ウィンカーを出してからゆっくりと車を発進させながら、西浦が笑顔で喫煙を制する。

森はコートのポケットに手を突っ込み、ライターをまさぐり探していた動きをピタリと止める。

舌打ち…とまでいかないがチッと口から音がなる。続けて ふぅーっ と大きくため息をつくと、助手席にもたれる、そしてそのまま体を滑らした。

「松岡のストーキング行為はエスカレートすると、傷害事件にまでなると思いますか?」

真顔に戻り、ハンドルを切りながら西浦が森に問う。

「わからん、わからんがエスカレートするのを防ぐのも事件が起きないようにするのも俺達の仕事だ」

火をつけていないタバコをくわえたままの森の答えに西浦は不満そうな顔をする。


「それは僕達捜査課特殊十六班の本分ではないじゃないですか、僕達が持つのは怪奇、狂気、不可解な事件であって…」


「お前がウチに着任した時に説明があったろう?該当事件が無い状態ならば他の課の支援に回る。警察の中の便利屋扱いなんだよ、ウチは」


捜査科特殊十六班

常識を逸脱した殺人及び傷害事件。

または、再現・実行不可能な事件を担当する特殊なチーム。

非科学的な、幽霊、妖怪、呪い等も十六班に割り当てられる。


未解決、迷宮入りばかりを扱うため成果は認められる事は無く、被害者・遺族からも辛く当たられる事が多い。

また捜査をしていると言う事実を造る為の避雷針でもある。


同時に該当事件がない場合は人手の足りない所に送り込まれる。

今がまさにそうである。


「だからって、まぁ…児童のイジメまで担当させられるとは思っていなかったな。人手を増やせ、人手を…上はなにやってんだまったく…」


目的地の小学校に近づいているのだろう。

下校中の小学生と先程から何度もすれ違う。



「各部所の人間から見たら僕らがその増やされた人手なんですけどね!…どういったイジメ内容なんですか」


森がくわえたままだったタバコを車のフロントボードに置き、姿勢を正してからシートベルトを外した。


「一人の生徒をクラス全員で無視、または近づかないようにしてるんだとさ」


「その理由は…あるんですかね…」


眼を細めて、走行速度を落とし、下校中の子供達に注意しながら校門前にまで車を移動させる。


森が助手席から降り、校門脇に設置されたインターホンを押している。


「この子供達の中に…」


時には自殺にまで追い込むイジメを行っている生徒がいる。


西浦は戻ってくる森を見ながらそんな事を考えていた。





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