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スペース・オペラは始まらない!?  作者: ツネツ・ネツネ
乙女ゲームの世界!?
1/9

第1話

連載にしてみました。時間のある方、お付き合いください。

また、1話目は短編の加筆修正になります。


第1問 ホロチャートの星域はどこか答えよ。

第2問 宇宙基地の星図から、連合基地の番号を全て答えよ。

 ・

 ・

 ・

第100問 ゴルディロックスゾーンの可能性について述べよ。


ピ―――――――――――――――――――――――!!

「試験終了です。」

(・・・終わった)その瞬間、私は倒れた。



(・・・終わった)

 薬品の香りがする中、ベットの上で目覚めた私は震えた。

(こ、これ乙女ゲームの世界だ・・・)

私、ライラ・ブラックは医務室の天井を見上げながら唐突に思い出した。この世界が恋愛&シューティングゲーム『恋するスペース・オペラ』であることを。


そして、自分が爆死エンドの悪役令嬢である事も。


 舞台は宇宙歴2017年。宇宙への進出を果たした人類は地球連合軍を中心に、更なる銀河開発を進めていた。軍の取引先の令嬢であるライラは親のコネで入隊。ヒロインと同じ部隊に配属される。数々の苦難を実力と機転で解決し、活躍するヒロイン。ヒロインに好意を抱いていく攻略対象達。ライラは嫉妬をつのらせて嫌がらせをする。


 そしてあるデブリでの任務中、ライラはヒロインを事故に見せかけて殺そうとする。具体的には、デブリにビームを打つフリをしてヒロインの機体を狙撃するんだよね。そこに颯爽と現れたルートの攻略対象がシールドでガード。打ち返されたビームで機体爆発・・・。その映像がバッチリ残っていて、当たり前だけど攻略対象は無罪。悪役令嬢は退場する。


そんな死に方、絶対嫌だ!!!


 爆死だよ?爆死!四肢四散するよ?いや、そういう問題ではないけど、爆死する悪役令嬢ってなかなかいないよね!?斬新!!


 「恋愛&シューティング」の名の通り、恋愛ゲーム要素とシューティングゲーム要素があって、恋愛は会話の選択肢・シューティングは『O-ship』という機体に乗ってミッションを遂行するゲームだった。ライラはO-shipのパイロットになりたくて入隊したんだっけ。

 しかし、このゲーム・・・プレイはしたけど、そこまで熱中していた訳ではないんだよね。なんで私がライラなんだろう・・・。


「ライラ・ブラックさん。目が覚めましたか?」

カーテンの向こうから声がかけられた。

「はい!」

シャッとカーテンが開けられ、1人の女性がこちらをのぞいている。

「試験官のライトです。筆記試験の後、倒れたのは覚えていますか?」

「あ、えっと、そうなんですね。ご迷惑おかけして申し訳ありません」

「いいえ。緊張の糸が途切れて倒れる人って、何年かに一度いるのよ」

・・・緊張でライラが倒れるだろうか。

「この後、O-shipの試験だけど、受けられるかしら」

「はい、体調は・・・」


 待てよ。これはチャンスではないか?O-shipのパイロットにならなければ、爆死エンドは免れるのでは?・・・O-shipへの憧れはある。だけど爆死エンドだけは絶対回避したい。


「体調は・・・ダメかもしれません」

「そう。残念ね。O-shipのパイロットを目指していたんでしょ」

「はい。でも、緊張で倒れるようではパイロットとして、どうだろうという思いもありますし、持病だったらと思うと・・・」

「確かに、体力勝負ですからね」

 

 ごめんなさい。ライラは体力馬鹿です。健康体です。だから任務に耐えられたんだろうな・・・。馬鹿なのに。そうか、筆記試験の知恵熱で倒れて前世を思い出したんだ。きっと。


「では、入隊試験は筆記試験のみが評価されます。本日は帰って結構ですよ。お大事にね」

「はい。ありがとうございます」


 優しい試験官さん。更にごめんなさい。ライラは馬鹿です。きっと、筆記試験の結果は悲惨です。入隊できないと思います。

 さよなら、私のスペース・オペラ。こんにちは、お嬢様生活!!




だと思っていました。


 きっと、筆記試験の結果は悲惨だったと思います。ごめんなさい。謝ってばかりですが、本当にごめんなさい。親が圧力をかけて入隊させてくれました。何が「転属試験もあるから、ライラちゃんなら大丈夫」なんでしょう。転属したくありません。事務職バンザイ!!


 入隊後1週間の研修中は、とにかく人にかかわらず過ごしました。ボッチですよ。後ろ指さされているボッチですよ。きっと「あれが裏口入隊・・・」とか言われているんです。本当だから否定できない。更に、宿舎は個室でした。かなりグレードアップされた・・・。気楽でイイヨネ。一人は大好きだよ。勉強の遅れも取り戻せるしね。ライラは参考書を買って満足するタイプだったらしく、量だけはあったので研修中は助かった。あ、ヒロインや同期の攻略対象は遠目に見ました。流石の美形でした。


 そして配属先は補給部でした。癒着ですね。ありがとうございます。取引先の企業が実家です。ブラック株式会社・・・ブラック企業か笑えない。きっと押し付けられたんだろうな・・・。おかげで補給部の同期にも引き続きハブられてます。悲しいけど、とにかく私は真面目に働きます。


 最初は使い走りのような業務です。こんなに電子化されていても事務用品って必要なんですね。「〇〇課に届けて、サイン貰って来て~」が大半です。ただ、量が多いし、基地が広くて届けるのが大変です。まあ、この場所は無重力だから重くはないんですけどね。


 無重力は楽しいです。こんな感覚(ライラは経験あるけど)私は初めてですから。感覚は体が覚えていたので、無様な事にはなりませんでした。良かった。荷物を抱えながら無重力スキップを楽しんでいると、後ろからクスクス笑う声が・・・。


「ごめん。楽しそうに荷物を運んでいるなって思ったから・・・」

見られていた。恥ずかしいと振り返ったソコには・・・攻略対象様が!えー!!マジか。ここ、君達の部署から遠いよね?まあ、絶対に会わないのは無理か。さりげなくしないと・・・。

「す、すみません。真面目に運びます」

「あ、違うんだ。本当に楽しそうだなって思っただけ。無重力好きなの?」

「はい」

会話終了!さあ、去れ!!

「ねえ、同期入隊のブラックさんだよね」

「あ、はい」

流石、爽やか担当の攻略対象。私を知っていたか。

「俺、調査部のアルフレッド・ジーン。ヨロシク」

「ライラ・ブラックです。よろしくお願いします」

「ブラックさんって、あんまり同期と話してないよね」

意識して避けていた上に、現在ハブられてますから・・・。

「人が、に、苦手で・・・」

「そうなんだ。でも、同期同士仲良くした方が良いと思うんだ」

分かります。でも、貴方とは関わりたくないんです!こうなったら伝家の宝刀!!

「わ、私、親の口利きだから・・・みなさん、実力だから嫌だろうなって」

これでどうだ。声がかけにくくなったろう。

「ふふ。そんな噂気にしていたの?研修だって一生懸命受けていたじゃないか」

筆記試験が悲惨だったろうから、少しでも取り戻そうとしてたんです。あと噂でなく事実です。

「・・・口利きだから、人より頑張らないと」

「だから、噂なんて気にする必要ないよ。そうだ。調査部の連中は気にしてないよ。今度、一緒にランチでもどう?」

「えっと」

ここで断れる人になるんだ自分。私はNOが言えた元・日本人。

「決定!明日、昼休みに迎えに行くから。じゃあまた」

「え?あの!私・・・」

アルフレッドは無重力の中を爽やかに去って行った。強引だな攻略対象。


 あぁ、五月病で明日は休んでしまいたい・・・。



 悩んでいる内に、翌日の昼休みです。え?展開が早い?・・・気にしないでください。悩んでいると、時間はあっという間に過ぎますからね。

 あぁ、どうしよう。昼休みのチャイムが鳴った・・・。


「ブラックさん。今日はなんかソワソワしているわね」

「え、そ、そうですか?」

声をかけてきたのは私のトレーナーであるコーティ・レイ先輩。ちなみに、連合軍は軍隊だけど旧体制の階級は存在しない。隊には隊長と先輩後輩がいるって感じだ。

「そうね。昨日、宅配から帰って来てから、心ここに在らずって感じ」

「う・・・」

それは、宅配途中に攻略対象であるアルフレッドに出会って、今日のランチに誘われたからです。

「じ、実は、同期にランチに誘われて。今日なんです」

「そうなの!?良かったじゃない」

「ええ。まぁ」

「何?緊張しているの?」

「・・・研修中、誰とも話してないので」

「そうなの!?逆に声かけてくれるとか優しいわね。楽しんできなさいよ」

あぁ、良い先輩だな。私が補給部の同期からハブられているのを察しているのだろう。


 楽しむ。楽しむか・・・そうか、取りあえずO-shipのパイロットではないから爆死エンドは無いはず。ヒロインや攻略対象の冒険や恋路を脇から楽しんでも良いのでは。前向きに考えれば、ストーリーから既に外れているのだから、後は楽しむだけと・・・。


「ブラックさん。外で呼んでるよ」

別の先輩が教えてくれた。

「例の同期じゃない?いってらっしゃい」

「い、いってきます」

あぁ、緊張する。大丈夫。ストーリーからは外れているのだから大丈夫と念じながら、課の入り口に向かう。

「ブラックさん。お待たせ」

そこには、当たり前だけど爽やか担当のアルフレッドが居た。

「こんにちは。今日はよろしくお願いします」

「あはは。固いな。食堂で他の奴らが待ってるから行こう」

二人で並んで歩きだす。うぅ。周囲から見られている気配を感じる。裏口入隊が入隊成績上位者と並んでいたら可笑しいよね。分かります。アルフレッドは話しかけてくれるけど、視線が気になって「ええ」や「はい」としか返事ができない。


 なんとか食堂に着くとテーブルから声がかかった。

「アルフ!こっち」

・・・うわぁ、ヒロインだ。別の攻略対象も居る。

「お待たせ二人とも。」

「席とプレート、取っておいたから座って。食べながら話しましょう。あ、ブラックさん。私の隣にどうぞ」

活発系美少女の誘いを断れるだろうか?私は断れない。あれ?NOと言えない元・日本人?

「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして。私、カレン・ブランシュ。ヨロシクね」

「レオナルド・アオキだ。よろしく。好きに呼べ」

カレンの向かいからアルフレッドとは系統の異なるクール系の美形が話しかけてきた。確か彼はクールだけど冗談好きのキャラだったはず・・・。

「ライラ・ブラックです。よろしくお願いします」

「同期だから、敬語は無し無し!俺の事はアルフで良いから。」

「はい・・・じゃなくて、うん。ありがとう」

ヒロインと攻略対象の二人・・・やっぱり緊張する!敬語の方が考えて話せるから楽だな。

「ライラって呼んでいい?私はカレンで良いから」

「はい。好きに呼んでください」

「あはは。ライラって固いな。家が厳しいの?やっぱりお嬢様は違うな~」

「おい。レオ!失礼だろ」

「いえ。家は厳しくないです。人と話すのが苦手で・・・」

「そうなんだ。でも、女同士だから遠慮しないでね」

「はい。ありがとう」


 その後も三人の会話に相槌を打つので精一杯だった。もし、ライラがO-shipのパイロット試験を受けて、同じ調査部に配属されていたら、三人はこんな風に私を食事に誘ってくれたのかな。あぁ、私は何を緊張しているのだろうか。爆死エンドから逸れて安心したはずなのに・・・。食事の味も分からなかった。


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