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魔染都市は不夜城となりて  作者: 雨音緋色
1.魔染都市
6/8

プロローグ.6

「悪いがパスだ。割にあわねぇ」


 持田から手渡された資料を見た乱斗が言う。だが、持田はそれを理解していた上なのか顔色一つ変えずに口を開いた。


「君ならまず最初にそう言うと思ったよ。いや、もし君が言わなかったとしてもシャーリーが言ってただろうが」


 溜め息を吐きながらコーヒーを口に運ぶ持田は、凄い剣幕で彼を睨むシャーリーを見ながら更に続けた。


「悪いがこの依頼は資料を見た時点で受けてもらう。そして内容の説明を聞いてもらう。そして内容を聞いた君は断れなくなる。諦めてくれ」


 持田の言葉を聞いたシャーリーは小さく舌打ちし乱斗を見つめる。


「ケース666…あの霧の事件の被害国からの依頼なら尚の事受ける気がしないな。いつまでも被害者面しながら新たな動力を使い産業として立ち直ってる。それで良いじゃねぇか」


「その点は否定しないが666に関する情報を得れる可能性があるんだ。それは君にとっても無意味では無かろう?」


 苛立ちを見せる乱斗に対し語りかける様に諭す持田。そんな2人のやりとりを見て怪訝に思ったのか、新人の魔捜は思った事を口にした。


「良く分かりませんが貴方にとって有益な事が多いなら受けるべきでは?それにまだ詳細を話してないのに拒否なんてどうかと」


「持田、そいつを外に出す事は出来ないかしら。次口を開いたら私は殺しかねないわ」


 明確な殺意を向けるシャーリーに対し溜め息を吐いた持田はこんな所で死人を出してもと仕方なく新人の魔捜を外で待機させる。

 その彼が外に出たのを確認した持田は再び口を開き内容を説明し始めた。


「666が起きてから数年。我々は手を尽くして様々な情報を集めその結果あの事件は人為的に起こされていた事を知った。この点に関しては君達も知っているとは思う。だが、首謀者の存在は一切不明、その規模や名前、目的すらも未だに分かっていない。然しここ数日、我々の元にある情報が入ってきたんだ。その内容こそ今回の依頼に繋がるのだよ」


「それで依頼が『666に関係する人物確保』ってか。場所も容姿も何も分からない相手を捕まえろってのはな、都民全員殺せって言われるより厳しいものがあるぜ?」


 最早苛立ちを隠さない乱斗を気にも留めない持田は首を横に振る。この男、まだ何か掴んでいるのか……?


「我々もそんなローラー作戦を君に頼むほど馬鹿ではないよ。場所はある程度絞れている。絞れた上で一番君が適任と言う結果が出てるのだよ、乱斗」


「はぁ?そこまで出来ているならなんで俺にー」


「この付近のハンバーガーショップ。そこに良くいるらしい」


 持田の言葉に乱斗は固まった。


「あの場所なら君が一番適任だろう。守るのも含めて…ね」


「そういう事かクソが……てめぇら何処まで腐ってやがる……!!」


 声を荒げた乱斗は持田の胸ぐらを掴み睨みつける。だが、冷酷なまでに落ち着いた持田は口元をニヤリと釣り上げて更に言葉を続けた。


「死臭を漂わせる流れ者の狼に馴れ親しむ女子を守らない程君は冷酷にはなれない……。改めて聞こう。この依頼、受けてくれるかね?」


「……切羽に何かあってみろ。俺は手を出した奴を殺した後貴様ら全員を殺し尽くしてやる……」


「交渉成立だ。よかろう。全面的に我々は君のサポートをさせて貰うよ」


 殺意を剥き出しにする乱斗に対し屈託のない笑顔を見せた持田は、解放されるや否や服装を正し席を立つ。


「実行日等は追ってこちらから連絡する。くれぐれもその前にくたばらないでくれ。ではな」


「……クソが……」


 持田が部屋を出た後も扉を睨んだまま乱斗は、思わず壁を殴りつけ悪態を吐いた。

 その様子を静かに見ていたシャーリーは悲しげな眼差しで乱斗に声をかける。


「……今度こそ貴方なら守れるわ。だから落ち着きましょ……?」


 然し乱斗は返事を返す事なく部屋を後にする。彼女にはそれを止める事は出来ずただひたすら扉を見つめることしかできなかった。

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