第7話
久しぶりに基地の外、つまり無重力での任務に心が躍っているライラ・ブラックです。こんにちは。
あれから早1か月、何の進展もないまま二人の情報係として過ごすのはムズムズする感じです。私が幸せだから皆にも幸せになって欲しいって欲張りでしょうか?
「ライラ。久しぶりだから浮かれてない?気を付けてね」
「はい。コーティ先輩」
今日の任務は二人で一時寄港するシャトルへの補給任務です。大きい船なので、格納庫に入りません。なので、基地外の任務となります。
「宇宙服着るの、速くなった?」
「練習しましたので」
宇宙服も丁寧に、しかし迅速に着ます。何かあっては一大事ですからね。
「今回、寄港するシャトルにさ、同期が乗ってるんだよね」
「コーティ先輩の同期ってことは、トーラン先輩とも同期の方ですね」
「そう・・・その同期がさ・・・」
「はい?」
「その同期がトーラン大好きなんだよね!」
「え・・・」
トーラン先輩のことが大好きってことは
(カレンの恋のライバルだ!)
なんということ、五角関係に発展だ。
「まあ、見れば分かるわよ」
「・・・一時寄港ですよね」
「だから、スゴイ気がするの」
どんな人なんだろう。カレンに報告することを考えると頭の痛い案件だった。
「トーラン久しぶり~」
「マックス!久しぶりだな」
トーラン先輩に抱き着いているのは、綺麗な・・・男の人?
「あら、コーティも久しぶり~」
「マックス~。久しぶり」
「あら?そちらのお嬢さんは?」
「私の後輩のライラ・ブラックよ」
「あ、ライラです。よろしくお願いします。」
「マックス・オットーよ。よろしくねん」
ウィンクを決められてしまった。
また後でね~と別れたマックス先輩とコーティ先輩。補給部に戻る道すがらコーティ先輩を問いただす。
「お、男の人じゃないですか。美人でしたけど・・・」
「あら?大好きって言っただけよ。女性で、なんて言ってないでしょ」
「もう・・・」
クスクス笑うコーティ先輩。
「心配した?カレンの事があるしね」
「・・・分かるものなんですね」
「そりゃあ、あんなに恋する乙女!!って感じだしね。まあ、ライラは常にアルフレッドと二人の世界だから気づかなかったかもしれないけど」
・・・恥ずかしい。そんなに二人の世界だろうか。
「それより、分かった?これはチャンスよ」
「はい?」
「カレン行方不明事件があって、貴女とアルフレッドはくっ付いたじゃない?やっぱり恋には試練が必要なのよ」
つまり、どういう事でしょうか?
「それで、コーティ先輩の同期の美人さんが、トーラン先輩に抱き着いてたの」
「・・・マジで」
コーティ先輩の作戦はこうだ。
『性別を告げずにマックス先輩の事をカレンに話す→危機感を募らせる→カレンから告白させる。』
そんなに上手くいくか分からないが、これが先輩曰く『恋のキューピットの役目』らしい・・・。流されているな、私。
カレンは先ほどから「マジで」を繰り返している。「マジで」を繰り返すヒロイン・・・怖い。
「あの、カレン」
「何、その女。強敵なんですけど・・・マジで。コーティ先輩も強敵なのに」
・・・女性とは言ってないんだけどな。いや「女子会しようね~」と誘われたけど。それに、コーティ先輩は違うと思うな。
「ちょっと、マジで。ヤバいマジで」
「カレン・・・語彙力が・・・」
「ライラ、知らせてくれてありがとう。ちょっと作戦考えるわ・・・マジで」
通信に映った顔が、ヒロインとは言えないものであったことだけは、ここでお伝えします。