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スペース・オペラは始まらない!?  作者: ツネツ・ネツネ
乙女ゲームの世界!?
2/9

第2話

 みなさん、こんばんは。業務終了後のライラ・ブラックです。自室で本日の一人反省会を開催しています。寂しくないですよ。


 本日の課題は『何故、爆死エンドから逸れたのに、ヒロインと攻略対象に緊張するか』になります。今日のランチは味がしなかった・・・。

 コーティ・レイ先輩の言う通り楽しむつもりだったのに、全然、楽しめなかった。私はストーリーから外れた悪役令嬢。そう悪役令嬢だった。ヒロインに嫉妬する予定はないし、今やただの脇役。いえ、モブと言っても良いはず。・・・いや、ヒロインと攻略対象に関わった時点でモブじゃないのかな。とは言え、どう考えても爆死はしない。

 

・・・そうか。きっとあの緊張感は芸能人に会った感じだったのかもしれない。画面の向こうに見ていた人が目の前に居たから。芸能人に囲まれたら緊張するよね。そうか。そうだったのか。


今日は休もう。緊張して疲れちゃった。・・・芸能人には慣れよう。



 翌日、補給部の新人はトレーナーと一緒に隊長に召集された。隊長のクーさんは壮年の男性で、穏やかそうな人だ。

「全員集合したかな。よろしい。本日より補給業務の実地研修を行います。トレーナーとペア任務だから安心してください。宅配で、軍基地の内部や所属部は一通り分かったと思いますが、補給は主に補給部の輸送船や調査部の調査船・O-shipに対して行います。」


 O-shipという言葉が出た瞬間、場が盛りあがった。やっぱり皆、憧れているんだな。

「先輩の指示に従って、補給業務を熟していくように。以上」


「じゃあ、ライラ。行こうか」

コーティ先輩が声をかけてきた。先輩には後輩だからと呼び捨てにしてもらった。ただ、「ブラックは可愛くないからライラ呼びね。私もコーティで」とのこと。ちょっと嬉しい。

「なんと、調査部のO-shipへの補給だよ」

「え、そうなんですか」

あ、周囲、というか同期からの視線が痛い。

「他の船と補給の仕方は同じよ。今後、どこの担当になっても大丈夫」

「先輩って調査部の担当だったんですね」

「私だけじゃないけどね。やっぱりO-shipはカッコいいよ」

「へぇ」


話しながら進んでいると調査部に到着した。

「調査部のO-ship格納庫の入り口がここ。調査部のIDで入れるから」

シュ―――――――――――――――――――――――

「コーティ、待ってたぞ」

「トーラン。お待たせ。ライラ、この人が調査部のトーラン・ヘイル。一応、O-shipのパイロット」

・・・存じております。ヒロインのトレーナーで攻略対象様です。ということは。

「ライラが私の補給担当なんだ!!」

「カレンさん・・・」

「なんだ知り合いか」

「同期入隊ですから」

「では早速、補給に入ります」

「了解。カレン。点検は補給部のヤツがやってくれるが、俺たちも勿論自分で点検を行う。コーティの作業をよく見学させてもらえ」

「はい。よろしくお願いします」

「よろしく。コーティ・レイよ。知っている様だけど、私の後輩のライラ・ブラック。当分の間、貴方のO-shipの補給はライラが担当するわ。同期同士で補給のセルを組むことになったわね。ライラは私がトーランのO-shipに補給するのを手伝って覚えてね。大丈夫。簡単簡単」


 コーティ先輩は手慣れた様子で運んできた液体燃料タンクにパイプを接続する。更にパイプの反対側をO-shipに接続した。

「漏れることはほとんどないけど、しっかり接続してね」

「はい」

「では、補給開始」

タンクからパイプを通ってO-shipに燃料が補給される。

「ね。簡単でしょ。で、補給中は点検ね」

コーティ先輩から点検箇所やその仕方について説明される。うぅ、メモしたい。

「こんな感じ。燃料補給も終了ね。自動で止まるから大丈夫。じゃあ、実践ね」

「ライラ、私の機体はこっち」

カレンがヘイル先輩の機体の向こうから手招いた。


「これが、私のO-shipだよ」

「・・・やっぱりカッコいいね」

・・・爆死エンドさえ無ければ、私が乗りたかった機体。なりたかった職業。あれ?私って、まだ未練があるんだ。

「では補給お願いします。」

「あ、はい。補給開始します」

自分で持ってきたタンクにパイプをつなぐ。

「手伝おうか?」

「大丈夫。補給部の仕事ですから」

カレンが心配そうに見てくるけど、これは自分の仕事。なんとかパイプをつなぎ終え、スイッチオン。

「では、点検しましょう」

先ほど、コーティ先輩が説明してくれた点検箇所を思い出しながら作業する。

「あ、ライラ。ここ忘れてるよ」

カレンが指摘してくれた。流石、聡明系ヒロイン。一発で覚えるなんて・・・。

「ありがとう。カレンさん」

「いえいえ。私の機体だしね。自分でもモチロン点検しますとも」

カレン主導のもと、どうにか二人で点検を終えた。補給も終了。


「「終わりました」」

思わずカレンと声が重なった。振り返ると先輩二人がポカンとした表情で私とカレンを見ていた。

「すごいぞカレン。それにブラックだったか。初めての補給と点検で完璧だったよ」

「本当に。一つくらいミスがあるかと思ったけど、指摘する点がないわね」

それはカレンのおかげだ。一度だけしか見てないはずなのに、点検箇所を完璧に覚えていた。流石ヒロイン・・・私とは違う。

「先輩たちのご指導のお陰です」

「カレン・・・調子の良いことを」

先輩たちとカレンの声が遠くに聞こえる。やっぱりカレンはヒロインなんだ。

「ライラ、これからもよろしく」

「ええ。カレンさん」

「カレンって呼んでよ。セルなんだから」

「そうね。カレン」


・・・私、ヒロインに嫉妬してる?

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